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Subjects Runes ~高速詠唱と現代知識で戦乱の貴族社会をのし上がる~  作者: くまひこ
第2部 最終章 7血族の復活

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第408話 7家融和戦略会議①

長くなったので2つに分けます。

 ボルグ准将の執務室を出た俺は、今度は7家融和戦略会議に出席するためローレシア離宮へと向かった。離宮に用意された客間に入ると、今日一緒に出席するメンバーが部屋で待っていてくれた。


 今日の会議は初めて7家全てが集まるフルメンバー開催となる訳だが、メルクリウス=シリウス教王国側の出席者は、俺と今回初参加のセレーネ、新たに正式メンバーとなったマールとマイトネラ、俺の秘書として出席が認められているフリュとジューンの6名だ。


 Type-ネプチューンの直系血族であるマイトネラがメンバーに加わるのは誰も異論がないところだが、Type-ビスマルクについては、南方未開エリアで直系血族を見つけられなかった場合のことを考えて、前回の会議(俺達は不在)で参加者が予め決まっていた。


 ネオンは俺の代わりにSIRIUSシステムを使って東方諸国のSubject因子調査を行っていたのだが、その結果ローレシアの侍女長であるマリア・ローゼスがType-ビスマルクの最高の適合値を持つことが、前回の会議で報告されていた。


 併せてマールが持つSubject因子が東方諸国や南方未開エリアに分布しているものとは異なることも報告され、二人合わせれば9割方のSubject因子が揃うため、この二人が会議の正式メンバーとして認められることとなったのだ。


 それをつい先ほどネオンから聞かされたマールが、ガチガチに緊張している。


「ねえアゾート、私なんかが7家融和戦略会議のメンバーになって本当にいいのかな・・・」


「俺もたった今ネオンの報告書を読んだばかりだが、この報告書には驚くべき事実が書かれている。マールは絶対に正式メンバーになるべきだ」


「それ、私には全く理解できなかったんだけど」


「これはネオンが行ったゲノム解析の分析結果だよ。どうやらマールは東方諸国や南方未開エリアには存在しないタイプの因子を持ったビスマルク家の生き残りらしい。つまりポアソン家で唯一の魔力保有者であるマールは、ビスマルクの直系血族を将来復活させるためには絶対必要な女の子なんだ」


「え?」


「もしマールが子孫を残さなければ、Type-ビスマルクの完全体は永遠に失われてしまう。だから代表の一人として堂々と出席すればいい」


「ええっ!? それって責任重大だよね・・・」


「俺も今日初めて知ったが、マールはマイトネラに匹敵するぐらい稀有な存在だったんだ。ていうかビスマルクの命運が首の皮一枚で繋がった奇跡の存在だよ」


「そんなにっ!」


「今後マールは俺の傍から離れないようにした方がいいし、離れる場合はエレナを護衛につけよう。そして子供をできるだけたくさん産んで、マリアやシルビアの子供たちと結婚させて、ビスマルクの純血種を誕生させなければならない」


「子供って! ・・・そっか。私、たくさん子供を産まないといけないんだ。が、頑張ろうねアゾート!」


「お、おう・・・」


 マールが恥ずかしそうに俺の右腕にしがみついてきたが、俺自身がマールと子供を作らなければならない事実に気がつくと、顔が熱く火照ってきた。





 前回資料であるネオンの報告書を精読するのに時間がかかったため、会議場である特別会議室に入った時には、他のメンバーは既に全員着席していた。


 ロの字の会議卓の正面には、会議の主催者であるローレシア・アスター女帝陛下と大聖女クレア・ハウスホーファの二人が並んで座っていて、ローレシアの隣にクロム・ソル・ブロマイン皇帝陛下が座っている。


 俺から見て会議卓の右側には、アージェント王国を代表してアルト・アージェント王子殿下とエリザベート・アージェント王女殿下が並んで座っている。


 会議卓の左側には、既に着席していたマリア・ローゼス子爵を挟む形で、マイトネラ・ネプチューン女王陛下とマール・ポアソン子爵が腰を下ろし、ローレシアたちと向かい合う側にフリュ、俺、セレーネ、ジューンの順に腰を下ろしていく。


 そして会議卓に全員が揃ったことを確認したローレシアが(またしてもナツではなくローレシアだ)、会議の開会を宣言した。

挿絵(By みてみん)




 今日の会議は俺の報告が主な議題であり、随時質疑応答が交わされる形で進められた。


 俺はこの1年間のSubject因子分布調査活動を時系列に沿って報告し、その過程で発見された真実を詳細に説明していく。


 混血ゴブリンの発見から始まった俺の報告は、最初のうちこそ闊達な質疑応答が行われたが、報告も中盤から終わりに近づくにつれ、会議場は水を打ったように静まり返っていく。


