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異世界八険伝  作者: AW
第2章 新たな仲間たち
43/92

43.動き出す世界

魔人ヴェローナとその部下、2体のレッサーデーモンを死闘の末に退けたリンネたちは、北の地で赤の使徒レン、エンジェル・ウィングのアリス、イケメン勇者レオンという味方を得て、魔人の陰謀に立ち向かう。

 ボクたちは今、北端の町ヴェルデのギルド会議室に居る。居並ぶ面々はボクの3人の仲間たちと、エンジェル・ウィングの5人だ。

 みんな無傷で良かったんだけど、ボク1人だけがやられたみたいで、なんとなく立つ瀬が無い。


 ボクが目覚めたのを聞いて駆けつけてくれたアリスさんから、今作戦の結果報告を受けた。


 エンジェル・ウィングは、ギルドの力を借りて“2人の勇者、リンネとレオンが共闘する”という情報を広めた。

 そうすることで、魔人が安易にボクたちのノースリンク行きを阻止しにくい状況を作り上げた。

 もし計画が露呈して竜神の角に到達する前に戦闘になった場合は非常に困る。その対策として、勇者レオンに力を貸すという名目でギルドに魔人城へと派兵してもらった。

 実際、ヴェルデの冒険者はDランク主体なので勝機はない。適当に包囲した後、頃合いを見て撤収するよう指示を出してあるそうだ。

 つまり、この城攻めは、レオンたちがボクたちを襲う際、少数で動くように仕向けるための布石だったということ。


 その頃、隊商を装ったエンジェル・ウィングメンバー総勢20名は、街道を北上していた。

 魔物をボクたちが引き付けていたので、竜神の角まで到達すること自体は比較的容易だったらしい。


 彼女たちは、レオンが現れる地点を予想し、森の中に布陣して待ち伏せていた。味方の最大戦力は元Aランクのラーンスロットさんなので、この時点では、ボクたちはあくまで(おとり)の餌役だった。


 彼女たちは、雷鳴が轟くのを聞き戦闘が開始されたことを知る。

 これはBパターンの合図でもあり、即座に挟撃のための行動が取られた。


 しかし、現地に到着した彼女たちが()の当たりにしたのは不可解な状況だった。サキュバスとおぼしき魔人に対面しているボクが、にこやかに微笑んで会話をしていたそうだ――どうやら幻術に掛かった人は、その場で壁に話し掛けるみたいに行動してしまうらしい。これはちょっと恥ずかしい。


 介入のタイミングを窺っていたアリスさんたちを止めたのは、気絶状態から起き上がったばかりのメルちゃんだったそうだ。どうやらボクを信じて任せるよう説得したらしい。そんなところは、まさに鬼教官だね。


 そして、戦闘が終わると、白目を剥いて倒れていたボクと、ついでに黒焦げ状態のレオンを馬車に乗せて、ここヴェルデのギルドまで運んできたそうだ。




 アリスさんからの報告が終わると、それを見計らっていたかのように扉が開き――勇者レオンが俯いたまま入ってきた。


「糞偽勇者レオン、謝罪を」


 メルちゃんがレオンをボクの前に誘導し、謝罪を強要する――。


「俺の名は……レオニダス・ラル・アルン、アルン王国王太子だ。あのサキュバスに魔神の加護を植え付けられた。この部屋で目覚めるまで、完全に操られていた……すまない、迷惑を掛けた」


「王太子様!?」


 鑑定したとき名前が長かったので、てっきり貴族様かなぁと思っていたら、王子様だったのか!

 その王子様が、ボクたち平民に頭を下げてる……って、メルちゃんは知っててあの暴言? まぁ、このイケメン王子さん、サキュバスの誘惑に負けて心も身体も許してしまったわけだからね、自業自得だよね。

 あっ、こらっ! アユナちゃん! うっとりしちゃダメ!


 ちなみに、ギルドの調査によると、レオンに施されていた魔神の加護は既に消滅していた。

 でもさ、魔神の加護が無ければボクの魔法で逝ってたよね? そう思うと、今更ながらぞっとする――。



 その後、ボクたちは知りうる限りの説明を皆にしてあげた。

 召喚石のこと、迷宮のこと、竜人のこと、魔王のこと――今は1人でも多くの仲間が、協力者が必要だから。

 それに、西の王国が協力してくれるなら心強い。大喜びでジャンプするミルフェちゃん、その揺れる大きな胸が目に浮かぶよ!


「ミルフィール王女がアルン王国へ!?」


「ミルフィール?」


「ミルフィール・リル・フリージア、彼女の本名だ」


 ミルフェちゃんの名前、長すぎて覚えられないよ。あぁ、だからニックネームを使ってたんだね。


 ん?


