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第48話:ヤンキーは所詮ヤンキーだね

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 とりあえずヤンキーの妹さんがこの世界のキャラになっているかは女生徒から先に調べると決まってから数日が経過したある日。私と魔王、ヤンキーの3人で集まっていた。


 ゲームをどうやってクリアーするかのために集まるようにしてるんだけど、今問題になっているのはヤンキーの妹さんについてだ。


「くそ……誰に聞いてもコテンパンなんて名前の女生徒は居ねえってよ……」


 そう言って頭を抱えるヤンキーに私は優しく答えて上げた。


「あ、コテンパンは私が調べて置いてあげたわ。違っていたわよ。それとヴェラとカロリーネも違ったわ」

「お。そうかサンキュー! どうやっても見つからないからどうしようかと思ったぜ!」


 ヤンキーはそう言って喜んだ。良いことをすると気分が良いわ。


「でもそうなると妹さんがこの世界に居たとしても女性の登場人物じゃないってことよね?」

「ああ。どうやら妹はこの世界に居ないらしいな」


「やっぱり妹さんは男キャラになっているのね」

「だからとっとと今のゲームをクリアーして次のゲームに行こうぜ!」


「まずはやっぱりシンシチから調べた方が良いかしら?」

「確かほかの奴らがヒロインとくっつくのを邪魔すりゃ良いって言ってたよな?」


 正論を述べる私が魔王に顔を向けると、現実から目を逸らすヤンキーも魔王に顔を向ける。


「……令嬢の態度もどうかと思うが、万一お前の妹が男キャラの誰かだったのを見逃して次のゲームに行ったら二度と会えないかも知れないぞ。今のゲームに居てそれを見つけられないまま次に行ったら、別のゲームって言うことで同じキャラでもそっちには入ってないかも知れないからな」


 魔王が冷静に状況を判断してそう説明するとヤンキーが

「ぐぬぬっ」

 と唸った。


「まあゲームは始まったばかりだから終了まで時間はある。急ぐこともないだろうからおいおい調べていこう。まだ新キャラが居るかも知れないしな」

「それもそうね」


 ヤンキーはムスッとしていたけど、自分の妹のことだからそれ以上何も言えずにいた。


「とにかくヤンキーはサザーン王国の連中を調べてくれ」

「まあ俺たちはこの国を攻めるための情報集めをしているからな。定期的に全員が集まるしその時にゲームって単語を言えば良いんだよな?」


「う~~ん。それはどうかな……」

「何か不味いのか?」


「自分が現実世界のことを思い出した時を思い出してくれ。かなり頭が混乱しただろ? もし本当にお前の妹さんが使節団に居て全員の前でそれを思い出したら不味いことになるかも知れない」


 確かに、私本当は女の子なの! ってヨジョウが言い出したら気持ち悪いもんね。


「分かったよ。じゃあ理由をつけて2人きりになるようにするよ。それでそっちはどうするんだ?」

「仕方ないわね。私が……」


 私がそう言いかけると魔王が遮った。


「いやこっちは俺が調べよう」

「おお。頼むぜ」


 こっちの事情をよく知らないヤンキーは素直にそう言ったけど、これはちょっと不自然だ。


「私はこちらの攻略対象たち全員と顔見知りだけど、魔王は学園では転入生でほとんどの人と関わりないでしょ? ちょっと前にカミルと会ったけど険悪な感じだったし」

「ん? なんだそれだったら令嬢に頼んだ方が良いんじゃないか?」


「大丈夫だ。俺には手下の魔族が居るからな。どうとでもなる。それに今回1作目の奴らが令嬢を殺そうとする可能性は低いとは思っているが確実じゃない。このゲームは『隣の君はサイコパス』なのを忘れるな」


 う~~ん。確かに攻略対象がヒロインと結ばれると私は殺されちゃうって話だけど、それってゲーム終盤の話よね? 今すぐどうこうっていう話じゃないはずだけど……。


 そう思ったけど、このゲームについて一番詳しい魔王に反論はしにくい。結局、魔王の主張通りで決まった。


 そして解散したんだけど次の休み時間に騒動が起こった。


 その時私はヴェラやカロリーネと一緒でたまたま通りかかっただけだったんだけど、ことの発端はカミルがヤンキーに声をかけたことだ。以前にカミルが言ってた、ヤンキーが女生徒たちを侍らせていることについてだろう。


「イルハーム先生。少し話があるのだがよろしいか」

「これはカミル殿下。私に何かご用ですか?」


 え? 何こいつ。キモッ!

