46.王都からの使者
無事にチロルへと帰還したリンネとメル、レン、アユナ。彼女たちはギルド長メリンダによって半強制的にBランク昇格試験に挑むことになるが――。
案内された部屋で待っていたのは1人の女性だった。
豪華な司祭服に身を包んだ彼女は、椅子に座り、目を閉じたまま深く瞑想していた。
「《物質変形》!」
ええっ?
メリンダさんが急に魔法を唱える。
魔法で変形したのは司祭服の女性が座っている椅子。その背凭れが溶けるように反り返り、子ども用の滑り台の形状になる。
瞑想中の女性は自ずと重心が後ろに倒れ、スーッと滑っていく。
バタン
鮮やかに1回転……するかと思いきや、途中で壁にぶつかり、回転半ばで停止する。
「ん」
「起きなさい!」
「んん……」
爆睡――。
メリンダさんに間近で怒鳴られても、ひっくり返ったカエルのような格好で眠り続ける彼女。
腰に当てていた両腕を胸の前で組み直し、呆れ顔で彼女を見下ろすメリンダさん。
ボクたちは、何が何だかわからず、その場でひたすら成り行きを見守るしかなかった。
「はぁ、相変わらず面倒な子。あっ、あそこにイケメンがいる!」
「んあっ! どこどこ!?」
「「……」」
なるほど、そういうヒトか――。
食べ物に釣られるより数倍カッコ悪いね。
「えっと、この子たちが例の勇者様?」
辺りを見回した結果、漸く脳が再起動したようで、ボクたちを見て目を丸くする。
「そうよ。お互いに面識はないようだから私が紹介してあげるわね。こちら、綺麗な銀髪と碧眼の可愛い子が勇者リンネさん」
「ど、どうも初めまして」
可愛い子なんて紹介、最悪だよ。めっちゃ凝視されてる!
それなら、こっちも凝視してあげるんだから。
《鑑定魔法:ルシル。聖神教五司祭の1人で、好戦的かつ残虐な性格の持ち主。特技は《防御魔法》。魔力値31》
うわぁ……この人、突っ込みどころ満載の外面だけの司祭様だ。絶対に怒らせちゃいけないタイプ。
「こちらが青の使者、メルさん」
「メルです」
礼儀正しくスカートの裾を摘まんでペコリとお辞儀するメルちゃん。
「あと、赤の使者レンさん」
「はい。レンです」
何かのマンガで見た騎士みたいにカッコよく敬礼するレンちゃん。
「それと、部外者のアユナちゃん」
「ぶ、部外者じゃないもん! 雑用係だもん! うぅぅ……」
五十歩百歩な気もするけど、メリンダさんは意地悪で言ってるのではなく、からかって遊んでいるだけみたい。
だから、ボクの役割は両手をぐるぐる振り回して暴れるアユナちゃんを後ろから羽交い絞めにすること。
「で、お尻を上に突き出したエッチな格好で転がっているのは……フリージア王国の国教、聖神教王都教会司祭の1人、ルシル司祭。ほら、起き上がってご挨拶!」
「あ、失礼しました。ルシルです。信じてもらえると嬉しいですが、聖神教の司祭です。でも、元々はメリンダちゃんのパーティメンバーなんですよ。彼女は私の母のような存在で――」
「こら、歳がバレるから昔話はやめなさい! こう見えても彼女は元Aランク冒険者だからね。実力を見てもらう良い機会だわ」
そのままとんとん拍子に話が決まり、ボクたちはギルド内にある修練場へと連れて行かれた――。
★☆★
「私は見ての通り戦闘向きではないから」
嘘だね。メリンダさんが黒い微笑みを浮かべてるし。
「だからね、まずは皆さんの攻撃力を鑑定しちゃいます!」
「攻撃力、ですか?」
思わず聞いてしまった。
「えぇ。私が防御壁を造るので、それを全力で攻撃してみてください。壁の損壊具合を数値化します。それがいわゆる“攻撃力”です」
なるほど――鑑定やステータスでは表せないけど、実験的に測定することは可能ってことか。
「私からやるね!」
メリンダさんに弄られて悔しかったのか、アユナちゃんが俄然やる気になっている。
「ちょっと待ってね。何人も我を犯すこと敵わず、何人も我に触れること敵わず。我が身は潔癖なり! 出でよ、破邪の城壁! 《絶対変態防御!》」
ルシルさんが大声で恥ずかしい詠唱を唱えつつ前方に両手を伸ばすと、そこから同心円状に壁が形成されていき――5秒もしないうちに3m四方のレンガ風の壁が完成した。
まるで比類なき壁、ヘーベ〇ハウス。
「いっくよー!」
遠くからアユナちゃんの声が聞こえる。
いつの間にか修練場の端っこまで下がり、アユナちゃんが助走たっぷりで勢いよく走ってくる。
「えいっ!!」
ガツッ!
