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第49話:お前もか!!

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「どのような理由があろうとも暴力は行けませんわ」

「勿論、私も暴力が良いとは思いませんわ。ですけれども、それでもという時があるのです」


 先日のヤンキー先生ことイルハームがカミルを殴ったことについて否定的なカロリーネと肯定的なヴェラとが議論していた。


「だいたいカミル殿下はこの国の第一王子なのですよ? それを殴るなんてどうかしています」

「大切な家族の為ならば、第一王子ですら恐れない。それが素晴らしいとは思わないの?」


 どうも価値観が違い過ぎて議論がかみ合ってないわね。


 生真面目なヴェラの方が暴力に否定的かと思ってたけど、おっとりした感じのカロリーネの方が暴力は駄目だったか。


 そして優等生のコテンパンも

「どちらが正しいかは暴力ではなく言葉で決めるべきですわ」

 とカロリーネ派だ。いやあんた前作の時は模擬戦でクララに勝とうとしてただろ。負け続けて主義を変えたのか。


 そしてクララは

「私は、あの方はただものではないと以前から分かっておりましたわ」

 と何が何だか分からない。


 だめだ。こいつははっちゃけたままだ。


「そういえばお姉さまはイルハーム先生とお知り合いのようにも見えましたが……」


 ヴェラがそう言って私に視線を向けてきた。


 そういえば確かにあの時はヤンキーのこと貴方とか呼んだりして親しい感じもあったかも。


 う~~ん。なんて説明しようかな。こんなことならヤンキーや魔王と打ち合わせしとくんだった。

 適当な嘘をついてばれたら面倒なことになりそうよね。


「お父様のことはサザーン王国でも有名らしくて、イルハーム先生が私に話しかけてきたことがあったのですわ」


 これくらいの関係だったら、後から多少辻褄があわなくても誰も気にしないわよね。


「でもそれにしては親しげな様子でしたけれども……」


 なんだかヴェラが控えめな感じだけど食い下がってくるわね。ヤンキーのことを気に行ってそうだし、もしかして私とヤンキーが付き合ってるとか思ってるんじゃないでしょうね?


「まさか全然親しくなんてありませんわ」

 と否定したけど、もしヴェラがヤンキーと付き合うようなことになんてことになったらヴェラが不幸になるわよね。

 とはいえあまり悪口を言うのも問題よね。現実的な話をしてあげるか。


「それに親しくなったとしてもイルハーム先生は友好使節の臨時教諭なんだから来年にはサザーン王国に帰ってしまわれるのではないかしら?」

「そ、それもそうですわね……」


「しかもなのですけど、サザーン王国とは戦争になるかも知れないのです。もしそうなればイルハーム先生とは二度と会うこともないでしょうね……」


「それでは、もしこの国にイルハーム先生の妹さんがいらっしゃったならもう二度と見つけ出すことが出来なくなってしまいますのね。なんて可哀そうなイルハーム先生」

「確かにそれはそうだけど……」


「ああ、私に出来ることがあれば……。そうですわ。もしサザーン王国と戦争になったとしても私がイルハーム先生の妹さんをきっと見つけ出して差し上げますわ」


 しまった。なんだかスイッチが入っちゃったかも。ヴェラが意外にもこんなにロマンチストだとは思わなかった。これは逆効果だったか。


 これは話せば話すほど泥沼にはまるパターンかも。ちょっと頭が冷えるまで時間を置いた方が良いわね。


「分かりましたわ。ですけどそもそもカミル殿下がイルハーム先生に話しかけたのは、イルハーム先生にその気がなかったとはいえ女生徒を侍らせているように見えているのが問題になったようなのです。ですからヴェラも、しばらくはイルハーム先生に近づかないようにした方が良いわね」

「そ、そんな。私は何も邪な気持ちでイルハーム先生に近づこうなんて」


「それは分かっていますけど、他の人はそうは見てくれないのです。そうなればイルハーム先生のお立場も悪くなってしまうのですよ。そんなことは貴女も望んではおりませんわよね?」

「それはそうですけれども……分かりました……」


 よっしゃ! これでとりあえず大丈夫。


 ヴェラとはアーレンベルク公爵令嬢としての記憶では日本でいうところの小学校の頃からの付き合い。その時の記憶は昔見た映画の内容を思い出す見たいな感じなんだけど、それでも良い友人だったのは分かっている。


 融通が利かなくて勝気なところもあるけどまっすぐな性格のヴェラには幸せになってほしい。ヤンキーも性格が悪いとまでは言わないけど、ヴェラとは性格が合わないんじゃないかな。なんか同じヤンキーっぽい女の子とがお似合いみたいな。


