ハロウィンの約束
ハロウィンの夜、町はオレンジ色に染まります。
子どもたちはみんな魔女やオバケに仮装して、お菓子をもらいながら笑顔で歩きました。
その人混みの中で、一人の男の子・大地は足を止めました。
「……いいなあ」
彼は仮装もせず、お菓子を入れる袋も持っていません。
家が貧しくて、仮装用の衣装もお菓子を買うお金もなかったのです。
「僕もみんなと歩きたかったな……」
大地は寂しそうに広場を抜け、人気のない道を歩きました。
そのとき、道端にぽつんと小さなカボチャのランタンが置かれているのを見つけました。
「なんでこんなところに?」
不思議に思ってランタンに近づくと、ランタンの中から声がしました。
『おや、君はどうしてお菓子をもらいに行かないんだい?』「……僕、仮装してないし、袋もないんだ」
『ふむふむ。ならば、少しだけ手を貸してあげよう』
ランタンの火がふっと揺れると、大地の服がふしぎに変わりました。
古いシャツは黒いマントに、破れたズボンは魔法使いのズボンに。
「わあ……!」
さらに足もとには、かぼちゃ色の小さな袋が現れました。
『これで立派な仮装の子だ。さあ、町へお行き』
「でも……僕だけ、ずるい気がする」
『ずるくなんかないさ。ハロウィンはみんなが笑うための日だからね』
ランタンの言葉を胸に、大地は勇気を出して広場に戻ると、子どもたちは大地を見て目を輝かせました。
「かっこいい魔法使いだ!」
「一緒にまわろうよ!」
「はやく行こう!」
大地はみんなに誘われて、初めて「トリック・オア・トリート!」と声を合わせました。
手にした袋はどんどん重くなり、心もどんどんあたたかくなりました。
夜が更け、家へ帰る道すがら、大地はもう一度あのランタンのところへ行きました。
「ありがとう。僕、とっても楽しかったよ」
『それはよかった。来年も、また会えるといいね』
「うん。また来年も。約束だよ」
火が小さく揺れ、やがて静かに消えました。
けれど大地の袋の底には、小さなかぼちゃ型のクッキーが一枚だけ残っていました。
それは来年の約束のしるしのように、小さなかぼちゃ型ちのクッキーはほのかに光っていました。