思いっきり右腕を振り抜き、壁にぶつかる杖。
助走の後半は明らかにバテ気味だったけど、大きな衝撃音だけが響き渡った。
「えっと……攻撃力は……0。真面目にやってる?」
「ええっー? なんでよ!!」
「アユナちゃん、その杖は物理攻撃力が全くないの。言わなかったっけ?」
「聞いてない!!」
そっか。鑑定結果を伝えてなかったわ。
「部外者のアユナちゃん、貴女はエルフよね。《精霊召喚》はできて?」
「うふふっ! それ聞いちゃう? しょうがないなぁ。本気出しちゃうからね?」
あ、部外者でもいいんだ。
変態壁から1歩下がったところに立ち、フェアリーワンドを両手に抱えるアユナちゃん。
足元から湧き起こる風で、スカートが捲れ上がるのもお構いなしに、何やら呪文を唱え始めた。
「今こそチームアユナの実力を示す時よ! みんな、全力でいくよ!!」
アユナちゃんの右側には、幼木のトレンちゃんと風のシルフィ、左側には、光のウィルオーウィスプと半裸のドライアードが立ち――総攻撃を始める!
ドドドドドドドドドドドドドドドッ!!
「はい、そこまで!」
「ハァ、ハァ、ハァ……これで、どう?」
「えっと……140ってとこね。思っていたよりは立派です」
140がどれくらい凄いのかさっぱりわからないけど、結構褒めている感じがする。
「じゃ、次はあたしがやってみようかな。これの試し斬りをしたいし。それと、リンネちゃん言ってたよね。呪文を唱えると効果が上がるって」
「え? あ、うん」
パチン!!
頬を両手で叩いて気合を注入し、腰から2本のミスリルサーベルを抜いて壁の前に立つレンちゃん。
「よしっ! 司祭様、準備はいいですか?」
「はーい、いつでもどうぞー」
欠伸をしながら暇そうに返事をするルシルさん。
でも、レンちゃんはやる時にはちゃんとやる子だよ。
「その燃える翼は全てを焼き払い、その気高き爪は全てを切り裂く。二刀流剣術奥義! 《不死鳥双竜剣!》」
ザッザッザザッザザザザザッ!
両腕を左右に広げた姿勢から、高速に放たれる連撃。
不死鳥と双竜なんて相容れない2つを無理矢理繋げた変な名前だけど、足を踏ん張って重く鋭く放たれる連撃は不死鳥の翼や竜の爪を感じさせる力強いものだった。
でも――。
「はーい、ご苦労様、攻撃力は250です。うんうん、凄い凄い」
「棒読みってことは、イマイチだったのね。せっかく恥を忍んで呪文を唱えたのに――」
レンちゃん……呪文で威力が増すのは魔法系統だけだよ。今さら言うと拗ねちゃいそうだから内緒だけどね。
「次は私がいきます」
ボクの方をチラッと見て微笑んだメルちゃんが、グリフォンメイスを片手に壁の前に立つ。
「《鬼神降臨!》」
えっ!?
そこまで本気なの!?
頭の上にちょこんと角を生やしたメルちゃんが、勢いよく駆け出す!
そして、両手で持ったメイスを、身体を回転させた勢いに遠心力を乗せて豪快に振り抜く!!
ガシャーン!!