 そういえば私たちのグループでヤンキーと言えばクララか。


 そのクララは

「第一王子を殴るなんてただ者ではないですわ!」

 とヤンキーを気に入っているようだ。


 ……不味い! こんなんでも今回もヒロインなんだった。そしてヤンキーも、ああ見えて攻略対象の1人。攻略対象とヒロインが結ばれれば、その攻略対象は私を殺すはず。


 ヤンキーが私を殺そうと思うとは考えられないけど、そこはゲームの強制力が働いて寄って集って武器を持たされて無理やり私を殺すに違いない。


 どうしたもんだろうと、その後屋敷に戻ると魔王を呼び出し相談した。


「なんだよ。急に呼び出して」

「いやいや。そういうの良いから。どうせいつもの小さい魔族とかいうのを使って分かってるんでしょ?」


 ストーカーをしているのを指摘された魔王が小さく舌打ちした。


「お前の友達のヴェラがヤンキーに好意を持ってるってことだろ。まあ本人が良いって言うんなら良いんじゃないか」

「え~~。だってヤンキーよ。私がヴェラのお父さんだったら、あんなのがお嬢さんを下さいって言って来たら門前払いよ」


「お父さん視点になる意味が分からんが、そんなの本人たちの問題だろ」

「しかもクララもヤンキーのことを気に入っているみたいなのよ。クララはヒロインなんだから、それは問題あるでしょ?」


「だったらそれこそヴェラとヤンキーがくっついた方がクララとの線が無くなって都合が良くないか?」

「ヴェラとヤンキーが親しくなったらクララとも接点が増えれば好感度が上がっちゃうでしょ そうなったらクララとのイベントが進んじゃうんじゃない?」


「まあ確かに、それはあるか……」


 そう言って魔王が腕を組んで考え込むような感じだ。


「それにまだヤンキーの方はヴェラのことを好きでもなんでもないんだから、2人の間を引き裂くってわけじゃないんだし」

「それもそうか」


「とりあえずヴェラとヤンキーが接近しないようにしたいんだけど」

「まあヤンキーが女生徒たちを侍らすのを止めさせるのが先だな。ヴェラだってその女生徒たちに紛れてヤンキーに接近することは出来なくなるだろうし、結果的にそれでヴェラとヤンキーが親しくなるのも防げるんじゃないか」


「そうね。じゃあ明日ヤンキーに話をつけるわね」

「一応俺も一緒に行こう。大丈夫とは思うが激高しやすい奴だからな」


 というわけで翌日、魔王と一緒にヤンキーに会いに行った。


「なんだか問題になってるから女生徒を侍らすのを止めて欲しいのよ」

「それって、この前あの野郎が言ってたやつかよ」


 あの野郎ってカミルのことよね。妹さんとのことで揉めたのを思い出したのかヤンキーは不機嫌そうだ。


「まあそれはおいておいて、実際、問題になってるのよ。貴方だって問題を起こしたいわけじゃないでしょ?」

「そりゃまあそうだがよ。せっかくモテてるってのに……」


 モテると思って調子に乗っているヤンキーはモテるのに未練があるようだ。


「別に誰とも付き合うなと言ってるわけじゃない。派手に侍らすようなことはするなってことだ。お前だって付き合うなら1人にするって言ってただろ?」

「ちっ。分かったよ。もう少しモテ気分を味わっていたかったがしょうがねえな。まあ気になる子も居るしな」


「そうなんだ。良かったじゃない」

「でも肝心のその子には嫌われてるっぽいんだよ」


「へ~~。何か言われたりしたの?」

「いやなんか分からないけど、俺が女生徒たちと一緒に居ると凄い目で睨んでくるんだよ」


「ちょっと睨んでくる子が気になるってあんたどんな趣味をしてるのよ。マゾなの?」

「ちげえよ。気が強そうな女が好みなんだよ」


 睨んでくる女が好みってまったく本当にヤンキーね。まあ先生を睨みつけるような子は確かにヤンキーにはお似合いかもね。


「でもせっかくモテてるのに自分を好きじゃなさそうな子が良いって貴方も変な趣味してるわね」

「まあそうなんだが……。モテてるのはそりゃ気分は良いんだがよ。俺に寄って来る子って、結局本当の俺じゃなくてゲームのキャラの俺が好きってことだろ? なんだかそれって違うんじゃないかって思えてきてな」


 あら。モテてて調子に乗ってるのかと考えてたけど、思ったよりちゃんとしてるのかな?


「じゃあ自分に寄って来る子じゃなくて、あえて自分を嫌ってそうな子が気になるとか?」

「いやそういうつもりもないんだが、まあ寄ってくる子から選ぶんじゃなくてそれは関係なしに自分の好みの子を狙うって感じだな」


「それでその子の名前は分かってるの?」

「ああお前ともよく一緒に居たな。確かヴェラとかいう子だ」


 おい!!

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