39.閑話_エンジェル・ウイングⅡ【挿絵/アリス】
少女は冒険者と共に北端の町ヴェルデで生活を始めた。そして、新たな出逢いを招き寄せる――。
不幸を拭い去るかのような平穏な日々が続いた。
そんな中、1人の女が男の前に現れる。
長身をさらに誇張するような、目立つ尖がり帽――。
嘗て共に命を預け合った、5歳年下の女だった。
「久しぶりね」
「お前、メリンダか?」
「えぇ。覚えていてくれて助かったわ。嘗て貴方一の部下だった、メリンダ・シャーリンよ」
笑顔で近づく女――しかし、その腕は組まれたままで、握手や抱擁をする気配は微塵もない。
彼女は、“嬉しい”ではなく“助かった”と呟いた。
当然、男は警戒心から1歩、2歩と後退る。
「こんな辺境まで何しに来た?」
「それ、私の口から言わせるつもり?」
「……俺とあいつを捕まえに来たんだな?」
「ふふっ、もし、そうだと言ったら?」
「……俺はあの子を守り抜く。そのためには――」
「落ち着いてよ。私はあなたと争う気はないわ」
彼女は両の掌を開き、両手を広げて無害を主張する。
しかし、それによって主張されたのは、支えを失って揺れる豊かな胸の存在。
「……では、何しにここへ来た!」
男は槍を両手で掴み、低く構えて牽制する。
メリンダは実力のある魔法使いだ。しかし、詠唱する暇さえ与えなければ、この至近距離なら勝機は十分ある。
ただし、嘗て男が知るメリンダであれば――。
「貴方、このままあの子を守り切れると思っているの? もしそうなら1日中笑ってあげられるわ」
「どういう意味だ?」
「アルン王国は本格的に貴方の捜索を始めた。東のフリージアまで捜索の手は伸びている。もう時間の問題ということよ」
「そうか……」
「髪を染め、名を変えても無理。鑑定魔法は決して誤魔化せない」
「……」
魂そのものを映し出す鑑定魔法の前には偽名も変装も通用しない――。
当然、男もそんなことは熟知していた。
「でも、1つだけ方法があるわ。それを遥々こんな北限まで伝えに来たのよ? 感謝で泣き崩れるならまだしも、槍で脅されるとは思いもしなかったわ」
「方法? それは――っ!?」
ゴゥ!
槍を後ろに引いた瞬間、大気が唸りを上げる!
渦巻く暴風が、足元から男を襲う!
「ちっ、無詠唱かよ!」
「卑怯なんて言わないでね、誘拐犯に言われる筋合いなんてないから」
「くそっ、女狐が! 争う気がないなんて言いやがって!!」
「ふふっ、嘘じゃないわ」
暴風は濃密な空気の枷となって男の両手両足を束縛する。
カラーン!
床に落ちた槍先が、抗議するかのよな甲高い音を立てる。
「くそっ、動けねぇ!」
「《拘束魔法》。私の得意技、忘れたの?」
「ちっ、成長したのは胸だけじゃねぇってことか」
「あははっ、相変わらずね」
「おにいちゃ……えっ!?」
異音を聞き、隣の部屋から駆け込んできた少女――。
女は咄嗟に片膝を地に付け恭しげに挨拶をする。
「麗しのリーシア様、貴女をお迎えに来ました」
「っ!? だ、誰のこと? 私はアリスよ!」
「ふふっ、折角の可愛いお顔が台無しですよ、リーシア様」
「アリス! 逃げろっ!!」
「犯罪者はお黙りなさい! さぁ、貴女の正体……《簡易鑑定》!」
◆名前:アリス
種族:人族/女性/10歳
職業:貴族/冒険者
魔力:35
筋力:33
「えっ……リーシアじゃないの!?」
「私はアリスよっ!!」
「アリス……」
槍を拾い、男の前に仁王立ちになる少女――。
女はその鳶色の瞳をまじまじと見ながら、ある事実を悟る。
「そう……貴女も彼を愛しているのね……」
「っ!!」
「……」
↑アリス(ゆきうさぎ様作)
自身の心を整理することしかできず、長い沈黙が3人を包み込む。
「負けたわ」
「えっ!?」
「私の、負け」
「じゃあ、今すぐお兄ちゃんを離してよ!」
「んー、どうしよっかなぁ。ちょっと意地悪したくなってきた」
