58話 いざ謁見!
当然ながら、馬車がそのまま王城の中に入ることはできなかった。
馬車は門番らに止められて、「失礼ですが、来訪のご予定はありましたか」と声をかけてくる。
それでレイナルトが外へと顔を出すと、
「な、なぜここに!?」
その人はひっくりかえりそうな勢いで、大いに驚いていた。
どうやらレイナルトが遠征に出ていること自体は、門番らでも知っていることだったらしい。
「少し用があってね。通してくれるかい」
「も、もちろんですとも!」
馬車は無事に入城を許される。
そうしてしばらく進み、前に壁を乗り越えて侵入した政務エリアの前で、今度は三人で下車する。
またしても門番らには驚かれたが、やはり通過はあっさりと許された。
御者の方に三人で礼を言ってから、先に進む。
そうして、この間は衛兵を撹乱して侵入した宮殿の中に、堂々と踏み入れた。
「……かなり久しぶりに入ったわね」
とは、リディア。
どうやら公爵令嬢様でも、そうは立ち入る機会がない場所らしい。
「アイはこの間、ここまで入ったんですってね?」
「そうなのかい?」
ジョルジュ先生ときたら、なにからなにまで話してくれるものだ。
「えっと、うん。迷っただけだけど」
私はこう誤魔化しつつ、長い廊下を歩く。
昼下がりという時間帯の問題なのか、ほとんど人とはすれ違わなかった。
ただ巡り合わせとは奇妙なもので。少ししたところでまたしても、ジョルジュ先生とばったり出くわす。
思わず「げ」と言いそうになるが、それはどうにか飲み込んだ。
「レイナルト王子、お帰りになられていたのですね」
「はい、先ほど。父上と話がありまして」
「……そうですか。それで三人だと」
ジョルジュ先生はレイナルト、リディアと軽く雑談を交わす。
その最後、先生は私のもとでしゃがんで、
「どうやら人を動かす才もあるようですね、あなたは」
こう微笑みながら言うのだから、やっぱり過大評価されている。
とりあえず理解していないふりで首を傾げたら、なぜか噴き出された。
「本当に面白い子だ」
なぜか上機嫌で去っていく。
……いったいどうすれば、普通の子だと思ってもらえるんだか。
いっそ今度の勉強会では大はしゃぎでもしちゃおうかしら。
そんなことを思いながら私がその背中を見送っていたら、レイナルトとリディアはいつのまにか少し先にいて私を呼ぶから、「うん」と答えて駆け寄った。
その後、レイナルトは役人らに王の居場所を尋ねて進み、政務エリアの中心にある部屋の前でついに立ち止まる。
どうやらここに、クローヴィス王がいるらしい。
部屋の前の警備が他の部屋と比べて厳重だし、扉一つとっても他の部屋とは違うのだから、間違いなさそうだ。
レイナルトは、その警備をしていた者となにやら話をする。
その後、中から執事が出てきて話をするなど、しばらく待ったのち、
「入れ」
ついに入室が許可された。
クローヴィス王の低くどすの効いた声に、レイナルトは胸に手を当てて大きく息をつく。
「行こう」
それからこう声をかけてくるから、私は大きく首を縦に振った。リディアも、こくりと小さく頷く。
それから警備員によって扉が開けられたので、中へと入った。
仕事バタバタで短めで、すいません(涙)
引き続きよろしくお願いします!