「リルって、お金の単位ですよね?」


「あぁ。王族は、男子ならラル、女子ならリルを付けるんだ。女が子を産むように、金が増えて繁栄することを願い、かつての王が金の単位に用い――って、そんなことはどうでもいい! まずいぞ。このままでは戦争が起きる!!」


「「えっ!?」」


「サキュバスの陰謀で、アルンでは俺がフリージアの刺客に拉致されたことになっているんだ」


「それって、かなり大事(おおごと)ですよね――」


「俺は急ぎ帰国して王女に協力する。今、戦争を起こすわけにはいかない! 何とか阻止せねば!」


 レオン王子は苦々しい表情で、精神支配されていた間に得たであろう情報を語り始めた。



 魔人ヴェローナの使命は、アルン王国とフリージア王国の国交断絶と、フリージア王国北部に魔界の門を出現させて召喚石が揃うのを阻止することだったらしい。


 魔人は全部で10人――つまり、序列1位から10位までいるらしい。ヴェローナは第8位と言っていたから、その上に7人いるということ。

 そして各魔人は魔族を従えて各地で暗躍、陰謀を企て実践しているんだとか。その中には、南の新興国を騙して大陸大戦争を起こす使命を帯びた者もいるそうだ――。


「我等エンジェル・ウィングも、有志を新たに集めて北部防衛を強化しよう。ちなみに、捕縛したサキュバスだが、居城を調査した後にフリージア王国異端審問局へ引き渡すことになる」


 アリスさんが拳を胸に当てて誓いを立てる。凄くかっこいい!


「私から質問があります」


「メル殿、何でも訊いてくれ」


「例のサキュバスですが、どうも貴女を避けていた節があります。どうしてでしょう?」


 メルちゃんがアリスさんを睨みながら詰問する。

 そう言えば、エンジェル・ウィングからは逃げ回るばかりで戦意を見せなかったね。


「あぁ……その件は……私も魔人から直接確認した」


「で、理由は?」


 顔が近い!

 みるみるアリスさんの顔が赤くなっていく――。

 超絶可愛いメルちゃんにそんな至近距離で見つめられたら、ドキドキしちゃうよね!


「えっと……その……サキュバスが言うには……想い人がいる者には……幻術の効果が弱いからって。キャッ、恥ずかしい……」


「「……」」


 両手で顔を隠して腰を振るアリスさんに、全員何も言えなくなった。余りにも可愛すぎて――。

 普段は男勝りで気丈な振る舞いをしているアリスさんだけど、本当の中身は可愛らしいキュンキュン女子だもん。彼女の過去を追体験したボクだけが知っている真実。




 ★☆★




 その後、各々の役割を確認してボクたちは別れた。


 レオン王太子は冒険者数人の護衛を伴い、西のアルン王国へ向けて既に出発して行った。一刻も早く王国間の軋轢(あつれき)を取り除くために。

 また、エンジェル・ウィングの方々は、明日の日の出と共に魔人城を攻め落とすそうだ。その後、王国からの使者を待ちながら、ヴェルデを中心に防衛力強化に努めるらしい。


 そして、ボクたちはというと、今日の昼過ぎにはチロルに向けて出発する予定だ。取り合えず、ギルドで全員のステータスを確認し、レンちゃんの装備を揃えるのが急務だけどね。


 馬車の馭者役をボクたちで交代しながらやるって言ったんだけど、ティミーさんだけじゃなくラーンスロットさんにも猛反対された。

 やっとアリスさんと再会できたんだから、仕事なんて放り投げて一緒に暮らせば良いのにと思うんだけどね。それでも、“男にはケジメをつけるべき時があるんだ”ってカッコつけちゃって。

 ついでに、いつの間にか、ティミーさんもエンジェル・ウィングのルゥさんと良い感じになっていた。

 口ではカッコいいこと言ってる2人だけど、さっきから何度も悲しそうに振り返って手を振ってるじゃん! 説得力ないよ。


「リンネちゃん、あたしも冒険者登録する?」


「あ、そうだった! ボクたちも下に行こうか」



 冒険者ギルドのヴェルデ支部も、他のギルドと同様に2階建て構造で、1階に(しつら)えられたカウンターで諸々の登録や確認ができる。


 早速、ファストパス的に割り込んでレンちゃんの冒険者(ギルド)カードを発行してもらった。

 Fランクだけど、凄く喜んでくれたのでボクも嬉しくなっちゃったよ。


 そして、今回の魔人討伐の賞金(7000リル)は、レンちゃんとアユナちゃんの装備に充てることにした。



◆名前:レン

 種族:ピクシー族/女性/14歳

 職業:平民/冒険者

 クラス/特技:剣士/二刀流剣術

 称号:赤の使者

 魔力:17

 筋力:46


 レンちゃんは敏捷型の剣士だと思う。メルちゃんほどじゃないけど、初期ステータスが高い。

 魔法も確認してもらった。既に、《剣術/中級》、《隠術/下級》、《連続斬り/中級》があるらしい。でも、魔法系統は使えないみたい。赤髪の子って、炎系の魔法が得意なイメージがあるけどね。まぁ、今後に期待!