「……」
「……」
不敵に微笑むメリンダ、それを睨みつける2人――。
再び続いた長い沈黙は、メリンダの笑い声によって破られる。
「あははっ、いいこと思いついちゃった!」
「……」
「……」
「この人は私が預かるわ。飽きたら貴女に返してあげる」
「えっ……」
「メリンダ、どういうつもりだ!?」
「私はチロルの冒険者ギルドで一旗揚げるつもり。協力してもらうわよ?」
「脅してるのはどっちだ……」
「お兄ちゃん……うぅ……」
「アリス、そんな顔をするな! お前はもう十分に強い。1人で生きていけるよな?」
「いやっ! いやぁっ!!」
「大丈夫だ、必ず戻ってくる。それまで待っていてくれ――」
この日、男は娘の前から去る決意をした。
少女を守るために。
この日、少女はこの町を守り抜く決意をする。
再び男と幸せな日々を過ごすために。
★☆★
あの日から数えて5年が経ち、少女は既に15歳となっていた。
幼い頃から整っていた目鼻立ちは、歳を重ねるほどに可憐さを増していく。澄んだ鳶色の瞳、背中まで伸ばした黄金色の髪、そして傷1つとしてない白魚のような手足――その溌剌とした性格も相俟って、彼女が15歳を迎える頃には、誰もが口を揃えて“アリスは町1番の美人”と断言するまでになっていた。
大陸北部は魔物の数も、個体ごとの強さも南部域を大きく凌ぐ。
対して、町を守るための冒険者数は日々減少の一途を辿り、魔物の襲撃に怯えることも珍しくない状況が続いていた。
実際、この5年間で魔物によって滅ぼされた町や村の名を挙げようものなら、両手では足りないほどだ。
そのような事情を鑑み、冒険者ギルドは10歳からの冒険者登録を可能としていた。
優秀な冒険者に直に育て上げられた彼女は、10歳の誕生日を迎えた日、当たり前のように冒険者となっていた。
とはいっても、子ども1人で生きていくことは不可能である。それは洋の東西を問わず、またそこがたとえ異世界であっても言えること。
経済的な側面のみを見れば、滞ることなく毎月送られてくる仕送りが十分な生活を保障はしていたが、治安や衛生、その他諸々の人間関係を含め、陰から支えていた町の人々の存在は大きかった。
町を出て男を追い掛けるという選択肢も、当然彼女にはあった。が、そうはならなかった。
それは、男への愛情が薄れたというのではなく、彼女自身がこっそり差し出された助力に気づき、その恩に報いるために取った決断だった。
何度も言うが、北部は魔物が多く、しかも強い。自分の力はきっとこの町に必要だ。そう強く思うことによって、男への思慕の念を心の内に封じた彼女。そして、町を守るために自身の持てる力を尽くすのだった。
当初の彼女の日課は、教会で子どもたちに文字を教え、その子どもたちと一緒に町内を勇ましく闊歩することだった。
彼女たちはそれをパトロールと呼んだ。町の人々はそんな彼女たちを冷やかすこともなく、見かけたらお菓子を配るなどして応援をしていた。時には試練と証した悪戯を行う者もいなかったとは言えないが、それはまた別の物語である。
ヴェルデ唯一の教会は、フリージア王国の国教である聖神教、つまるところ勇者様を心から助けるための教えを説く教会である。彼女は元々、西のアルン王国の貴族の子女ではあったが、幸いなことに勇者の実情を暴露した『西の真実』とは無縁の環境下で育った。
彼女自身、勇者に憧れを抱き、自らも常に勇者たらんとする意思を持ち、正義を忠実に実行していた。
地道な努力の末にDランクへと昇格した後は、彼女を尊敬して追いかけてきた教え子(妹分)たちと共に、次第に城外へも遠征し始めるようになっていった。
「姉様?」
「ごめん、ちょっと考え事してた」
「姉貴の唇が突き出てるってことは、また例の想い人じゃん?」
「キャーっ、妄想チュウだぁ!」
「ちっ、違わ……ないけど。フィルもフィンも冷やかさないの!」
