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第44話:2作目はっちゃけ問題

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「貴公は自らが仕える国をサザーン王国に滅ぼされたというではないか。そのサザーン王国に仕えるとは恥とは思わぬか」


 朝、学園に登校するとシンシチが何やら騒いでいた。そのシンシチの前には1人の男が腕を組んで立っている。


「それは貴公の忠義で御座ろう。私には私の忠義がある」


 シンシチにそう答えたのは男は年齢はシンシチと同じかちょっと年上くらいなのかな? 中肉中背だけど、長身で筋肉粒々のシンシチの迫力に全く動じた様子はない。


 シンシチの鋭い眼光を、そのシンシチよりもさらに切れ長の黒い瞳で受け止めている。髪の毛の長さはシンシチと同じくらいだけど後ろで束ねているシンシチと違って奇麗な直毛だ。


 多分、これがサザーン王国の最後の攻略対象のソン・ヨジョウって人なのね。名前の通り服装も中華っぽい赤の縁取りの白地の上着と深緑のズボンといういでたちだ。


 でも、どうして2人はやりあってるんだろう? 別にイベントでもなさそうなんだけど?


「我が主君はサザーン王国との戦いで命を落とし、主を失った俺はこの国に渡った。この国の隣国まで侵略していたお前たちが、いずれこの国とも戦うと睨んでいたからだ」


 そういえばシンシチって学園の戦闘技術の教員だけど、そもそも傭兵だっけ。サザーン王国とそんな因縁があるなんて。


 ん? でも、1作目の時には続編を作る予定がなかったはずよね? その時点でサザーン王国なんて設定はなかったよね? それをさも関係ありました。って感じにするなんてやるなシナリオライター。見直したよ。


「なるほど。それは幸運な話だな」

「なに!? 貴様! 愚弄するか!!」


 シンシチが怒声を上げた。自分の主君が戦死したという話を幸運だなんて言われたら怒るよね。


「貴公は、主君が亡くなった後にも忠義を尽くすに足りる主君に巡り合えたということだろう。サザーン王国に滅ぼされた我が主君はそうではなかった」


 ヨジョウの言葉にシンシチが探るような視線を向ける。

 シンシチからすれば自分の主君を褒められたようでもあるけど、シンシチの価値観からすればそれでも忠義を尽くすのが武士。という考えもあるのだろう。


「とにかく、今貴公とことを荒げるつもりはない。私はサザーン王国友好使節団の護衛隊長としてこのザクセンブルク王国に派遣されて来た。もし我が国とこの国が争うことがあれば、その時には存分に相手になろう」

「よかろう」


 ヨジョウとシンシチはそう言ってお互い矛を収めて背を向けた。


 でも昨日は結局ヤンキーとのイベントだけだったし、今日は間違いなくヨジョウとのイベントだよね。


 今まで、ヒロインが私にぶつかってくる。攻略対象が私にぶつかってくる。私が攻略対象にぶつかる。攻略対象が私に物を落としてくる。ってやって来たけど、今回はどんなイベントになるのかな?


 そんなことを考えながらイベントに備えて友人たちと休憩時間に学園内を徘徊する。


 するとカロリーネが

「少し調練場に行ってみませんこと」

 と言い出した。


 とはいえ私の返事を待たずに私の腕を掴んで引きずっていく。イベント開始ね。


 ついこの前まで、この国は魔族との戦いが日常茶飯事だった。その魔族を討伐するのは貴族の役目。なので戦いのための馬術も貴族の必須技能。


 魔族との戦いが終わったから、馬術も貴族の必須技能ではなくなっていくのかも知れないけど、今のところ授業は残っている。すぐに今までの慣習もなくならないってことね。


 その馬術の授業に使う馬を調練するするのがこの調練場。そのまんまね。


 ここでイベントが起こるのね。と友人たちと歩いているけど、当然、コテンパンはイベントには後から参加するから離脱。クララはイベントに参加しないから離脱している。


 そうして調練場を歩いているけど、当然足元は芝生も敷いていないただの地面。

 靴が汚れちゃうじゃない。と思っていると突然

「危ない!」

 というモブの声。

 そして私に向かって突っ込んでくる暴れ馬!