「おおぉ! これは凄いですねぇ。攻撃力370なんて久しぶりに見ましたよ。しかも1撃でこの数字」
「「さすが!」」
鬼化したまま虚ろに立ち尽くすメルちゃんが、ホッとしたように微笑み、地面にしゃがみこむ。
「メルちゃん、ゆっくり休んでて」
攻撃力か――やっぱり賢者らしく魔法、だよね。
壁=土なら、水魔法の方が相性がいいと思うけど、初級の水魔法より、中級まで使える雷魔法の方が攻撃力は高いはず。
うん、見るからに丈夫そうなへーべ〇板だから、思いっきり撃っても大丈夫かな――。
メルちゃんだって本気でやったんだから、ボクも全力を出そう。勝ち負けなんて意識してないけど、流石にショボショボな数字しか出なかったら立場がないもんね!
買ったばかりのフェアリーワンドを、両手でぎゅっと握り締める。
アユナちゃんみたいに、胸の前に掲げてゆっくりと目を閉じる。
魔法はイメージ。
壁を壊すなら、槍かハンマーかな。槍は貫通しちゃうと危ないから却下。普通のハンマーでもいいけど、テレビで見たブランブランする鉄球にしてみよう。球形の方が圧力的に効果が高そうだし。
よし、イメージは雷のハンマー鉄球バージョンで確定だ。
魔力の90%を練り込んで――全力で撃ち込むよ!
「勇者さん、寝てるの?」
「起きてます! 怒れる雷神よ、星々をも砕く主砲となれ!《雷魔法/中級》!!」
ボクの頭上5mに現れたのは、雷光を纏った球形の渦。
まるで杖の先に鎖でも付いているかのように、杖を持つボクの手と連動して動く球を、思いっきり後ろに振り被り――全身全霊を込めて振り下ろす!!
ドガーン!!
屋内の空気がビリビリした後、大きな爆発音が轟く。窓の外で、大きな鳥が驚いて飛び去るのが見えた。
ボク自身も地面に転がってしまうほどの、想像を超える反動――手応えは十分!
視界は石の細かい破片で真っ白になっている。
その中、甲高い悲鳴が上がった!
「キャッ!」
破壊され上空に舞い上がった破片が、一瞬遅れて辺り一面に降り注ぐ!
「皆、伏せて!!」
メリンダさんが咄嗟に魔法障壁を展開してくれなければ大惨事になっていたかも。
シルフの風魔法なのか、次第に視界が澄んでくる。
目の前には、呆然と立ち尽くすルシルさんとメリンダさん。周囲には、メルちゃんたちだけじゃなく多くの冒険者も集まっていた――。
「あ……ごめんなさい」
「ふぅ……私こそ甘く見すぎていたわ。ごめんなさいね」
「えっと、攻撃力は……?」
「測定不能」
「えっ?」
ルシルさんが1歩横に動いて後ろの地面を指さす。
黒い何かがある。
いや、半径3mほどの巨大な穴――。
「ご、ごめんなさい!!」
至近距離だったし、まさか外すとは思っていなかった。思ったよりも鎖が長かったのかも。
「冒険者がこんなに集まってくれるとは思わなかったわ。さぁ、皆で穴を埋めるわよ!」
ギャラリーが一瞬にしてボランティアに……。
やっぱり、メリンダさん恐るべし。
強制労働から解放されるや否や、逃げるように走り去った冒険者の方々。
ボクは何度もその背中に向けてお辞儀をする。
その様子をじっと見ていたルシルさんが、ゆっくりと話し始めた。
「皆様の攻撃力、しっかりと見させてもらいました」
「全員合格ですか?」
「いいえ」
「ごめんなさいっ!」
今日何度目かわからないくらいのお辞儀に、ルシルさんがボクの前に腰を屈めて微笑む。
「謝る必要はないわ。リンネ様の攻撃力は……推定ですが、少なく見積もっても500はあったと思いますよ」
「それって――」
「凄いと思います。でもそれは私たち一般人から見た感想ね。伝説の英雄たちや魔人なら1000を超えるだろうし、魔王なんて、さらにもう1つ桁が違うと思う」
「桁が!?」
「多分ですけどね。まぁ、個人の攻撃力よりもっと大切なものがあるでしょう? 何だと思います?」
ボクたちはお互いに顔を見合わせて考える。
そして、笑顔になる。
「「チームワーク!!」」
「そう。では、追試です。2対2のチーム戦をしてください!」
「「はぁっ!?」」
★☆★
まぁ、理屈は分かる。チームワークにおいては、己を知り、仲間を知ることが大事なんだよね。
でも、なんでボクたちがここで戦わなきゃいけないのか謎なんだけど!