「痛いって!」
「痛いぃ」
ここは、ヴェルデから南に半日ほど下った街道沿いにある町。
夕刻、その中央広場に造られた女神像の前で、アリスにゲンコツを落とされたのは、槍使いのフィルと細剣使いのフィン。紫色の髪が鮮やかな2人は、息の合った連携を得意とする実の姉妹である。
「うふふ。姉様に慕われるなんて羨ましいですね」
「私は、妬き狂いそうなの」
「皆にだって、そのうち素敵な王子様が現れるわよ!」
「嫌味にしか聞こえないです」
「男なんて、興味、ないの」
アリスに羨望の眼差しを向けるのは、アリスを真似して金色の髪を背中まで伸ばした魔法使いのメリー。
逆に、危険な視線を送るのは、茶髪のショートがよく似合う僧侶役のルゥ。リーダーのアリスが率いるのは、この10代前半の少女たち4人だ。
「うしし。“例の想い人が現れるより前に、姉貴はルゥに襲われる”に全財産賭けるぜ!」
「出ました! フィル姉得意の全賭け!」
「フィルさん、確か前回も外して、今は一文無しでしたよね?」
「ルゥに借りるし!」
「ごめん、今月のお小遣い、もう使い切ったの」
「あははっ! フィル姉、アタシがトイチで――」
「静かに!」
「「……」」
アリスの一声に、4人の顔が緊張で歪む。
「突破された……しかも、随分と多い」
何度も修復を重ねたであろう人の背丈ほどの城壁、その向こうから立ち昇る土煙――。
「8、9、10……ザコが10と、あのデカブツか」
「お姉様、ちょっと無理ではありませんか?」
「皆、後ろをよく見なさい」
4人の少女は黙したまま、背後を振り返る。
町を行き交う人の姿は既にない。皆、建物に閉じ篭り窓の隙間から固唾を呑んで動向を見つめている。
「わかった? 私たちが背負っているものが。無理なんて言葉はないの。私たちには勝利しかない、勝ち続けるしかないんだから!」
「「はいっ!!」」
冒険者及び志願兵からなる町の防衛線は突破された。この事実は、既に町が滅亡の危機にあることを示唆していた。
住民の避難誘導役として残された彼女たちが取った決断は、決して褒められたものではない。
しかし、ここで抗わなければ、たとえ生き残れたとしても、後悔の念に苛まれて死ぬほど苦しい思いをする。それを、彼女たちは既に身を以て知っていた――。
ルゥが5人の身体にダメージ軽減の魔法を掛けると、先陣を切って飛び出したのはフィル。間髪入れずに続くのは妹のフィン。
前方で爆発音が轟く。
うまく魔物の群れを分断したのはメリーの魔法だ。
風を斬るような高音――アリスが放った風魔法により、複数の魔物の手足が吹き飛ぶ。
4人組は、うまく攻防のバランスを保ちながら魔物の前進を食い止める。手負いの魔物を的確に狙い、確実に戦力差を縮めていく。
一方、体高5mはあろうかという牛の魔物に単身立ち向かったのは、リーダーのアリス。
銀色に輝く剣と黒々と輝く巨大な戦斧が甲高い音を響かせる。10合の内に1度訪れる隙を確実に捉え、相手に手傷を与えていく。
戦局が拮抗しているように見えたとすれば、それは現実を直視できない空想癖の持ち主か、邪神の使い魔による幻想魔法のいずれかであろう。
4人の表情を見れば明らかな劣勢であることは一目瞭然なのだから――。
ものの10分と経たず、最年少のフィンが脱落する。治癒のために戦線を退くルゥを責める者はいない。
5体もの魔物の攻撃を必死に躱し、又は受け流し続けていたフィルだが、残された体力は既に少ない。頼みの綱であるメリーの魔力も枯渇寸前だった。
敗戦――。
4人の脳裏に揺らめく2文字。
魔物に敗れたことは決して初めてではない。しかし、今のように死を覚悟するのは、彼女たちにとって初めてのことだった。
「全員撤退! 命を明日に繋ぎ、死に物狂いで逃げなさい!!」
死神の誘いを吹き飛ばすような、凜とした声が戦場に響き渡る!
