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Variety of Lives Online ~猟師プレイのすすめ~  作者: 木下 龍貴
7章 森の暮らしと危急を告げる使者
83/105

マナウス逃避行

装備とスキル構成の確認に時間が吸われていました。


新しいスキルが多いので、後書きに簡単な説明を載せてあります。読まなくてもストーリーに影響はありませんが気になった方はどうぞ。


 緊急クエストが発生した翌日、仕事終わりにログインするとなじみのある天井が見えた。最近住まわせてもらっているウェンバーの家だが、馴染んだと思えるほどの滞在期間になってきたな。

 そのままベッドに腰掛けながら前日のやり取りを振り返る。コボルト族の狙いを探り今後の方針を話し合うだけのはずが、気づけば長老話を聞き、突如宝石から姫と呼ばれる妖精が現れるという目まぐるしい一日だった。


「緊急クエストは今週末か」


 あのまま始まるのかと時間を確認してハラハラしていたところ、姫はゆっくりと地面に降り立ちそのまま座り込んでしまった。長老の話では、妖精王が編み出した難易度の高い転移魔法を使ったらしい。魔法技術の拙さを膨大な魔力量でごり押した結果、心身の負担が大きくなったとのことだ。姫が運ばれた後、長老は計画の詳細を話した。


「今回のような強制的な転移は負担が大きくもう使えん。しかし、姫は膨大な魔力をお持ちのため、この隠れ里の結界を出るとすぐに捕捉されてしまうじゃろう。さらには姫が脱出されたことはすでに敵方にも知れ渡っておる。姫の体調の回復と敵の動きのバランスをとって動かねばならないのう」

「ですが、結界の外ではすぐに捕捉されるのなら、起きた後すぐに出発するのが最も良いのでは?」


 長老はふるふると首を振り、姫が運ばれた方向を見やった。


「策はある。王が使ったものと同種の結界石を作り、ご自身を魔力ごと封じてもらう」

「そんなことができるのですか?」

「本来なら無理じゃが、姫は妖精族じゃ。体は魔力でできておる。分体を作って魔力を分けたうえで結晶化されれば、我らでもお運びすることがかなうじゃろう」


 妖精族って魔力体なの?しかも分裂するってなに?という疑問もあったが、その辺は後々説明してくれるんだろう。重要なのは、今週末に緊急クエストが始まり、妖精族の姫様は分体を増やしてさらに小さくなって結晶化し、コボルト族の使者がそれを運ぶため、俺たちが使者の護衛をする。それだけだ。


「銃の更新は間に合わない。スキルの更新も難しいか。となると…」


 俺は装備とスキルのセットアップを行う。今回は新しい構成が間に合わないのと、他の参加者が多くなる。ということは移動系メインのスキル構成になるな。少し前に発見された、スキルの統合進化によって俺のスキルはずいぶんとすっきりとしている。現状の装備とスキルセットアップはこんな感じだ。


装備

武器:セルグ・レオン試作型

頭:狩猟人のイヤーマフ

上半身:狩猟人の皮服

下半身:狩猟人の皮ズボン

腕:狩猟人の指だし手袋

足:狩猟人の皮靴

マント:カメレオンマント

アクセサリー:アギトのネックレス(蜘蛛)、森馬の携行ガンケース

アランの竹筒 レア度2 重量1


セットスキル

射撃銃Lv5 パルクールLv7 フットワークLv4 気配感知Lv14 魔力操作Lv20 隠者Lv3 登攀Lv24 精密投擲Lv9 集中Lv27 視力強化Lv22


 装備は他にもアランの背負箱があるのだが、今回は移動速度を重視するためもっていかないことにしている。夏から秋にかけてのプレイでかなりレベルアップしているな。特に統合進化させたパルクールとフットワークが森の中の行動に役立っている。足場が悪い中でもすいすい進めるのはこの二つあってこそだ。ただし、このままだとMP消費量がかなり厳しい。今回はこのままいくが、いずれは魔力強化のレベルを上げて対応したいところだ。

 スキルのセットアップを終えると、俺はウェンバーの母親に挨拶をして家を出た。さて、週末まで依頼をこなしながら少しでも鍛えるとしますか。



 平日をこまごまとした準備やトレーニングに費やした週末、俺たちはリゼルバームの中央広場に集まっていた。お立ち台が作られた広場には、すでに多くのプレイヤーが集まっていた。俺の後にも続々とやってくるな。今回のクエストに参加するプレイヤーは確か60人ほどだったはずだ。それぞれが仲の良いプレイヤー同士やコボルトと話している。


「やあカイさん!来ましたね!」


 声の方を振り返ると、すっかり見慣れた尻尾が見えた。この一週間はちょくちょく一緒に依頼をこなしたこともあり、連携力が上がったように思える。


「そりゃあな。ここまできて参加しませんとはならんだろう」

「ふふ、頼りにしていますよ。あ、そうだ。僕たちはできることが結構似てますから、今回は一緒に行きましょう!」


 思いがけない提案だったが、ウェンバーは恐らく攻略組と同等かそれ以上の力があるのではと考えている。それが俺と一緒だと本来の力が発揮できないのではないか。そんなことを考えているとウェンバーはにっこりと笑って話を続けた。


