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60話 ついに運命の日です!



昨日は投稿できず申し訳ありません(´;ω;`)




−−−−それから数ヶ月が経って。


ついに私は運命の日を迎えていた。

なんの日かと言えばもちろん、四年に一度の建国祭である。


王都は数日前から、異様な盛り上がりを見せていた。


建国祭に向けて、魔法模擬戦(武道会みたいなやつ)や音楽祭など、さまざまなイベントが催されていたためだ。


街の外からやってくる人の数は、あからさまに増え、少し街に出れば、人波に流されそうになるほど。


そして人の多さは、商機を生む。

平時でさえ活気付いている商店街には、さらにたくさんの出店が並び、呼び込み合戦だ。


そんな賑やか、かつ騒がしい空気の中、私は汁を啜って、ほっと一つ息をつく。


「ふぅ」


それは両隣からも聞こえてきて、私は思わず噴き出した。


リディアもレイナルトも息ぴったりだ。


「これ、鶏の味が染みてておいしいね! みんなが並ぶ理由分かったかも」


私はリディアに向けて言う。

レイナルトもそれに大きく首を縦に振り、それから、また汁を飲む。


「うん。とても落ち着く味だ。鶏出汁のお鍋とは考えたね」

「ふふ、これもアイの呟きからできたのよ。鶏を茹でた出汁を使えば、美味しいんじゃないかってね。自慢の鍋よ。うまく行ってるみたいで安心したわ」


そう、私たちが今いるのは、リディアがプロデュースした屋台のベンチだ。


前にレイナルトと話していたアイデアを、リディアは本当に実行に移したのである。


そして、この人気ぶりなのだから、うちのママは商才まであるらしい。


「おかげでしばらくは毎日鍋だったものね。ごめんなさいね、アイ」

「ううん。すごく美味しかったから気にしてないよ」


飽きないのが鍋だしね。


ただまぁ、いくら味は変わるとは言え、同じものを食べ続けていたら、他のものが恋しくなるのは事実で。


私はそれから二人に連れて行ってもらい、いろいろな屋台を巡る。


前世での地元の夏祭りとは規模が違った。

本当になにもかもが揃っていて、次々に目移りしてしまう。


それはリディアも同じだったようで、目についた脂っこいものは大概、購入していた。


「……はは。変装がばれたら、とんでもない話題になりそうだな」


その健啖家ぶりは、レイナルトが少し引き気味にこう呟くほどだ。


「私に言わせれば逆ね。あなたは人の目を気にしすぎよ。好きなものを食べればいいわ」

「そもそもそこまで入らないよ。それに、このあとはパレードに出なくちゃならないから、あんまり満腹になっていたら大変だろう」


パレードという言葉に、ついどきりとする。

そのパレードこそ、聖女を見出す儀式が行われるイベントだからだ。


分かっていたことだが、その時間は刻一刻と迫っているのだ。


私はそのどぎまぎを紛らわそうと、意識的に屋台へ目を戻す。

そこでちょうど目に入ったのは、はちみつ飴のお店だ。


とても一口では食べられない大きさで、あれを食べたらもう甘いものは食べられないかも。


そんなふうな感想が浮かんだすぐあと、途端に頭が高速回転して、私は一つの策を思いついた。


「あれ、ほしいかも!」


それでこうおねだりすれば、


「お。はちみつ飴か。うん、すぐに買おう」

「ふふ、いいじゃない」


二人はすぐに私が指差したはちみつ飴を買って、私に渡してくれた。


平べったいその大きな飴、その真ん中を私はまず少し齧る。

はちみつの優しい甘さが口の中に広がり鼻を抜けて、ほっとする味だった。


が、そんなことは今はいい。


「おいしい。ママも食べてみて」


私はずいっと、まずその飴をリディアに差し出す。


すると彼女はそれを受け取り、髪を耳元にかけながら、ひと齧り。


「うん、美味しい。久々に食べたわね」


と、こちらに笑いかけながら、飴を返してくれるから、私はそれをそのままレイナルトへと渡した。


「パパもどうぞ」

「……ありがとう、アイ。えっと」


レイナルトはリディアの顔色を窺う。

その頬には若干の朱がさしており、私はついにっと笑ってしまう。


思いついたのは、少女漫画などではお決まりの、「お裾分け間接キス」作戦だ。


これはさすがに、どきどきするはず! そう思ったのだが、レイナルトは普通にリディアとは反対側から一つ齧って、私に戻す。


「ありがとう、アイ。たしかに甘くておいしいね」


……どうやら、飴が少し大きすぎたらしい。

三つの噛み跡がついた飴を手に、私は「もう少し小さければなぁ」と思わずにはいられない。


王様へレイナルトが啖呵をきって私たちとの関係を認めさせて以来、二人はそれなりにいい空気を保ち続けている。それは年越しの時よりもさらに近づいた気もするし、多少なりは互いに好意に似たものはあるのだと思う。


ただやっぱりそれが恋心だと認識するのは、まだハードルが高いらしい。


まぁでもそこは、事ここに至って焦ってもしょうがないよね。

この、くっつきそうでくっつかない、みたいな微妙な空気感も楽しむべきだ。

少女漫画好きとしてはなんならメインディッシュとも言えるしね。



次で一区切りとなります。

引き続きよろしくお願い申し上げます!


(次はなんと、告知情報もあります★!)

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この幸せが 壊れませんように…
未来を予知できる聖女が見つかる運命の日。 本当の聖女か、または原作知識でチートをかます転生者か…
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