 あまりに常識を超えた内容に、みんな必死に脳細胞に鞭を打っていたのだろうが、「デタラメだ」と頭から否定する者が一人も居なかったのは、参加者が全員次代を担う若者ばかりだからなのだろう。


「俺からの報告は以上ですが、最後に彼女を紹介させてください。彼女こそが妖精族の魔力維持にその生涯をささげたウンディーネ王国女王・マイトネラです。世界にたった2名しか現存しないType-ネプチューンの直系血族であり、この7家融和戦略会議では、彼女の生命の保護と子孫の繁栄を優先課題として進めるべきであることを付け加えて俺からの報告を終わります。ご清聴ありがとうございました」




 静まり帰っていた会場からは万雷の拍手が沸き起こり、司会のローレシアが質疑応答の口火を切った。


「たった1年でこれほどの成果を出していただいて、魔王メルクリウスには本当に頭の下がる思いです」


「自分でも出来すぎだとは思いますが、成果が出せて本当に良かったです」


「工作員から魔王の活躍の報告を受ける度に、ナツがとてもうらやましがって、自分も南方未開エリアに行きたいと毎日のように駄々をこねて大変でした。実はナツは今も悔しがっているのですよ」


「俺としてはナツも一緒に来てほしかったですね。特に最後に戦った簒奪帝シルスはマジで強かった。ナツが居ればあんなに苦戦しなかったと思いますよ。そんなことよりもナツはどうしてこの会議に参加をしないのですか。本当の主催者は彼でしょ」


「コホン! ・・・その理由は会議が終わってから直接お話いたします。さて他に質問のある方」





 次に質問したのはクロム皇帝だ。


「魔王メルクリウスよ。そなたの報告によれば、この会議室に居る全員が魔族であり、シリウス教会に踊らされてアージェント王国と長年続けていた聖戦など、とんだ茶番劇だった訳だ。ククク、ハーッハッハ!」


「ええ、クロム皇帝陛下のおっしゃるとおり、無駄な血がたくさん流れてしまいました。これだから宗教が大嫌いなんですよ、俺は」


「「「コホン!」」」


 俺の宗教嫌い発言を打ち消すように、ネオンとローレシア、そしてフリュまでが大きな咳払いをしたが、ジューンだけはこの発言すらも受け入れて、俺に微笑みかけている。


 ジューンのやつ、シリウス神ではなく俺を信仰しているんじゃないだろうな。


「まあよい。つまり我が皇室は魔族であり、帝国貴族は全て妖精族で、人族は平民だけということか」


「簡単に言えばその通りですが、身分制度と人種はその定義が微妙にずれていて、境界はかなり複雑です」


 俺はマールとマリアの方を指して説明する。


「彼女たちはそれぞれ、0.4と0.5のSubject因子適性値を持ち、魔族よりも妖精族に近い存在です。ですが0.1以上の適性値を持つ魔力保有者は「魔力テロメア」が十分に長いため「魔族」として定義するのが適切だと考えます。それから平民の中にも魔族や妖精族は含まれており、彼らは後天的な原因で魔法が使えません。これは教育で救い上げることができるので、世界の魔力を維持するために教育制度改革が必要です」


 俺はヒルデ大尉や、南方未開エリアで頑張っている工作員たちのことを思いながら、彼ら以外にもたくさんの魔力保有者が平民の中にいる可能性を訴え、積極的に引き上げていく仕組みを説明した。


 その意図が伝わったのかクロム皇帝は、


「そなたの言は理解した。我が帝国においてその範を示し魔法教育を充実させることとしよう。それともう一つ質問がある。さきほどウンディーネ王家とシルフィード王家の鉄の盟約の説明の中で、魔族は魔族同士でなければ血を残せないという話があったが、あれはどういうことなのだ」


「残せないというよりは、子供世代に渡されるSubject因子が減少して血が薄まるということです。魔族の女性とそれ以外の男性の場合は75%、魔族の男性とそれ以外の女性の場合は25%の因子しか次世代に遺伝しません」


「つまり魔族の血を残すためには、魔族同士が結婚した方がいいということだな。そして今の計算だと魔族の純血種同士なら100%か。余の質問は以上だ」





 3番目に質問したのはエリザベート王女だった。


「フリュオリーネ、あなたがハーフエルフだった話には本当に笑わせていただきましたわ。まさかアウレウス公爵家がそのような家系だったとはね、クスクス」


 扇で口元は隠してはいるが、心底バカにした表情でフリュを蔑むエリザベート。だがフリュも同じような態度でエリザベートに答える。


「あーら、エリザベート様。500年前のわたくしは確かにハーフエルフでしたが、今はその血もかなり薄まっております。それにアージェント王家全体が婚姻を繰り返しておりますので、今のわたくしをハーフエルフと呼ぶのなら、あなたもハーフエルフなのです。ウフフフフ」


