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Subjects Runes ~高速詠唱と現代知識で戦乱の貴族社会をのし上がる~  作者: くまひこ
第2部 最終章 7血族の復活

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第414話 ヒルデ大尉の卒業記念パーティー①

書き足してたら長くなったので2つに分けました


まずは前編です

 その夜、ヒルデ大尉の卒業記念パーティーがアスター邸で開催された。


 主催者はもちろんランドン家の当主でヒルデ大尉の兄であるクロム皇帝とその妻のナツなのだが、ナツは俺の顔を見た途端「チェンジ」を唱え、ローレシアを身代わりにして俺の前から姿を消してしまった。


 あいつ、このまま一生俺の前に姿を現さないつもりなのだろうか。だったら俺は通信魔法・ユビキタスを使って、ナツの脳内に直接語り掛けてやるぞ。


 そんな俺は今夜の主役であるヒルデ大尉の隣の席、つまりランドン大公家のテーブルの中心に座らされることになり、俺の隣に腰を下ろしたイプシロン王子が爽やかな笑顔で話しかけてくる。


 キミは10人も嫁がいて大変だなと笑っているが、これはジューンを蔑ろにしていないか探りを入れるための会話だろう。


 そう言えば昔「過去の恋愛、女は上書き保存、男はフォルダ保存」という格言を聞いたことがある。イプシロン王子を見ていると、この格言が真実ではないかと思ってしまう。


 俺は別テーブルでネオンやマイトネラ女王と一緒に歓談しているジューンをチラッと見てみた。


 彼女はイプシロン王子を特に気にする様子もなく、俺の視線に気づくとニッコリと微笑みかけてくれた。それを見たイプシロン王子がショックを受け、俺への当たりが強くなるという悪循環。


 そんな王子の妻となるコンスタンツェは、イプシロン王子をクスクス笑いながらおっとりとした笑顔で全てを受け入れているようだった。この二人は3日後、帝都ノイエグラーデスで結婚式を挙げる。


 俺が言う資格は全くないが、ジューンのことは早く忘れてコンスタンツェを幸せにしてやって欲しい。


 ほんと頼むよイプシロン王子・・・。





 俺にとっては少し居心地の悪いパーティーだが、他のテーブルはみんなとても楽しそうだ。


 アスター家のテーブルでは、イワンとアナスタシアの他、リアーネとアルフレッド夫妻に、ローレシアの懐刀であるアンリエット、そして侍女長のマリアとその婚約者であるアルゴが歓談している。


 カトレアとエミリーは他の侍女たちと共にメイドとして一生懸命働いており、カトリーヌはフリュやセレーネたちと同じテーブルを囲み、隣に座るマールの料理をエレナが毒見しているのを見て笑っている。


 このパーティーに毒見役など不要なのだが、任せた仕事は完ぺきにこなすエレナの姿に、マールの護衛役を任せて正解だったと俺は思った。


 そんな風に会場を見渡していた俺に、クロム皇帝と会話を楽しんでいたヒルデ大尉が話しかけて来た。


「あ、アゾートさん・・・」


 頬を赤らめたヒルデ大尉が俺の名前を呼ぶ。


「ぶ、ぶ、ぶ・・・ブリュンヒルデ・・・」


「「・・・・・」」


 ダメだ。照れくさくて会話にならない。


「・・・ねえ、お互いの呼び名を元に戻しましょう、アーネスト中尉」


「そうですねヒルデ大尉」


「中尉は妹のリーズさんたちと久しぶりに会うんでしょ。何か居心地が悪そうだし、もう向こうのテーブルに行ってもいいわよ」


「いいんですか。じ、じゃあお言葉に甘えて・・・」


 俺はイプシロン王子とクロム皇帝に断って席を立つと、クロリーネとリーズの座るテーブルに向かった。





 クロリーネとリーズの間に座った俺に、二人はこの1年間の話を聞かせてくれた。


 クロリーネは南方未開エリアについて行けなかった悔しさを勉強にぶつけ、ボロンブラーク騎士学園を見事首席で卒業した。そして魔法アカデミー研究科への進学を決めて俺と同じ研究室の1年後輩となり、次の調査旅行には一緒について来ることになる。


