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第52話:歓迎パーティー(3)

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 カミルと別れて魔王とパーティー会場に向かったけど、まだパーティーは開始されていなかった。というわけで会場の前で足止めされていた。


「どうも準備が遅れているようだな」

「そうみたいね。でもパーティーの準備なんて手慣れたものなんじゃないの? なんで遅れてるんだろう」


「パーティーではその季節の料理を用意するのが常だからな。いつもじゃない時期のパーティーの準備に手間取っているのかもな」

「なるほど。そういうこともあるのね」


 そんなものかと思っていると、不意にあることに気づいた。


「そういえば、さっきのイベントのコテンパンパートって起こらないのかな? いつもだったらすぐに起こるよね」

「そういえばそうだな……」


 魔王は考え込むように腕を組みながら右手を顎に当てた。


「あの様子だとクララのパーティーパートナーを選択するイベントのようだったな。そしてクバードがパートナーと決まった。だとするとコテンパンのパートナーはイベントをするまでもなくカミルで決定になるからじゃないか?」

「でもカミルは私をパートナーに誘ってきたしコテンパンとパートナーにはならないんじゃないかしら?」


「だとすると今回のイベントはクララだけのイベントだった可能性もあるな」

「でも今まではずっとクララパートとコテンパンパートの両方あったよね?」


「今までは攻略対象とヒロインの初遭遇イベントだっただろ? それはさすがに両方でやるしかなかったんじゃないかな」

「あ、それもそうね」


 しかしそうなると……。と思っていると魔王も同じことを考えたようだ。


「コテンパンとさっきの2人以外の誰かとのイベントがあるな」

「ね」


 そうしていると目の前を黒マメシバことサザーン王国の第四王子ユスフ・ラドワーン君がトテトテと歩いてきた。


 彼も友好使節なんだから当然パーティーに参加するのだろう。白を基調に銀糸をあしらった正装で軍服に近い印象だけど、とはいえ元が元だけに精悍さより可愛さが強調される。


 キャ~~! と思っていると、その黒マメシバがコテンッとこけて私の方に倒れてきた。


 黒マメシバが倒れないように思わず支えた。


「ちょちょっと。大丈夫?」

「あ、え、え~~と。すすみません」


 黒マメシバはそう言うとゴロンと地面に横たわる。


「あれ? どうしたの?」

 と助け起こそうとすると、視線の隅に私と同じように彼を助け起こそうとする人影を感じた。


 え? と思うとその人物はコテンパンだった。


 黒マメシバを助けようと手を伸ばす私と、私の存在に手を出しかねるコテンパン。黒マメシバも私の手を取って良いのか戸惑っているようだ。


 すると魔王が小声で私に話しかけてきた。


「なるほど。これはコテンパンのパーティーパートナー選択イベントか」


 あ、なるほど。それじゃあ、

「ど、どうぞ」

 と私はコテンパンに黒マメシバを助けるのを譲った。


「あ、はい。すみません」


 コテンパンは私に頭を下げた後、

「君。大丈夫?」

 と黒マメシバことユスフに手を差し出した。


「あ、ありがとうございます」


 そう言ってユスフはコテンパンの手を取って助け起こされた。


「貴方! また私にぶつかってくるなんて、やっぱり量産されているの!? とお姉さまがおっしゃっています!」

 と突然始まる久しぶりのこの感じ。さっきまで居なかったヴェラとカロリーネがいつの間にか私の左右を固めていた。


「代わる代わるぶつかってくるけど、ローテーションなの!? とお姉さまがおっしゃっています!」

 うん。多分その通り。


 ヴェラとカロリーナの連携にコテンパンが反論する。なぜか私に。


「アーレンベルク公爵令嬢。この子はちょっとおっちょこちょいなだけなのです!」


 それフォローか?


 ちなみにコテンパンの中で普段は私のことをお姉さまと呼んで、イベントの時にはアーレンベルク公爵令嬢と呼ぶのは他者が居る時には私的な呼び方はするべきではない。ということで辻褄があっているそうだ。