 氷の女王の異名にふさわしい冷たい眼差しでエリザベートを睨み付けるフリュ。


「ギリッ・・・全くあなたという女は、いつも減らず口ばかりで本当に忌々しい」


「それはわたくしのセリフです。イチイチわたくしに構わないでください」


「「フンッ!」」




 会えばすぐにケンカを始める二人を止めるために、アルト王子が俺に質問してきた。この人もなかなかの苦労人だな。


「これからの課題がネプチューン家の保護とビスマルク家の再興だということだが、具体的にはどのように進めるつもりなんだ」


「一つはエルフの森に建設した混血ゴブリンの居住区での実験です。あそこには繁殖力が強くSubject因子を含む様々な因子を持つキメラ生命体が居ますので、うまく交配させればType-ネプチューンやType-ビスマルクを濃縮した亜人種が誕生します。今日は連れて来ませんでしたが、2人のハーフエルフの女子がその適性を示しています」


「それはすごい・・・本当にキミはこの手の研究を考えるのが得意なんだな。それでそのハーフエルフの女の子たちはどうするつもりなんだ」


「弟のアルゴに嫁がせます」


「そ、そうか・・・彼はルカたち三人娘も娶らなければならないし大変だな。混血ゴブリンのことは分かったが、他には何をやるんだ」


「もう一つは王族の婚姻戦略です。魔族は魔族と繁殖させた方が効率よく子孫を増やせるので、Subject因子のパターンを解析しながら交配の相手を探します」


「交配・・・」


「例えば一緒に調査に行ったカトリーヌ・ド・ブリエというレッサニア王国の公爵令嬢はType-ネプチューンの適性値が0.3あります。この値を高めるためには同じTypeの貴族と交配させればいいのですが、Type-ネプチューンの直系男子は現存しませんので、別の直系男子と交配させて繁殖を繰り返します。例えば」


 そこでフリュが俺の発言を止め、耳元で囁く。


「あなた、ご説明が家畜の繁殖みたいになってます。ここにいる王族の皆様に失礼ですので、わたくしから説明した方がよろしいかと存じますが・・・」


「そうか? 別に普通だと思うけど、そんなに気になるのならフリュに任せるよ」


「アルト様、つまりはこういうことです。ここにいる第2側妃のマールさんは適性値が0.4ですが、0.9の適性値を持つ夫のアゾート様との間にできた子供は適性値が0.6に上昇します。つまり魔族の血を引く貴族令嬢を探しだして王族の嫁に積極的に迎え入れることで、魔族の血を濃くしていく計画です」


「なるほど、フリュオリーネの説明の方が僕には分かりやすい。ネオン君の報告ではマール・ポアソン子爵はビスマルク家の血を引いた希少種だということだったので、アゾートが頑張って子供をたくさん作るのがビスマルク家再興計画の要ということだな」


「左様でございます」


 ・・・確かにフリュとアルト王子の言う通りなのだが、人から繁殖馬みたいに扱われるのはやはり嬉しくはないな。


 そんなアルト王子が出席者に向けて発言する。


「それではここで決議を諮りたいのですが、ビスマルク再興計画の責任者は、その鍵を握るマール・ポアソン子爵の婚約者であるアゾートが適任と考えます。皆様いかがでしょうか」


「え! そんなことを今ここで決めるんですか?」


「そうだ。ビスマルク家再興計画は7家融和戦略の重要課題だし、責任体制は明確にしておいた方がいい」


「はあ・・・」


 そしてアルト王子の提案に異議がでることはなく、生暖かい拍手とともに、俺が責任者となることが決まった。


「ではアゾート、キミはマール君との間に最低10人は子供を作るように」


「10人って、なんでこの会議で子供の人数まで決められなくちゃいけないんですかっ! それに俺には8人も嫁がいるのに、そんなことをしていたらとんでもないことになってしまう!」


「だがマール君が産む子供はビスマルク家の希少種なんだし、東方諸国の王族に出荷・・・もとい嫁がせたり、君が育てるキメラ生命体と交配・・・いや繁殖だったかな、とにかく数はたくさん必要じゃないか」


「人の子供を家畜みたいに言うな!」


「ていうか、キミの使う用語が僕に感染してしまったじゃかいか。一体どうしてくれるんだよっ! それに普通の王族には不可能だが、キミの財力なら子供なんかいくらでも養えるだろ」


「そういう問題じゃねえ!」




 俺の悲痛な叫びが完全にスルーされると、フリュがさっさと次の話題に進めてしまった。


「ビスマルク家再興計画の方はマールさんが頑張るだけなのでそれほど問題はございませんが、問題なのはネプチューン家の保護計画です」


 そして困った表情でフリュは現状を報告した。

次回はマイトネラの問題が議題に上がります。


お楽しみに

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