「アゾート先輩、わたくしやっと先輩に追いつきました。これからはずっと一緒ですね」


「頑張ったなクロリーネ。マールにはあまり危険なことをさせられなくなったので、エースパイロットであるクロリーネの参戦は大変心強い。頼りにしてるぞ」


「はい!」


 デレしかない元ツンデレのクロリーネは、目を輝かせて俺を見ている。クロリーネはこのままソーサルーラにある俺たちの家に引っ越してきて新生活を立ち上げる。明日はショッピングついでに彼女とデートをする約束になっている。


 そしてさっきからゴハンを食べながら話をしている行儀の悪いリーズに俺は尋ねる。


「なあリーズ、お前の争奪戦は決着ついたのかよ」


「もぐもぐ・・・ついたよ」


「へえ・・・それで誰と結婚することになったんだ」


「もぐもぐ・・・アイルがうちに婿入りすることになったの」


「お前のクラスメイトのアイルがあの戦いを制したのか・・・だがリーズ、お前は王女なんだからゴハンを食べながら喋るのはよくないぞ」


「もぐもぐ・・・このゴハンすごく美味しいね」


「・・・お前のそういうとこ、ほんとセレーネにそっくりだよな。まあローレシアの家のゴハンが上手いのは、カトレアたちと過ごしたこの1年で俺も痛感しているが、一応お前は王女なんだからゴハンを食べながら喋るのはやめなさい」


「もぐもぐ・・・でも、セレン姉様やお父様たちもみんな食べながらしゃべってるよ」


 リーズが指差したテーブルではセレーネと俺の両親が既に飲み会を始めていた。ワイングラスを片手に騒いでいるうちの家族の姿に、別のテーブルからあきれ顔で見ているネオンたち聖地アーヴィン組。


 メルクリウス家は血統だけは一流だが、心はフェルーム騎士爵家のまま変わっていない。うちは王家だけどこれでいいのかも知れないな・・・。


「ダーシュとサルファーは残念だったが、お前がアイルを選んだ決め手は何だったんだ」


「二人とも伯爵家を継がなくちゃいけないらしくて、私を嫁入りできないか話し合いが持たれたんだけど、王女は王家以外には嫁入りさせられないとアージェント顧問が絶対に首を縦に振らなかったのよ。それでうちの国に婿入りできるのがアイルだけだったから選択の余地がなかったの」


「そんなしょうもない理由で決まったのか。まあダーシュはいいとして、サルファーはさすがに気の毒になって来た」


「そうね、サルファーはかなり落ち込んでいたけど、私のお友達のヒルダ様が慰めていたわよ」


「・・・そう言えば、お前の友達にアイルを狙ってた令嬢がいたのを思い出した。その子はどうなったんだよ。お前を恨んでるんじゃないのか」


「メリア様はアイルの第2夫人に決まってディオーネ城に引っ越してくる予定なのよ。これも全てお兄様のお陰だって、すっごく感謝してたよ」


「え? つまりお前とそのメリアって子は、どっちもアイルの嫁になるのか。それはいいけど、どうして俺のお陰なんだ」


「アイルはお兄様の義弟としてメルクリウス王家の一員になるし、その国王であるお兄様には10人も嫁が居て、財力もアージェント王家を抜いてクリプトン侯爵家に次ぐ長者番付第2位の大金持ちだから、嫁なんか養い放題だってアージェント顧問が言ってたわよ」