 普段のヤンキーを知っている私からすればこの口調は本当に違和感が凄い。


「ここでは人の目があるので場所を変えさせて頂きたい」

「勿論良いですよ」


 う~~ん。カミルも以前より落ち着いてる感じだけど、すぐ魔法をぶっ放す傾向があるからな~~。ちょっと気になるな。

 そう思ってカミルを先頭に場所を移す2人の後ろに着いていった。


 すると

「お姉さまどうなされたのです?」

 とヴェラが聞いてきた。


「え~~と。ほらあの2人って……ねえ?」


 なんて説明したら良いのか分からず言葉が出ない。


「そうですわよね。あの2人って女生徒たちから人気がありますものね。でもお姉さまがそのようなことに興味があるなんて意外でしたわ」


 ナイス! カロリーネ!


 だけどヴェラは

「お姉さまともあろう人が……」

 と不満そうだ。


「それにイルハーム先生の噂は私も聞いておりますけどあまり良い話では……」


 ヴェラって結構気が強いし曲がったことが嫌いなのよね。確かに女生徒をは侍らせているなんて良く思わないよね。


 そうこう言いながら内密な話をする定番の場所。校舎裏で足を止めたカミルとヤンキーの会話に校舎の影から聞き耳を立てる。


「実はイルハーム先生についてあまり良くない噂を聞きましてね」

「それはどのような噂ですか?」


「女生徒を侍らせているとか。いえ女生徒たちも異国から来た先生に興味を持つのも無理はなく、女生徒たちから先生に近寄ってきているのは分かるが、貴方も一時とはいえこの学園の教師として務めるなら節度ある行動をお願いしたい」


 大人になったなカミル。なんかちゃんとした奴っぽいぞ。


「それは失礼いたしました。私もサザーン文化の知識を見込まれて教諭として派遣されましたが、教育者が本職ではないので配慮が足りませんでした。それに……」


 ヤンキーはそう言うと少し言葉を選んでいる様子を見せてから口を開いた。


「実は私には生き別れた妹がおりまして。しかもこの国に居るという情報があったのです。ですのでもしかするとこの学園に妹が居るのかと思い……」

「ほう。それは……何か手掛かりでもあるのですか?」


「実は妹とは秘密の合言葉がありまして。”ゲーム”というのですが。私の妹ならその言葉を聞けばすぐに気づくはずなのです」


 お!? まさかそう話をもっていくとはヤンキーの癖に頭が良いぞ!

 そういえばゲームキャラのオルハンって有能設定なんだよね。オルハンキャラを演じている時には頭が良くなったりするのかな?


 カミルはヤンキーの言葉を疑っているのか顎に手をやり考え込むような仕草をした後しばらくして口を開いた。


「そういえばそんな言葉に反応した女生徒が居たような……」


 え? マジ? と私が思った瞬間、ヤンキーも動いていた。


「本当か!?」


 妹が居るかも知れない。その言葉にオルハンキャラを捨ててカミルに詰め寄った。

 カミルにも予想外のことだったらしくその勢いに戸惑ったようだ。


「あ、すまない。本当なのかどうか試させて貰っただけで……」


 あ。なんだ。嘘なのか。そりゃそうよね。基本的にこの世界の人がその言葉を知ってるはずないんだからそんな噂も聞いているはずないよね。


 だけどヤンキーにとっては地雷だった。


「てめぇ! ざけんじゃねぇぞ!」


 妹の手掛かりが見つかったと思った瞬間、それが嘘だったと激怒したヤンキーはそう言ってカミルを殴りつけたのだ。

 殴られたカミルは校舎の壁まで吹っ飛びそこで崩れて尻もちをつく。


 馬鹿だ。第一王子を殴ってどうする。


 これってイベントに影響でないわよね? と思いつつ止めに入った。


「ちょっとやめなさい!」

 と校舎の影から飛び出てヤンキーの前に立ち塞がった。


「生き別れの妹を探してるってんだろうが! 言って良い冗談かも分かんねえのか!」


 た、確かに。


 ヤンキーはカミルをさらに殴ろうとするので、私はヤンキーに抱きついて止めようとするがそれにかまわずカミルに近づいて行こうとする。するとヴェラとカロリーネがヤンキーを後ろから羽交い絞めにし一歩も進めなくなった。