「リンネちゃん、余所見しちゃダメ!」
「ごめん……って、アユナちゃん、精霊たち呼ばないの?」
「呼んだら2対2にならないでしょ?」
「確かに……」
攻撃力1位と4位、2位と3位で無理矢理チームを組まされ、修練場で向かい合うボクたち。
でも、精霊抜きのアユナちゃんって攻撃力0だし、ボクも測定不能(失格)だったんですが――。
(レンちゃんはアユナちゃんを牽制してください。私は一気に攻めます)
(了解! 小学生を片付けたらリンネちゃんを挟み撃ち、だよね)
メルちゃんチームから聞こえてくるヒソヒソ声。
あっちはかなり本気だ――。
今日はもう《時間停止》が使えない。それに、ちょっとは回復したといっても、魔力もほとんど使い切ったままだ。
メルちゃんも同じような感じだと思うけど、そもそも地力が違いすぎるから比べようがない。
もう、採り得る手段は1つしかないでしょ。腰に吊るした黒い武器を右手に握る。このひんやりとした感じが懐かしい。大グモの脚じゃなければほっぺにすりすりしたいよ。
「アユナちゃん。ボクの前に来て」
「えっ? それってどんな作戦?」
「名付けるなら、小学生エルフ盾作戦?」
「うきゃ!」
アユナちゃんから変な可愛い声が漏れる。
でも、もうこれしかないんだもん。
「言うこと聞いてくれたら後で“イイコト”してあげるから」
「わかったっ!!」
この小学生、イイコトって何だと思ったんだろう?
まさか、エッチな想像はしてないよね?
ボクがおでこの冷や汗を拭った瞬間、ルシルさんの澄んだ声が響き渡る。
「それでは、始めてくださ――」
「行きます!!」
開始の合図を遮る勢いで走り出すメルちゃん。
えっと、レンちゃんは後退した? あぁ、迂回して回り込んで来るのか。
「えいっ!」
低姿勢で突っ込むメルちゃんに、物理攻撃力ゼロの杖を上段から振り下ろすアユナちゃん――だけど、メルちゃんはそれを軽々と躱してボクに肉薄する!
「はぁっ!!」
「――っ!!」
横から振り回されたメイスは殺人的な威力。
でも、わざと避けられる程度の速さだった。
それを《空中浮遊》で躱し、上空から戦況を確認する。
メルちゃんは攻撃手段を模索してか、その場に直立したまま。
アユナちゃんはそんなメルちゃんにもう1度襲い掛かろうと迫る。
レンちゃんは――既にアユナちゃんの背後か!
「アユナちゃん避けて!」
大グモの脚を持つ右手を精一杯に伸ばし、アユナちゃんのお腹に向けて突きを放つボク。
「えええっ、裏切りぃ!?」
頭を抱え、大慌てでしゃがんだ彼女の頭上で、レンちゃんのサーベルとボクの棒が交錯する!
「うっ……」
アユナちゃんの身体を挟むように狙ったレンちゃんの双撃が空を切った直後、彼女の隙だらけのお腹に入った死角からの1撃。
1人、戦線離脱。
いや、2人だった――。
着地して一息ついたボクのお尻に、優しく撃ち込まれたメイス。
「ボクもやられたー! アユナちゃん、頼んだよー!」
メルちゃんもボクの隙をずっと狙っていたんだもんね。これは仕方ない。
「えええぇぇぇ! どうなってるの!?」
グリフォンメイスを両手に握り、じりじりと距離を詰めるメルちゃん。
尻餅をついたまま、お尻で器用に後退するアユナちゃん。
もはや、児童虐待にしか見えない。
「メルちゃん、油断しないでね!」
「アユナちゃん、早く立って!」
敗者たちからの声援は届いているのかいないのか。
対峙する2人の距離は徐々に詰まっていき、やがて決着の時を迎える――。
「これで私たちの勝ちですね」
そう言ってメイスを逆さに持ち、持ち手の部分でアユナちゃんの頭をコツンしようとした矢先、メルちゃんの足元が大きく崩れ落ちる。
「なっ!?」
「はいっ、そこまでです。勝者はリンネ様チーム!」
★☆★
「まさか、ボクが開けちゃった穴を再利用していたなんて」
「えへへ……騙すなら味方からって言うでしょ?」
「アユナちゃんはただ逃げていただけですよね?」