 それと、エンジェル・ウィングから借りていた2本のサーベルを譲ってもらえることになった。貧乏人にはとても有難い話。

 残念なことに、かつらの方は本人の希望もあって返却することになった。なので、ボクたちとお揃いの“銀狼のコート”を4500リルで購入。敏捷性が上がるだけじゃなく、フードが可愛いという利点もあるので、相場より高いけど即断即決した。



◆名前:リンネ

 種族:人族/女性/12歳

 職業:平民/冒険者

 クラス/特技:賢者/雷魔法

 称号:銀の使者、ゴブリンキングの友、フィーネ迷宮攻略者、ドラゴン討伐者、女神の加護、魔人討伐者

 魔力:33

 筋力:29


 魔人討伐者だって。ヴェローナを殺してはいないけど、討伐したことにはなるのかな、うん。称号だけ見たら凄い人みたいで見惚れちゃう。

 この機会にクラスを“賢者”に変更してもらいました! 自己申告で賢者を名乗るのは結構恥ずかしかったんだけど、相変わらず勇者の“ゆ”の字も見当たらないんだもん、仕方ないよね!

 今回は、筋力だけじゃなく、魔力も上がっている。魔力0だった頃が今では懐かしいよ。どうやら竜人や竜族から召喚石や魔力を引き継いだり、魔人を討伐すると大きく上がるのかもしれない。


 と、考察はこの辺にして、2人のも確認しちゃおうね!



◆名前:メル

 種族:鬼人族/女性/14歳

 職業:平民/冒険者

 クラス/特技:メイド戦士/家事

 称号:青の使者

 魔力:50

 筋力:75


 魔力が13も上がっている。レッサーデーモンを2体も倒したからかな。メルちゃんとアユナちゃんに泣きながら謝られたけど、本当は殺してほしくはなかった――だけど、あの状況は仕方がなかったと思う。

 それより、メルちゃんが使った《鬼神降臨(バーサーク)》はヤバい。確か、1分間という縛りはあるけど、全ステータスが2倍になるんだよね。基礎ステータスでも、永遠にボクはメルちゃんに追いつけない気がするのに――。



◆名前:アユナ・メリエル

 種族:エルフ族/女性/11歳

 職業:平民/冒険者

 クラス/特技:精霊使い/召還術

 称号:森の放浪者、女神の加護

 魔力:25

 筋力:22


 うん、魔力+11、筋力+2はボクと同じだね。順調に育ってくれてお姉さんは嬉しいよ!

 でも、今回の戦いで、武器を持っていないと役立たずだってことが子どもなりに分かったらしい。地面の小石をぶつけるとか、もうお姉さんは悲しすぎて泣けてくる。

 普段は“トレンちゃんの枝”を武器代わりに持ち歩くそうだけど、そんなおもちゃじゃ心許(こころもと)ない。というわけで、“エルダートレントのスタッフ”を2000リルで購入。ミスリル製の方が実用的だと思ったんだけど、アユナちゃんは(かたく)なに木製を選択したんだ。そういうところは、さすがはエルフっ娘だね!



 余った500リルで、下着やら日用品やらを補充すると、またまたすっかんぴんに逆戻りしちゃったよ。勇者は宵越(よいご)しのお金は持たねぇ!なんてね。それは江戸っ子だっけ?


 ギルドの食堂で無料ランチを頬張る。

 紫色の野菜や肉に食欲が湧かなかったというよりはむしろ、レオン王太子の話が真実ならミルフェちゃんが心配なので、食事が喉を通らなかった――。


 だけど、信じよう。

 ミルフェちゃんならきっと何とかしてくれる! お互いに信じるって決めたんだもん。


 だから、ボクはボクにできることをする。

 ボクたちにはやるべきことがある。今は一刻も早く北の大迷宮を攻略し、召喚石を手に入れねばならない。


 ここで立ち止まってはならない。


 食事を早々に終わらせ、席を1番に立って声を張り上げる。


「皆、チロルへ出発しよう!」

「「おぅ!!」」


 頼もしい仲間たちと共に、新たな仲間を探しに行こう!

<地図>


竜神の角A←B←ノースリンク

ヴェルデ★

チロル

フィーネ

∟エリ村

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