 するとここでデニスが登場。両国の弟王子同士のイベントなんだね。


「どうしたんだい?」

「あデニス殿下。この子がアーレンベルク公爵令嬢にぶつかってしまって……」


「しかも2度目なのです! もしかしてクララの親類ではないでしょうね! とお姉さまがおっしゃっています!」

 とヴェラ。


「なるほど。もしそうだとすると、クララ嬢はサザーン王国の王族ということになりますね」


 いやそんなわけないだろ。何言ってんだお前。


「え? 彼女は僕の親戚なんですか!?」


 も~~。まったく黒マメシバは素直だな。


「何を言ってるんですか。そんなことあるわけないじゃないですか」


 コテンパンが冷静に突っ込む。


「あ、ああ確かにそうだな」

「そうなんですね。びっくりしました」


「だったらもう私にぶつからないで欲しいですわ。今度ぶつかって来たら素性調査をしますからね! とお姉さまがおっしゃっています」

 とカロリーネ。ここで私の出番は終了みたいね。

 カミルの時みたいに変なことが起こらなくて助かったわ。


 ヴェラとカロリーネに両脇から抱えられて引きずられるように一旦退場させられたんだけど、解放されてから急いで戻ってくるとまだイベントは続いていた。


「バルリング伯爵令嬢。ありがとうございます」

 と黒マメシバが改めてコテンパンに礼を言っていた。


「貴方はユスフ君だったわよね。本当に気を付けないと駄目よ」


 お。なんだかコテンパンがお姉さんだな。


「はい。バルリング伯爵令嬢には以前にも助けて頂きましたね」

「ふふ。そうだったかしら」


 コテンパンが優し気な笑みを浮かべる。

 ユスフもコテンパンの笑顔に気を許したのか笑みが浮かんでいる。


「あ、あの。もし良かったらなのですけど……」

「ん? 何かしら?」


 コテンパンが首を傾げて微笑んだ。


 なんだか良い雰囲気なんだけどそこに割り込む人物。


「ユスフ殿下。お怪我がないようで何よりです」


「あ、そう言えば貴方、殿下でしたのね。す、すみません。私ったら」

「いえ。気にしないでください。全然気にしていませんから」


 慌てるコテンパンにユスフが微笑む。


「はは。2年連続学年主席のバルリング伯爵令嬢も意外とうっかりさんなんだね」

「そんな……。デニス殿下。恥ずかしいですわ」


「でも2年連続学年主席のバルリング伯爵令嬢にもこんなに可愛らしいところがあるなんて。新鮮だね」

「まあ」

 とコテンパンは両手で顔を包むようにした。


 こういうと可愛らしい仕草のようだけど、コテンパンは心底嫌そうな表情で可愛らしいとはほど遠い。


「そうだ。今日のパーティーには君が僕のパートナーになってくれないかな。僕も応対役として忙しくてパートナーを探す暇がなかったんだよ」

「まあ。それは大変でしたわね」


 コテンパンはそう言いながらも嫌そうな顔だ。


「あれ? 確かコテンパンってデニスのことを好きなんじゃなかったっけ?」

 私は魔王に小声で話しかけた。


「それは前回の時に、お前がクララに攻略対象たちの悪口を吹き込んでたのを彼女も聞いていたからだろ。お前も彼女が男嫌いになってるみたいなこと言ってなかったか?」

「そういえば、そんなこともあったわね」


 まあ仕方がないわね。


「その割にはユスフは平気みたいだがな」

「あの子は……小動物みたいだからじゃない?」


 まあ私もあの子のことは好きだけど、恋愛対象かと言えば違うしね。


「そんなこともあるんだな」

 と魔王と私が話している間にもイベントは進んでいく。


 コテンパンはデニスに誘われて嫌そうな顔のまま肘でユスフの肘をこつんと小突く。

 それを合図のようにユスフが慌てて口を開く。


 イベントなんだったらほっておいてもシナリオ通りに進むでしょうに、それほどとっとと終わらせたいのね。


「あ、あの。僕のパート「はい。喜んで!」い」


 おい。まだユスフが台詞を言い終わってないぞ。

 っていうか。どこの居酒屋の掛け声だよ。本当にこんな台詞なの? と思っていると

「ユスフ殿下のパートナーを務めさせて頂きますわ」

 と台詞が続いた。


「はは。なんだ君たちはいつの間にかそんなに仲良くなっていたのかい」

 と余裕の台詞のデニスだけど表情が引きつっている。


「それではユスフ殿下。もうそろそろパーティーが始まりますわ」

「は、はい。そうですね」


 そうしてコテンパンがユスフの肘に自分の手を添えると引きずるように足早に会場に向かった。


「パーティーを楽しんでくるといいよ」


 デニスがこの台詞を言い終える頃には、2人はすでにデニスの声が聞こえないほど遠く離れていた。

 まるでデニスが独り言を言っているかのようだ。


「いや~~。確かにデニスの悪口を吹き込んだのは私だけど、ここまでくるとちょっと可哀そうになってくるわね」

「だが確かにあの時はデニスとクララが仲良くなったら、お前の命が危なかったんだから仕方がなかったとは思うけどな」


「でもこのままいくとコテンパンとユスフの仲が良くなっちゃいそうよね。確か今回はサザーン王国側の攻略対象とヒロインが結ばれる方が不味いんじゃないかって話だったし、これは問題かも」

「それもそうだな。クララもクバードとパートナーになったし対策を考える必要があるな」


 そうしている間にパーティー会場の準備が整ったようなので、私と魔王はパーティー会場に向かった。

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