「でもさ、あそこまで逃げたのが計算なら凄いよね? ううん、運が良いって言うべき?」
「まぁ、そう、なのかな。じゃあ、MVPはアユナちゃんだね」
トレンちゃんが地中から穴を掘り返して落とし穴を作り、メルちゃんを嵌めてくれたお陰で、ボクとアユナちゃんチームは劇的な勝利を手に入れた。
だけど、今度は2人で穴を埋める羽目になっちゃったんだよね。勝利の代償は大きかったってこと。
グダグダな戦いだったけど、ボクたち4人全員がBランクへの昇格を果たすことができた。
実は後から聞いたんだけど、そのBランクというのが大迷宮中層以上へと進むための資格だったそうで、結局は全てメリンダさんの掌で遊ばれていたわけだ。
「あんっ、気持ちいい!」
「変な声出さないでって。ちゃんとマッサージしておかないと、明日筋肉痛が酷いよ」
MVPアユナちゃんの小さな肩をギュッと揉み揉みしてあげる。
「次はあたしがリンネちゃんにしてあげるからね」
「それは私の役目ですから」
敗者チームは仲間割れを始めたか。
「ならば、先手必勝!」
ザブンッ!
大きな水飛沫を上げ、レンちゃんが潜る。
隠密行動をさせたら、いくらお風呂の中といってもレンちゃんを捕獲するのは難しい。
「わっ!」
いきなり後ろから胸を掴まれたボク――。
「土木作業は胸筋を1番使うからね! ちゃんと解しておかないと」
「そ、そうなの?」
「違います。太腿の方が疲労が溜まっているはずです」
後ろからレンちゃん、前からメルちゃんに好き勝手弄られる――これ、宣言通りの挟み撃ち攻撃だ。
「もうっ! 《攻撃反射》!」
その後、お風呂場で行われた壮絶な揉み会――私立の女子中ってこんな感じなのかな。楽しいけど、毎日こんなだったら精神崩壊しそう。
素敵な王子様、現れないかなーとぼんやり空想に耽る。
そういえば、あの後でルシルさんがチラッと言っていたことが気になる。
王国軍千人規模の南征が近々行われる――今の、この世界ではかなり大規模な軍隊らしい。
南の新興国との戦争、大森林付近の魔族の討伐、西の王国関連の……嫌な予感が立て続けに襲う。メリンダさんの“大切なものを失う”という占いが、久しぶりに脳裏を掠める。
ボクの不安そうな顔を見て、仲間たちが集まってくる。
不安なのはボクだけじゃない。心の中に渦巻く暗雲を掻き消すように、ボクたちは大きなベッドで小さく丸まって寝た。
★☆★
翌朝、暁が顔を出そうと躊躇している4時頃、街が未だ寝静まるその中、ボクたち4人とクピィは城塞都市チロルの北門に居た。
久しぶりにゆっくりと休息を取り、新たな仲間を求めて北の大迷宮に挑む。
(漸く動いたか)
えっ!?
慌てて周囲を見渡すが、何も見えなかった――。
微かだけど、確かに声が聞こえたと思ったのに。
『クピィ?』
腰の布袋に収まっている可愛いクピィと目が合う。まさかとは思うけど、これってクピィの能力? 確か、特技は《魔力感知》と《共鳴》だったはず。
クピィの反応が無いってことは、近くに魔族や魔人がいないのは確実。だとすると、あの声は、どこか離れた場所からボクたちを見張っている者の声の可能性があるよね。
「リンネちゃん?」
4人全員の視線がクピィに集まっている。
「みんな、よく聴いて。北の大迷宮で、魔人と戦うかもしれない――」
「はい」
「望むところよ」
「頑張る!」
ボクの緊張が伝わったのか、全員真剣に頷く。昨晩の雰囲気とは真逆の反応でちょっと驚いたけど、皆が既に決意を固めていたんだね。
「さぁ、行こう! 北の大迷宮へ!!」
「「おぅ!!」」
[メルがパーティに加わった]
[アユナがパーティに加わった]
[レンがパーティに加わった]
お待たせしました。
最近、いろいろな方の作品を読み漁っていました。やっぱり皆さんの作品、面白いですね!
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