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Subjects Runes ~高速詠唱と現代知識で戦乱の貴族社会をのし上がる~  作者: くまひこ
第2部 最終章 7血族の復活

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第413話 アルゴの気持ち

 アスター邸の応接室に移動した俺たちは、そこでお互い納得が行くまで話し合うことにした。


 向かいに座ったアルゴの後ろには15人の侍女たち(なぜか全員、アルゴよりも年上)がズラリと勢ぞろいし、アルゴの嫁の座をかけた熾烈な争奪戦が繰り広げられているのが現状である。


「まずお前に聞こう。ここにいる侍女たち全員を娶るわけではないそうだが、だったらなぜ彼女たちを競わせて自分に尽くさせようとする」


「全員娶ることが不可能なのは兄上ならわかるはず。それに僕は彼女たちに強制しているのではなく、自分の意思で競っているだけだ。現に、兄上の後ろにいるカトレアとエミリー、それに年下の侍女たちは僕のことを全く見向きもしていない」


「だが王族であるお前が、この中から何人か娶る予定があると言えば、競争が起きて当然じゃないか」


「それはそうかもしれないが、僕は僕のことを本当に愛してくれる女性と結婚したいんだ。それをそこにいるクロリーネと婚約していた2年間で痛感した」


 アルゴは俺の後ろに立つクロリーネをジッと見つめてそう言った。振り返るとクロリーネはとても申し訳なさそうな表情でアルゴに告げた。


「本当にごめんなさいアルゴ様。わたくしはアルゴ様の婚約者にも関わらず、どうしてもアゾート様のことが忘れられず、あなたを深く傷つけてしまいました」


 アルゴはその言葉にうなずくと、


「キミはキミで本当に好きな相手と結婚できず、辛い思いをしていただろうし、お互い幸せな状況ではなかったな。だから兄上が国王になってくれて、アウレウス派とシュトレイマン派の両方の令嬢と結婚できるようになってくれたのは助かった。でも僕はこの事があってから、真実の愛を求めるようになってしまった」


「真実の愛・・・」


「クロリーネとの婚約解消後、今度はルカちゃんモカちゃんミカちゃんの3人が僕に猛烈にアタックしてくれて、3人が売上を競うことで誰が本当に僕のことを愛してくれているのかが分かることに気が付いた」


「お前、それはヒモかホストの発想だろ!」


 まさか母上が付いていながら、アルゴに歪んだ発想が植え付けられてしまった。いや、これは俺の責任でもあるな。


「だから侍女たちにも同じように接すれば、この中の誰が真実の愛を持っているのかが分かるはずなんだ。そして最初に真実の愛を見せてくれたのが、侍女長のマリアだった」


「アルゴ・・・お前がやっているのはただ競争を煽っているだけで、真実の愛はこんな方法で分かるわけがない。それに競争に敗れた子はどうするつもりだ。捨ててしまうのか」


「僕だって辛いが全員娶ることが出来ない以上・・・なるほどそういうことだったのか。兄上は自分の手に余った令嬢を僕や分家の従兄弟たちに回して、彼女たちへの責任を果たしたつもりになっているんだな」


「なっ!」




 確かにアルゴの言う通りだった。


 最初に俺はマイトネラをアルゴに娶らせようと考えていたし、エルリンやキーファをアルゴに押し付けるために今日ここに連れて来た。


 だが今のアルゴを見る限り、エルリンとキーファを絶対に娶ろうとはしないだろう。


 俺が二の句を告げないでいると、ネオンがため息をついて俺に言った。


「どうやら安里君の負けのようね。アルゴも色々間違っているとは思うけど、彼に嫁を押し付けるのはもう止めなさい」


「・・・そうだな、困った時に全部アルゴに押し付けるのはもう止めるよ。だがメルクリウス家や王国のために必要な婚姻もあると思う。それも断られてしまうと、王族としての義務は果たせないぞ」


 俺がアルゴに向きなおると、改めて狂王バーンとメルクリウス公爵家滅亡の遠因となった前世の話と、それを反省したフリュの決断を話して聞かせた。


「お前は初めて会うと思うから紹介する。彼女はクロム皇帝の妹のブリュンヒルデ・メア・ブロマイン皇女殿下だ。フリュは、俺と彼女との婚約を成立させるためにこの1年間裏方に徹して俺たちの仲を取り持っていたんだ」


 フリュとヒルデ大尉が俺の後ろに並んでアルゴに軽く会釈をする。だがアルゴはそれを信じられないという目で見ている。


「フリュ義姉様は、どうしてそんなことを・・・」


「アージェント王家がイプシロン王子を姉のコンスタンツェと結婚させてランドン皇家との間に血縁関係を作ったからだ。その上に妹のブリュンヒルデまでアージェント王国に取られれば、俺たちの国だけ距離が遠くなってしまう」


「兄上はアスター皇家との血縁があるし、別にいいのではないですか」


「今はそれでいいかもしれないが、100年後にどんな影響が起こっているかわからない。前世の俺たちがクリプトン家と血縁関係を結ばなかったために250年後にあのような悲劇がおこったのだからな」


「100年後、250年後・・・」


「フリュやアウレウス宰相は、そんな未来に発生しうるリスクを回避するために、貴族家の安全保障の基本である政略結婚を確実に進めていく作戦に出たんだ。もちろんアージェント王国との血縁も強固にしていく必要があるため、アルト王子の妹であるイリーネ王女との婚姻をアージェント顧問が秘密裏に進めている」


「イリーネ王女との婚姻・・・」


「お前もメルクリウス艦隊で一緒に戦ったから、よく知ってる仲だろ。彼女はType-メルクリウスが発現したアージェント王国の王女であり、彼女にメルクリウス家から婿を差し出すことで、両王家の血縁関係を強固にしようという考えだ」