「殿は私が受け持つから!」
アリスだ。
魔物の脚を斬り刻んで文字通りの4足歩行に戻した後、4人組と魔物の間に強引に乱入する!
「アタシも戦う!」
「私も、まだ戦えます!」
「2度言わせるな!!」
「「っ!!」」
「足手纏いだ、早く行けっ!!」
「「……」」
背後を見ることなく全力で走り去るフィルとメリー。
後のことは頼む、そんな言葉が背中越しに聞こえたような気がした――。
町の中で無事に合流した4人の元に、血塗れになったアリスが戻ってきたのは半刻ほど経ってのことだった。
いくら屈強な彼女でも、10体にも及ぶ魔物に囲まれて生きて帰るのは至難のはず。
だが、彼女が生還したのは紛れも無い現実だった。
実際、彼女自身も死を明確に覚悟していた。
しかし、そんな彼女に奇跡が起こった。
彼女が身に付けていた首飾り――母の唯一の形見が、突如として光を放った。
放射する光が魔物を照らすと、その体を覆っていた魔力障壁が次第に弱まっていく。
アリスはその機を逃すことなく、決死の覚悟で剣を振るい続けた――そして、魔物の集団を撃破した。
しかし、奇跡はそこで終わらなかった。
町に戻ったアリスたちの前に、町の守護精霊であるニンフが現れる。
救世主を称えたニンフは、アリスに『女神の加護』を与える。この称号は、自分が得た経験や魔力を仲間と共有することができるという力を持つ。
それは、まさに彼女が成し遂げようとするのに必要な、運命的な力だった。
その後、彼女は教会や孤児院で教鞭をとりながら彼女自身が育て上げた者、又は冒険者として信頼し合えた仲間を集め始める。
そして、再び男に会える日を夢見て、女同士の組織を結成し、愛する町を守り続けていった――。
★☆★
「んっ……ゆ、夢か……」
目の前には斜めに折られたページ。
どうやら本を読みながら寝落ちしてしまったようだ。
それにしても不思議な夢だった――アリスは目を閉じ、今し方見た夢の記憶を呼び覚ます。
彼の夢を見ること自体はそう珍しくはないが、女神様が夢に出てきたのは彼女にとっては初めてのことである。
それに、彼と話をするだけでなく、抱き付いてしまうのも、勿論初めてのことだった。
クラン『エンジェル・ウィング』が結成されて、はや7年。今ではヴェルデだけでもメンバー15名を数える大所帯となっていた。
クラン本部を兼ねる屋敷の3階から町の様子を何気なく眺めていた彼女は、不思議な既視感を覚える。
初めて食べた串焼き屋の露店の前で顔から豪快に転ぶ男性。それを見て笑う女性と、叱る女性――。
「夢と同じ……」
金色の縁取りが施された純白のコートを羽織り部屋を駆け出る彼女の背に、親しみのある声が飛ぶ。
「姉貴、どっか行くんですか?」
「えぇ、ちょっと確認したいことがあって出てきます」
「姉様、お供しますよ」
「私もご一緒します!」
「暇だし、私も一緒に行くの」
“いつもの4人”
アリスに遅れじと走り出したのは、クランメンバーから敬意を持ってそう呼ばれる彼女の側近たちだ。
今し方、城門を潜り抜けて入って来たばかりの馬車を追いかけるアリス。
いつもの4人は、彼女の異様な行動に警戒心を強めつつ、その後を追う。彼女たちの脳裏には、最近耳にしたばかりの魔人の目撃情報が浮かんでいた。
停車した馬車から降りてきたのは、見覚えのない3人の少女だった。
続いて、馭者席から2人の男性が降りてくる。その一方に纏わり付く幼女――深く被ったフードから覗く金色の髪に、嘗ての自分が重なる。
