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Subjects Runes ~高速詠唱と現代知識で戦乱の貴族社会をのし上がる~  作者: くまひこ
第5章 旋風のソルレート侵攻作戦

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第124話 セレーネとの夜(前編)

夕方のいつもの時間帯には、後編も書き上げる予定です。

 セレーネとの旅の1日目は、パッカール領で指揮をとるクロリーネのもとへお稲荷姉妹を送り届けた後、街で旅支度を整えるところから始まった。


 旅支度を終えた俺たちがソルレートとの領界に向かうと、そこでは両軍がぶつかり合っていた。普段なら領民軍を突破するのに苦労するところだが、たまたまソルレート領民軍の一部がトリステン領方面へ転進を始めたため、その一時の混乱を掻い潜って、俺たち二人は無事ソルレート領へと潜入したのだった。


 そうして俺はセレーネと手を取り合って旅路を歩き始めたわけだが、この日はあいにくの雨。俺はセレーネを連れて乗合馬車を拾い、なんとか最初の町に到着した。





 急ぐ旅でもないしソルレート領の現状をゆっくりと視察したかった俺は、本日の移動を早々に諦めてこの街で馬車を降り、町の宿屋に入って行った。


「いらっしゃい。お二人お泊りで?」


 受付に座っていたのは、40代半ばぐらいのおばさんだった。


「一晩お願いしたいんだけど、いくら?」


「お二人で20ゴールドです」


 このレベルの宿屋にしては少し高いなと思いつつ、俺は金を払って部屋を借りた。部屋に入って荷物を下ろし、俺たちはベッドの上に腰かけた。


「雨であまり町を散策できなかったけど、ひどく寂れた所だよな」


「そうね。私たちはパッカール領の西端の町から出発したけど、ここと比べてみると全然違うわね。この町は貧しくて疲れ果てた印象を受けるわ」


「まだソルレート領に入ってすぐなので、もっとよく見てから判断しないといけないけれど、俺たちが考えているよりもずっとひどい状態なのかもしれないな、この領地は」


 それから俺たちは、特にすることもなくベッドの上に寝っ転がって、明日の予定を話し合っていた。地図を見ながら、領都ソルレートまでの道筋を色々と考えていたのだが、


「セレーネ」


「分かってるわ」


 俺たちは荷物を手元に手繰りよせると、静かに立ち上がって魔法を唱えた。





 突然、部屋の扉が開き、ガラの悪い男たちが部屋になだれ込んできた。手にナイフを持ったガタイの大きな男が5人だ。


「そこの兄ちゃん。命が助かりたければ、その荷物を置いて一人でさっさとこの宿を出ていくんだ」


「そしてそこのかわいい姉ちゃんはここに残れ。俺たちが存分に楽しんでから、姉ちゃんには素敵なお仕事を世話してやるよ」


 男たちが舌をなめ回しながら、俺たちに近付いてきた。俺はそんな男の手首をつかみ、


「お前たちは運がなかったな。まさか、俺たちを襲うなんてな。俺は悪党には容赦しないんだよ」


「ぷーっ、くくく。なんだコイツ、ガキが粋がっちゃってるねぇ・・・運が無いのはお前の方だよ。死にたくなければ、とっととおうちに帰ってママのおっぱいでもしゃぶっておねんねしてな!」


 そういって男は俺の顔面を力いっぱい拳で殴り付けた。


 ゴギャッ!   アイテッ!


 しかし、叫び声をあげたのは男の方だった。


「イテテテ・・・コイツの顔面、鋼鉄のように硬いぞ。何なんだよ一体」


 俺は魔力で作った物理バリアーを展開していたので、ならず者のパンチなどでダメージを受けることはない。反撃として俺も拳で男の腹部を全力で殴り付け、それと同時に拳の先に展開したバリアーを飛ばした。


 ドゴーーーーツ!