「まさかこの僕が・・・」


「ああ。本当はアルゴが適任だと俺は思っていたんだが、マリアと婚約したお前にはビスマルク家復興計画に協力してもらわなくちゃならないから、アージェント顧問に分家の中から人選をしてもらっている。幸いメルクリウス家は分家と言えども本家を名乗れるほどみんな強い魔力を持っているしな」


「兄上はそこまで考えて、嫁を10人も持っていたのですね。ただのハーレム野郎と誤解していたようで、申し訳ありませんでした」


 アルゴはやはり素直な弟であり、自分に非があると理解すればちゃんと頭を下げて謝ってくれた。





「ところでアルゴ、マリアへのプロポーズを7家融和戦略会議の直前にやったのは、アウレウス宰相の入れ知恵だろ」


「どうしてそれを」


「お前と話していてカラクリに気が付いた。こういうことではないのか」


 そして俺はアルゴに自分の推理を聞かせてみせた。


 王族の政略結婚は普通、当事国同士によって合意されるものだが、7家融和戦略会議という魔族の血族に関する横の連携組織ができたために、王族の婚姻こそがこの会議の議題の中心となってしまった。


 それを利用して、アルゴに会議直前にマリアにプロポーズさせることで、忙しいローレシアを気遣ったマリアがこの会議で婚約を報告するよう仕向け、有耶無耶のうちにクロム皇帝や、アルト王子、エリザベート王女を含む全員の同意を取り付けてしまったのだ。


 もちろんこんなやり方をアルゴが考えられるはずもなく、この婚約をまとめたアウレウス宰相の入れ知恵であるのは明らかだった。


 実はここ数日宰相と議論を重ねた中で、魔力こそが国力の要でありSubject因子を持つ令嬢をなるべく王国に招き入れたいとの持論を宰相は持っていた。


 そしてローレシアは、自分の侍女軍団をアージェント王国やメルクリウス教王国の貴族と結婚させたいと俺に言っていたし、同じ話を当然アージェント王国や俺の国にも打診していたはず。


 だからアウレウス宰相は、アージェント王国よりも先にマリアを確保しようと積極的に動いたのだ。


 そう考えるとアルゴだけでなく、うちの分家やアウレウス公爵家、ジルバリンク公爵家の子息を魔法王国ソーサルーラに送り込んで来るかもしれないし、今回の会議でアウレウス宰相に出し抜かれたことに気が付いたアルト王子やエリザベート王女は、ビスマルクやネプチューンの血族確保のためにアージェント王国の王族を魔法王国ソーサルーラに送り込んでくることが予想される。


 結果的に、アルゴの後ろにいる侍女たちもそのうちの誰かと結ばれるかもしれないな。





「さてアルゴ、無闇に嫁を押し付けるのはもう止めるが、お前も競争を煽るような行為はもうやめろ」


「はい、兄上の指示に従います。では彼女たちをどうすればいいのでしょうか」


「もちろん気に入った子とは結婚した方がいいが、一人ひとりと誠実に向き合うことだ」


「わかりました兄上、そのようにいたします」


 いつものアルゴに戻ってくれ安心した俺だったが、


「では兄上も後ろにいる彼女たちと誠実に向き合われるのですね」


「え?」


 アルゴが見ていたのは、カトレアたちだった。


「カトレア、エミリー、カトリーヌの3人は戦闘空母アサート・メルクリウスのクルーとして今後も一緒に活動するつもりだし、うちの分家や高位貴族の令息との縁談のまとめるつもりだ。エルリンとキーファは、本当はお前に面倒を見てもらおうと思ってたんだが、それは止めることにするよ」


「その方がいいと思います。だってその二人は兄上のことを深く愛しており、絶対に僕とは結婚しません」


「・・・どうしてそんなことが分かるんだ?」


「クロリーネとの2年間の経験で僕は随分と人を見る目が養われました。そしてこれは余計なことかも知れませんが、その3人も兄上のことが好きです。誰かに押し付けようとする前に、兄上も3人と誠実に向かい合うべきだと思います」


「マジか・・・」


 アルゴに言われて後ろを振り返ると、顔を真っ赤にしたカトレアたち3人と、ニヤニヤ笑っているハーフエルフの2人が俺を見つめていた。


「ついでに言わせてもらえば、ナタリー・トリステン子爵のことはどうされるのですか。彼女もマリアと同じ極度の男性不信で兄上にしか心を許していません。だから兄上が娶ってあげなければ、将来に禍根を残すことになるかも知れませんよ」


「え、なんで?」


「お気づきだとは思いますが、メルクリウス=シリウス教王国の女領主は、ナタリーさんを除き全て兄上の嫁です」


「ウソ・・・」


 言われてみれば、マールとジューンの二人はナタリーさんと同格の女領主だし、セレーネとマイトネラはそれぞれ女王だ。ネオンは旧シリウス教国エリアの統治者であり、フリュにはプロメテウス領をフィリアには鬼人帝国を任せる予定だ。


 確かに女領主で嫁でないのはナタリーさんだけ。


「もし兄上がナタリーさんだけ娶らなければ、彼女に何らかの問題があると有りもしない悪評がたってしまい、ナタリーさんが一生結婚できずに後継者問題が勃発するでしょう。そしてトリステン領から余計な恨みを買うことになり、100年後や250年後には」


「ひーーっ!」

次回もお楽しみに

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― 新着の感想 ―
[一言] 作者様の意図と違ってたら申し訳ないです。 この話もって行き方が強引ではないかと思いました。 前にも似たような事書いてたらすみません。要はアゾートの気持ちはどこに行ったの?って感じですね。アゾ…
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