湧き起こるのは、怒りと嫉妬の感情。
片や嬉しそうに微笑む男に対して、片や昔の自分に似た金髪の女に対して――。
一言も発することなくギルドの外で待機するアリス。
そんな彼女の様子を見ていた仲間たちも、一様に敵意を剥き出しにしてひたすら待つ。
さっきの少女たちがギルドから出てきた。
アリスは……まだ、動かない――。
仲間たちは少女たちを気にしながらも、アリスに従う。
例の馬車の馭者と思しき2人の男性が出てきた。
眼鏡の優男と、幼女とイチャついていた男だ。
アリスが男の方へ、ゆっくりと歩き出す。
「「あれが魔人か!!」」
4人の声がハモる。
単身突っ込んだアリスを守ろうと、出遅れた分を取り戻すように猛然と駆け出す4人。
男に殴り掛かろうとして、受け止められてしまったアリス――いや、殴りつけようと駆け寄ったけれど、思いっきり抱きしめてしまったと言った方が正しいか。
抑えきれない涙を拭い、男に相対する彼女の姿を遠目に見ながら、ゆっくりと全てを悟る4人――。
「久しぶりだ……大きくなったな」
「ど、どこを見て言ってるのよ」
「すまん」
お互いに赤面したまま固まる男女――。
今この状況で、2人を往来妨害の罪に問うような無骨な精神の者は居ない。が、空気の読めない男は居た。
「ラーンスロットさん、この人はどなたですか?」
「あぁ? そうだな、俺のいも――」
「妻です」
「「えっ!?」」
大きく口を開けたのは、間近にいたティミーだけでなく、背後で貰い泣きをしていた4人も同様だった。
「待て、まだ俺は結婚して無いぞ!!」
「まだ、ですか……」
突然始まった痴話喧嘩に、白い目で答えるティミー。
「おぉ、そうだ! アリス、こいつ、このティミーはお前と同じ22歳なんだが、どうだ?」
「……」
「なっ、いきなり何を言ってるんですか?」
絶世の美女を前に赤く沸騰するティミーだが、当のアリスは一瞥すらせず。
「僕は何なんですか!?」
「心配するな、お前はティミーだ。おい、アリス。いい加減に離れろ」
「……」
離れろと言われて、逆に強く抱き付く彼女――。
20歳過ぎとは思えないほどべったり張り付く幼稚な彼女に、さすがに周囲の空気も引き始めてくる。
「君たちはあの人の知り合いかい?」
「まぁ、部下のような、親友のような?」
「フィル姉、そこは一応部下って言おうよ!」
「で、お兄さんは、魔人なの?」
「ぶはっ! どうして僕が魔人!?」
「だって、顔が、不細工なの」
「はぁ? 君こそブスでしょがっ!」
「ブス!? これでもルゥは、毎週男の子を振ってるの。ブスじゃないの!」
「まぁまぁ、2人とも落ち着いてくださいね」
事態の収拾を図ろうとするメリーだが、原因を作ったティミーとルゥの睨み合いは終わらない。遠因を作ったラーンスロットが、ばつが悪そうに口を開きかけたとき――、
バフッ!!
町中の空気が震えた。大きな魔力同士がぶつかり合う気配。
「行くよ!!」
「「はいっ!!」」
アリスの掛け声と共に駆け出した5人は、やがて町外れの古い屋敷へと辿り着く。
外壁を駆け上がり、窓を蹴破るアリス。
階段からはタイミングを合わせて仲間が突入している。
そして――彼女は、勇者と出逢う。
駆け足になりましたが、長くなってしまいました。以前から書き足したくても面倒で避けていた部分――これで漸く、次回第40話から、再び本編に戻れます。
しつこいですが、ブクマ等お願い致しまする;;