「僕はコボルトのエリートですから!防衛部隊じゃなくて自由に動くことになるんです。それなら同じ働きができるパートナーが欲しいんです!ね?」

「そうか、ウェンバーがいいならよろしく頼むよ」


 話が終わると、ウェンバーがパーティーに入ったことを知らせるアナウンスが鳴った。その後は近くにいたランバックと少し話をし、クエストの時間がくる。

 ざわついていた広場に緊張感が満ち、次第に静かになっていく。プレイヤーだけではなく、コボルトも相当数が集まっている。


「準備はできているようじゃな」


 長老は姫を連れ高台まで歩いてゆく。以前は歩くことすらままならないように見えた姫も、ふわふわと浮きながら長老の後をついていっている。高台に2人がのぼると長老は姫の斜め後ろに立つ。


「コボルトの精鋭たちよ、もはや詳しく言わずともよいな。この度の作戦が王国の未来を決める。我々で止まった時を再び動かそうぞ!」


 コボルト達から大きな声が上がる。話ではリゼルバームの全戦力に近い人数が参加することになるらしい。文字通り、すべてを懸けた戦いのはずだ。


「そして、今回作戦に参加する冒険者の客人方。いや、もはや客人とは呼べないのう。此度は我らの戦いへの助勢、感謝申し上げる。この度の作戦は王国の復興のみにあらず!我らと人族との融和の実現への第一歩となろうぞ!」


 ノリの良いプレイヤーが声を出し、それに合わせてコボルトも声を上げている。ほとんどのプレイヤーにとってはめったに受けられないユニーククエストだ。テンションが上がるってもんだろう。俺だって例外じゃない。

 一通り盛り上がった後はコボルト族もプレイヤーも静かになっていく。場が静まり返ると、これまで一言も話していなかった妖精族の姫が一歩前に出る。


「時間はありませんが、私からもすこしだけよろしいでしょうか。勇敢なるコボルト族と人間族の皆さん。私はギムレッド王国の第2王女、ユーライアと申します。現在、ギムレッド王国は滅亡の危機に瀕しています。それは、鬼族を中心とした反乱だけが原因ではありません。決してあってはならないことが、あろうことか王族から反乱に加担する者が現れたのです。王都陥落には、姉の助力が大きかったと敵方の者からも聞いています。力のみだった反乱軍は姉から多くの智慧をつけ、王都を抑えました。もはや私達だけでは状況を覆すことは難しく、人間族の助けがなくては敗北は免れない状況です」


 ユーライアはそこで言葉を区切り、俺たちプレイヤー達の方を見ている。現状ほとんど関わりのない相手に協力を求めなければならない状況、心中はどうなのだろう。


「今の私は無力に等しく、集まった冒険者の皆さんに報いることができません。それを理解した上でも助力してくれることを、私は生涯忘れることはないでしょう。この度の戦いの果て、生きて再び(まみ)えることができた時、改めてお礼の言葉を伝えたいと思います。人間族の都市マナウスまでの護衛、どうぞよろしくお願いします」


 その言葉とともに、ユーライアの周りが柔らかく輝く。次第に光は凝縮し、一瞬だけ強烈に光ると、青い大きな結晶石が現れ、5つに分かれる。それぞれがバスケットボール程度の大きさになり、長老の近くにいたコボルト族が恭しく押し抱く。


「皆の者。ユーライア姫は我等にすべてを託された!敵が姫の魔力を感知することは難しいが、すでに森にはかなりの敵が蔓延っておる。戦闘は避けられぬ状況じゃ。しかし、どれだけの血を流すことになろうとも、この中の誰が斃れようとも、決して歩みを止めることは許されぬ!たとえどれだけの犠牲を払おうとも、姫の御身を無事にマナウスにお連れするのだ!皆の者、出陣じゃ!」


 一際大きな鬨の声が響き、長老の立つ高台の前に特殊エリアの入り口(ポータル)が現れる。集まったコボルト族は我先にと殺到し姿を消していった。


「よし、それじゃあ僕たちも行こうか。無事に終わらせてマナウスで祝杯をあげよう!」

「おお!」


 クリスを筆頭にプレイヤーも特殊エリアへと消えていく。

 俺は一つ深呼吸をした。さすがに大型イベントにすら影響を与えるかもしれないクエストに参加するのは初めてだ。失敗した時のことを考えると、かなりの緊張を感じるな。簡単に言うとビビっている。しかし、隣にいるお調子者の相棒はいつも通りのようだ。


「それじゃあカイさん、行きましょうか」


 力強く尾が揺れる。気負うことなく、昂ることもないいつも通りの姿だ。見ていると肩の力が抜けていくな。


「ああ、行こうか」


 俺は覚悟を決めると入り口(ポータル)に入る。

 ポータルの中では入る前と同じ景色が広がっている。緊急クエストのことは掲示板で多くのプレイヤーに周知されている。クエストを受注していない野良参加を防ぐための措置なんだろう。