 男は後ろ向きに吹き飛んで壁にめり込んだ後、床にうずくまって悶絶した。口からは吐しゃ物がまき散らされて、エビのようにもだえ苦しんでいる。


「さあ、次にこの男と同じ目に会いたいのはどのバカだ? 誰でもいいから早く俺にかかってこいよ」


 右手を前に差し出し指をクイクイ動かしながら、俺は煽るように男たちを見て笑った。




 男たちは地面で苦しんでいる仲間を見て僅かに怯みながらも、ならず者稼業として学生に舐められたまま引き下がるという選択肢はなく、4人まとめて俺に突撃してきた。


「うるぁぁあ、いてこますぞ、ごるあらああ!」


 一斉にとびかかってきた男どもを見て、俺は昔見た名作ボクシングアニメのあるシーンを思い出していた。


 そのアニメでは頭部へのパンチに比べて、ボディーブローは地獄の苦しみと言われていたっけ。ならば、このならず者への攻撃は一択、ボディーブローだ。

 えぐりこむように打つべし、打つべし。




 俺は男たちの腹部に全力のボディーブローをお見舞いし、死なないギリギリの強さでバリアー飛ばしを放った。


 全部で5人の男たちが部屋の床で血反吐を吐いて苦しんでいる頃には、宿屋の壁も崩れて落ちて、廊下と部屋がひとつながりになっていた


「セレン、この宿はたぶん悪党とグルになって、金を持ってそうな客を襲わせているんだ。俺がちゃんと値切らずに20ゴールドを出してしまったのが悪かったんだけど、もう危ないからここを出た方がいいよ」


「・・・そうね。確かにここは危険ね。でもこの雨だし、今から他の宿を探すのも大変でしょう。私、雨の中で野宿するのなんかイヤだからね」


「・・・わかったよセレーネ。今日はこの宿にこのまま泊まることにしよう。ただしこの部屋はこいつらのゲロで汚れてしまったので、部屋を変えてもらえるよう、受付のおばさんにお願いしてみるよ。今度は面倒くさがらずに、しっかり値段交渉してくるから」


「うん、ありがとうアゾ・・・ニトロ」





 俺は、ゲロまみれの男を適当に一人引きずって、受付のおばさんのところにお願いしに行った。


「すみません。部屋にいきなりこんな男たちが5人侵入してきたので撃退したんですけど、部屋がこの男たちの血とゲロで汚れてしまい、壁も崩れて廊下とつながってしまいました。危ないので別の部屋に変えてもらえませんか」


 おばさんは、男が白目をむいて口から泡を吹いているのを見ると、真っ青になりながら、


「も、も、もちろん部屋は交換させていただきます。ワンランク上のお部屋がございますので、そちらへお泊りください」


「ありがとう。もちろん差額料金なんか請求したりしないよね」


「もちろんですよ。どうぞ先ほどのお代でお泊りください」


「ありがとう。それからさっき部屋の壁を壊してしまったけど、もちろん修理代はいらないよね」


「も、も、もちろんでございます。当方で全て修理させていただきます」


「それはよかった。だったら修理代はこの男たちから請求した方がいいよ。もしよければ俺が回収してきてやろうか。おばさん、こいつらのアジトを知ってるんでしょ」


「し、し、し、し、知りません。私どもとは一切関係ありませんから」


「そうか。なら今夜はもうこいつらの仲間が襲ってきたりしないよな。もし、襲ってきたりしたら、その時は分かっているんだろうな!」


 俺は大声を出して凄みながら、男を入り口の扉に向けて、おもいっきりぶん投げて外に放り出した。入り口の扉がバラバラに粉砕して、男は外の水溜まりの上を転がっていき、扉がなくなった宿の受付には外の雨が吹き込んできた。


「悪いな、入り口の扉まで壊してしまって。そうだこの扉の修理費もこいつらの組織に請求しておくといいよ。それから俺たちの部屋にあと4人男が転がっているから、早く運び出して治療した方がいいと思うぞ」


「は、は、は、はいわかりました!」


 俺はおばさんから別のカギを受け取り、セレーネとともに新しい部屋へ移動した。さっきよりも少しマシな部屋で、変な男たちが襲ってくることもなかった。



 その夜は、念のために俺とセレーネが交互に見張りをして夜が明けた。軍用魔術具でバリアーを張る方法もあったのだが、せっかく秘密潜入しているのに貴族であることが知られるような行為は避けた方がいいため、あえて使わなかったのだ。


 朝食にも毒が入っている危険性があったので、宿の食事は一切口にせず、早々にチェックアウトした。


 夜中に警戒していたため全く疲れが取れなかったと窓口で愚痴をこぼすと、おばさんは20ゴールドを返してくれた。


 散々な宿だったが、終わってみれば無料で一晩過ごせたことになるので、結果オーライだったと思う。


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