 もしかするとこれ以上カミルを殴るとイベントに影響が出るからと強制力が働いたのかも。なら腕力とかのリミッターが外れるから女の子でも男を抑え込めるよね。


 その間にカミルが立ち上がる。口の中を切ったのか口の端から流れている血を拭っている。


「貴様……俺を誰だと思っている」


 カミルは怒りをあらわにヤンキーに近づいてくる。


「ああ第一王子様なんだろ。知ってるぜ。第一王子様だったら何を言っても良いと思っているらしいこともな!」


 駄目だ。ヤンキーが完全にヤンキーモードだ。これ本当にイベントに影響でないの?


 ヤンキーの言葉にさらに怒りをあらわにしたカミルが拳を振りかぶった。3人がかりで止められているヤンキーに避けるすべはない。


 私は思わずヤンキーから手を放し、今度はカミルに抱きついて止めに入った。


「カ、カミル。今のは貴方が悪い。止めて!」

「どけ! 公爵令嬢!」


 カミルはそう言って私を振りほどこうとする。


「妹と生き別れたって言ってるでしょ! 貴方が言ったのは駄目なことなのよ!」


 するとカミルの身体から力が抜けたように感じた。


 興奮した所為か息が荒いがもうヤンキーを殴る気はなさそうだ。

 とりあえずカミルの方は大丈夫そうなのでカミルに抱きついたままヤンキーに顔を向けた。


「貴方も。カミルを殴ったことについて私は何も言うつもりはないけど、これ以上は止めて」


 それでもヤンキーはしばらくカミルを睨んでいたけど、怒りで荒くなっていた息を整えるとヴェラをカロリーネの腕を振り払った。

 強制力が働いてリミッターが外れたヴェラとカロリーネの腕を振り払えるはずはないんだから、もうヤンキーにカミルを殴る気がないってことね。


 ヤンキーは私の予想通りカミルに殴り掛からず背を向けた。

 そして振り返って口を開く。


「ああ分かった。そいつは”違う”。それが分かっただけで、そいつにはもう用はねえ」


 そう言ってヤンキーは校舎裏から姿を消した。取り残されたカミル。なんて言葉をかけよう。


「え~~と。確かにイルハーム先生も殴ったのは悪かったけど……。ねえ?」


 どうしよう。なんて言って良いのか分からないわ。


「そうか……普通は兄弟の……家族のことであれほど怒るものなのか」


 カミルが俯き呟くように言った。

 カミルは第一王子って言っても正妻の子じゃないから王位継承権は次男でも正妻の子のデニスの下だし肩身が狭いのかも。そんなんじゃ家族の仲も良くないだろうし、第一王子だから何を言っても良いと思ってたんじゃなくて”家族の絆”なんてものを知らなかったのね。


「そして……公爵令嬢。貴女にはそれが分かるのだな」

「え、ええ。それはまあ分かりますけど……」


 私の言葉を受けたカミルは自嘲気味な笑みを浮かべた。


「騒がせてすまなかったな」


 そう言うと自嘲気味の笑みを浮かべたまま私に背を向けて、カミルも姿を消す。


 ふ~~。何とか収まったけど、まさか殴り合いが始まるとはね。いやヤンキーが一方的に殴っただけか。

 カミルは今後のイベントに出番があるはずだから大怪我はしないようになってるんだろうけど、こんな調子で大丈夫なんでしょうね?


 私がそんなことを考えていると、ヤンキーが姿を消した方向を見つめていたヴェラが口を開いた。


「イルハーム先生が女生徒を侍らせていたのにはそんな理由があったのですね……」


 いや女生徒を侍らせてたのは単にモテているのを楽しんでいるからで、カミルに妹さんのことを言ったのはカミルがその妹自身なのかを調べるためだ。

 ヴェラは勘違いしているのだけど、こんなこと説明できないわよね。


「私イルハーム先生のことを誤解しておりましたわ。ぽっ」


 おい。お前の男の趣味はどうなっている。

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