「嫁を養い放題って・・・ていうかまたあのオッサンが元凶かよ!」


 アージェント顧問が絡むとあちらこちらでハーレムが形成されていくが、アウレウス宰相が言うところの魔力至上主義の観点からは、外国の有望な令嬢をどんどんメルクリウス=シリウス教王国に引き入れてくる必要があり、戦略に沿った正しい行動に思えてきた。


 特にSubject因子は女系遺伝するため、その保有者は男よりも女の方がはるかに価値が高いのだ。前国王である顧問が本気で仕掛けてきたとすれば、アージェント王国も争奪戦に参入してくるだろう。





「それより、お兄様はよくブロマイン帝国の皇女殿下を嫁にもらえたわね。クロム皇帝と同じテーブルに座るお兄様には違和感しか感じなかったけど」


「ブロマイン帝国の皇女殿下か・・・そう言われればとんでもない話に聞こえるけど、ヒルデ大尉は上官という感じしかしないし、逆にそう思わせて俺と大尉を恋仲にさせたのがクロム皇帝の計略なんだよ。それに気付かず過ごした1年間、ずっと彼の手のひらの上で転がされていたんだから、本当に恐ろしい男だよ」


「アウレウス宰相がいつも褒めていたし、クロム皇帝って本当に頭がいいんだね」


「悔しいがそこは認めざるを得ないな」


「それとお兄様」


「なんだ?」


「結局この二人も嫁にするの?」


「え?」


 リーズの目線は、なぜか同じテーブルに座っているエルリンとキーファを向いていた。


「この二人、お兄様が熱く語っていたエルフよね! 二人ともまだ子供だけど、大きくなったらすごい美人になると思うから、お兄様はこの二人を嫁にするために連れて帰って来たんでしょ」


「こいつらはアルゴと結婚させようと思って連れて来たんだが、それを断られたのをお前も見てただろ」


「さっきはまだ気持ち悪くてアルゴの話なんか聞いてなかったけど、この2人はアルゴなんかよりお兄様の方がずっとカッコいいって言ってるわよ。それでもし結婚してくれなかったら、メルクリウス帝国に帰って適当なゴブリンの嫁になるって」


「げっ! そう言えばそうだった・・・おいエルリンとキーファ、俺の従兄弟を紹介するから一度会ってみてくれ、頼むっ!」


 するとさっきから黙って俺たちの会話を聞いていたキーファが、キッパリと俺に言った。


「先ほどのアルゴ様とのお話しの中で、わたくしたちと分家を無理やり結婚させることはしないし、誠実に向き合ってくれるともおっしゃられていましたよね」


「うっ・・・いやその通りなんだけど、さすがにお前たちとはそのなんだ・・・あ、そうだ! キーファは俺の一存では決められないし、一度エルフの里に戻ってご両親に相談してきなさい」


「ご両親って・・・そう言ってわたくしだけエルフの里に帰して、エルリンだけメルクリウス家に引き取るつもりですね。姉であるわたくしもちゃんと王家に引き取ってくださいませ」


「えええ・・・」


 キーファはあくまで俺の所に居座るつもりだ。だがよく考えればコイツは成人するまであと10年はかかるし、下の弟のアルミンとちょうど釣り合うはず。


 アルゴの言うとおり好きな相手と結婚するべきと言うのであれば、俺もクロム皇帝を見習ってキーファとアルミンを恋仲にしてみせよう。くっくっく。


 それよりも問題はエルリンだ。こいつはあと1年で成人してしまうからそれほど時間は残されていない。


 今のロジックだと最後は俺が嫁にするしかないが、そうなると前世の娘を自分の嫁にしてしまった罪悪感が半端ないし、それを見たディオーネが絶対文句を言ってくるはず。


 どうしたらいいんだろう・・・。





 その時、俺の背後からフリュの声が聞こえた。


「ディオーネさん、お父様を困らせてはいけません」


 後ろを振り返ると、氷の女王モードのフリュがキーファを見つめている。


「フリュ、今キーファをディオーネと呼んだのか?」

次回もお楽しみに

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