第47話:性別確率論
励みになりますので、
評価、ご感想、お気に入り登録をお願いします。
昨日、カミルとヤンキーが起こしている問題について対応するってことになったんだけど……。
まあ協力するまでもなく私が直接ヤンキーに釘を刺せば良いわよね。というわけで朝早くヤンキーを校舎裏に呼び出した。というと私の方こそヤンキーのようだ。
でも舞台が学園なんだし、中庭なんかだと他の人の目があるし屋上になんて登れないし仕方がないじゃない。
とはいえやって来たヤンキーの開口一番の台詞が
「なんだよ。朝っぱらからこんなところに呼び出しやがって」
って、こんなんじゃ確かにヤンキー同士の会話に聞こえるわ。
「あんた相変わらず女生徒を侍らせているそうじゃない。なんかこっちの先生たちの間で問題になっているみたいよ」
「女の方から寄ってくるんだよ。まったく誰がチクりやがったんだよ」
「チクるも何も中庭なんかで女生徒に囲まれてたら目立つでしょ。先生も見てたんじゃないの? それより女生徒に手を出すなって前にも言ったわよね」
「ったく。さっきも言ったが向こうから来るんだからしょうがねえだろ」
「女の子の方から来ても断れば良いじゃない」
「断る? なんでそんなもったいねえことしなきゃなんねえんだよ!」
ちっ! らちが明かないわね。
「本当に女の子たちに手を出したら承知しないからね!」
「手なんかだしちゃいねえよ。だいたい屋敷まで馬車で送り迎えするような奴や敷地内の寄宿舎に住んでいるような奴らにどうやって手を出せってんだよ」
ん? そうか現実世界の学生みたいに放課後に繁華街に遊びに行くとか部屋に連れ込むとか出来ないから、簡単には手を出せないのね。
「それはお気の毒様ね」
「ちっ! それに俺だって誰彼かまわず手を出すつもりはねえって言ったろ。付き合うにしてもちゃんと1人に絞るって」
「本当かしら?」
「本当だって! ちょっとは人を信用しろよ!」
ヤンキーは憤慨し腕を組んで睨んでくる。
「だいたい妹さんを探すってのはどうなったのよ? 女の子を侍らせている場合じゃないでしょ?」
「そ、そりゃ俺だって妹は探したいが中に入っているなら登場人物ってやつらだけなんだろ? 俺には区別がつかないんだらからお前か魔王とかいうやつのどちらかが教えてくれよ」
「そうね……。私がなってるアーレンベルク公爵令嬢はもちろんでクララも違ったし……後はコテンパンかな? そうだ。ヴェラやカロリーネも登場人物なんじゃないかしら?」
「じゃあ後3人だけか。思ったより少ないな」
「そういえばそうよね。登場人物ってどこまで言うのかしら? 説明書に名前が出ている人は登場人物っていうなら私も分からないわね」
「じゃあやっぱり全員調べて回らなきゃならねえのかよ」
「魔王に聞いたら1作目の登場人粒は全員分かるんじゃないかな? でも続編で増えたならやっぱり分からないか……」
「まあそれでも可能性が高い奴から調べた方が効率が良いか。じゃあ魔王に聞くか」
こいつ……ヤンキーのくせにちょっと頭良いっぽいこと言いだしたぞ。
とはいえ言ってることは正しいっぽいので魔王を呼び出した。
「魔王! とっとと来なさい!」
すっかり追及するのは忘れていたけど、あいつは魔族を使ってストーカーをしているはずだからこれで来るはずた。
先日カミルと2人で話している時にやって来たのもストーカーをしていたからよね。
しばらくすると予想通り魔王がやって来た。
「ストーカーしてたんだから分かってるだろうけど、ゲームの登場人物って誰なのか教えて欲しいのよ」
「だからストーカーじゃないって言ってるだろ」
と言いつつ魔王が教えてくれた。
「この世界はゲームの設定やイベントの影響が大きいのは分かっている。それはシナリオライターの影響が強いからでシナリオライターが神と言ってもいい。おそらくだが神であるシナリオライターが重要と認識している人物だけが登場人物だ。となると名前も無いようなモブは除外なのはもちろん、名前はついていてもシナリオに登場しないようなキャラも登場人物とは言えないと思う」
「つまりどういう人?」
「そうだな。例えばゲームでも”1時限目は何とか言う先生の授業だ”みたいなナレーションがあったりすると思うが、そんな人物を登場人物とは言えないだろうな」
「なるほどね。じゃあ結局は?」
「とにかくイベントに参加している奴を登場人物として調べていく必要があるな」
魔王はそう結論づけたけど、何か難しい顔をして
「だが……」
と話を続けた。
「俺は……俺たちは実際の性別とキャラの性別が同じになっている。だがヤンキーの妹は女のキャラになっているとは限らないかも知れない」
「え? そうなの?」
「は? 俺の妹がここでは男になってるかも入れないってのかよ!?」
「その可能性もある」
「でも私たちは一致してるじゃない。それが偶然だったってこと? そんなの確率的にありえるの? 男と女で一致する確率が50%として、それが3人続くなら50%の半分の半分で12.5%とかよね。そんなこと起こる?}
「いやこの場合の確率はそうじゃない。1人づつどうなるかだ」
「つまり?」
「俺の時は男性キャラが俺を含めて6人。女性キャラがヴェラやカロリーネまでを含めればクララとお前で4人。10分の6で男なんだから男になっても不思議じゃない」
「そうね」
「でお前の時は俺を除いて男が5人で女が4人で、9分の4で女なんだから確率は50%以下にはなるが性別が女になってもおかしくない」
「まあね。それで最後はヤンキーね」
「ここで続編の男キャラ5人が追加で10人。女キャラからお前を引くがコテンパンが増えて結局4人。14分の10で男なんだから男になって当然だ」
「つまり残りは13分の9の確率で男になるからヤンキーの妹さんは男になってるのか……」
私がため息をつきつつそう言うとヤンキーが怒り出した。
「何決まったみたいに言ってんだよ! 妹が男になるわけねえだろ!」
「だって確率的に貴方の妹は男なのよ。それが現実なの……」
そういって私はヤンキーを優しく慰めた。
「だから違うってんだろ! だいたいその可能性があるってだけだろうが! なあ?」
ヤンキーはそう言って魔王に顔を向けた。
「ああ妹さんを探すならその可能性も考えて探す必要があるってだけで、確実にそうというわけでもない。もしかするとシナリオライターの意識が性別に及んで、同じ性別のキャラの中にしか入らないルールがあるかも知れないしな」
「そ。そうだ。きっとそうだぜ!!」
魔王の気休めにヤンキーは喜んでいる。
「分かったわ。とりあえず私はシンシチに確認してみるわね。ヤンキーはヨジョウを調べてね」
「そいつらはおっさんだろうが!」
「だってその可能性もあるんでしょ? ちゃんと調べないと」
「だから女を先に調べてからだろ!」
私にヤンキーがイチャモンを付けてきていると魔王がうんざりしたように小さく首を振った。
「令嬢……とにかく同じ学年のヴェラ嬢とカロリーネ嬢に確認してくれないか」
「分かったわよ。じゃあ後はコテンパンね」
「おお。やってくれるか。じゃあそのコテンパンってのは俺が調べてみるぜ!」
「そうね。そうすると良いわ」
私がそう言うと、ヤンキーはさっそくと走って行った。
その後ろ姿を見送っていると魔王が私に話しかけてきた。
「……コテンパンはあだ名で、本名はエルナ・バルリング伯爵令嬢ってあいつ知ってるのか?」
「さあ知らないじゃないかしら」