「これから森へと出る!森に入ったらすぐに陣形を組んで移動を始めるから遅れないように頼む!」


 使者のコボルト族が大勢の護衛とともに動きだす。こうして決死隊によるマナウスへの逃避行が始まった。

 

武器スキル

射撃銃(銃30から進化)パッシブ型 MP消費なし

 武器スキル。銃全般に補正がつくが、射撃タイプの銃の補正が特に大きくなる


補助スキル

パルクール(アクロバット30と跳躍30の統合進化スキル)パッシブ型

 セット後常に総MPから一定量消費状態(極小)になる

 身体操作能力が向上する。走る、跳ぶ、空中動作の際における運動能力、跳躍時の動きに対して大きな補正がつく。スタミナ消費に関する補正はなし


フットワーク(歩法30と敏捷強化30の統合進化スキル) パッシブ型

 セット後常に総MPから一定量消費状態(極小)になる

 基本的な運動能力に補正が入る。足さばきの音を小さくし、移動に関するスタミナ消費を大幅に抑える


気配感知(気配察知30からの進化スキル) アーツ型(魔力切れまで使用可)

 発動終了後リキャスト3分

 使用中は常時MP消費(中)

 範囲内の敵の数や姿形、地形データなどの情報を取得する。感知範囲はある程度変更可能で、範囲を絞れば距離を延ばせる。精度を落とせば広くできるし、距離と範囲を抑えるとより精密にわかる (魔力をとばすソナーのような仕組みのため、魔力操作スキルをセットするとかなり柔軟に索敵範囲を変えられる)


魔力操作(正当進化:魔力制御 )パッシブ型

 セット後常に総MPから一定量消費状態(中)になる

 魔力操作時の精密性について補正が入るほか、消費MPが減る。逆にMPを多く詰め込むことで本来以上の火力を出すオーバーヒート(プレイヤー呼称)も使えるが、規定量を超えると消費MPが加速度的にに増加するため一気に燃費が悪くなる。過去に詰め込みすぎてポリゴン爆散したプレイヤーあり。

 魔力操作のみだとほぼ産廃スキルとなるが魔力型ビルドだと鉄板スキル。パッシブ型・アーツ型を問わず魔力を消費するスキルを一緒にセットするのが常識。

 魔力操作+MP消費型スキルの統合進化先が異常に多いことで有名。最大の弱点はスキルポイントがたりなくなること。魔力型ビルドのプレイヤーは、効果は高いが他のMP使用スキルの補正を諦める特化型か、効果はそこそこだが全体的に補正の入る万能型、幾つか取得しなおして特化と全体補正をとるバランス型で死ぬほど悩むことになる。


魔力強化 パッシブ型

 セット後常に総MPから一定消費状態(大) セット中は総魔力量に補正がかかる。レベル20までは総魔力量があまり増えず、スキル進化するまでは総魔力量の増加よりもセット時の一定消費が上回る。


隠者(隠密30から進化) アーツ型(魔力切れまで使用可) リキャスト30秒

 使用中は常時MP消費(中)

 認識阻害が入り音や気配を大きく減らす。察知スキルに対しての反応を抑えられる。温度感知や匂い感知といった索敵系スキルには効果が薄い


隠蔽 パッシブ型

 セット中常に総MPから一定消費状態(小)になる

 自身の痕跡が消えるまでにかかる時間が短縮される。罠などの設置アイテムも同様でモンスターや索敵系のスキルから発見されにくくなる。


登攀 パッシブ型 

 登る際にMP自動消費(中)

 壁や木などに登りやすくなる。セット中は登攀時のスタミナの消費が大きく下がる。


精密投擲(投擲30から進化) パッシブ型

 MP消費なし

 投げ物の際の飛距離やコントロールに補正がはいる。進化したことで補正範疇アイテムの増加、命中率アップ、スタミナ消費が減った


集中 アーツ型 リキャスト2分

 使用中は常時MP消費(大)

 使用中は使用者の体感時間に補正が入る。(少しゆっくりに感じる) 行動に対して補正が入る。(カイの場合:銃の精度が上がる、投擲がより正確になるなど)


視力強化 パッシブ型

 使用中は常時MP消費(小)

 使用中は動体視力に補正が入り、スコープ機能がつく(オフにできる)

 統合進化スキルが発見されるまではアイテムのスコープでいいと言われていた死にスキルだった。


これでカイの戦闘・補助系スキルは大体入っているはずです。生産採取系はまた後日。

ちなみに、常に一定量のMP消費により、カイの魔力運用はカツカツです。

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― 新着の感想 ―
[一言] 後書きは誤字報告できないのでこちらにて報告させてください。 スキル:魔力操作の項目で「加速度的にに増加する」となっている誤字部分があるようです。
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