 え? と思っていると、ヴェラとカロリーネが

「お姉さま危ない!」

 と言いながら左右から私の腕を掴む。


 その私を抑えているヴェラとカロリーネの腰は引けていて、暴れ馬が突っ込んできた瞬間逃げる気満々の体勢。

 いやいやいや。これは危ないって!!


 しかしいくら暴れても強制力が働いてリミッターが外れている2人の腕力には抵抗できない。

 そうしてもがいている間に私の目前までくる暴れ馬!


 死ぬ!

 と思って目を瞑って覚悟を決めると、その瞬間カロリーネの手が離されて次に強くヴェラから引かれるのを感じた。それを追うように私の腰の辺りに誰かがタックルをしてくるような感触。


 目を開けると調練場に倒れる私と、私の腰の辺りに抱きつく感じで同じく倒れているのは朝にシンシチと揉めていたヨジョウだった。


「大丈夫か?」

 と起き上がりながら私に聞いてくる。


 イベント的には暴れ馬に突き飛ばされそうになる私をヨジョウが助けてくれたってことみたいだけど、もしヨジョウが間に合わなくても私が馬にぶつからないようにヴェラとカロリーネがしてくれていたみたいね。


「大丈夫ではありませんわ! 服が泥だらけではありませんの! と、お姉さまがおっしゃっています!」

 とヴェラ。


「体当たりするなら馬にでしょう! と、お姉さまがおっしゃっています!」

 とカロリーネ。


「今度からそうする」

 と言いながらヨジョウが倒れている私に手を差し出した。その手を掴んだ私を引き起こす。


「貴女は確かアーレンベルク公爵令嬢でしたかな」

「私がアーレンベルク公爵令嬢と分かってのこの仕打ちですの? と、お姉さまがおっしゃっています」

 とヴェラ。


(いやお前はヴェラだろ)

 と思わず心の中で突っ込んでしまう。


「そうは言うが……」

 とヨジョウが反論しかけたところに

「アーレンベルク公爵令嬢! この方は貴方を助けて下さったのではないですか! いくらアーレンベルク公爵令嬢でも言葉が過ぎます!」 とコテンパン。


「あら? 貴女は確か2年連続学年主席のバルリング伯爵令嬢。2年連続学年主席だからって私にたて突くつもりですの!? と、お姉さまがおっしゃっています」

「確かに私は2年連続学年主席ですが、それはさておいて助けて下さった方にあまりにもの言いようではありませんか」


 まだ学年主席をひっぱるか……。って、ここでクララがぶつぶつ悪口をいうパターンだけど……。

 と辺りを見渡してもクララの姿が見えない。


 コテンパンのイベントにクララが参加してちゃおかしいし、モブにまぎれようにも見渡しの良くて人影も少ない調練場でのイベントではそれもできなかったのね。

 と思っていると遠くの方でクララが何か叫んでいる姿が見えた。


 多分大声でコテンパンの悪口を叫んでるんでしょうけど、ここまでは聞こえないわ。シカトしましょう。


「2年連続学年主席の美しいお嬢さん。私のために君が争うことはない。もう大丈夫だ」

「で、ですけれど、貴方は何も悪いことはなさっておりませんのに……」


「誰か1人でも私が正しいと知っている人がいる。それだけで十分だ」

「ヨジョウ様……」


 ヨジョウの言葉にコテンパンが頬を赤らめた。


 ヨジョウ。おっさんのくせになんかかっこいいぞ。シンシチもだがこのゲームはおっさん推しか?


 こうしてコテンパンサイドのイベントが終わるとすぐに始まるクララサイドイベント。


 突撃してくる馬と私を押さえつけるヴェラとカロリーネ。でも2度目だしさっきは大丈夫だったので冷静に2人を見ると私よりも緊張しているようだった。


 さっきも実はヨジョウが私にタックルされるより前にヴェラとカロリーネは私を馬から避けていてくれたし、私が怪我をしないようにしてくれているのよね。


 そして今回はさっきとは逆でカロリーネが馬とぶつかる寸前で私を引き寄せる。そして私の手を放すヴェラ。ただ少し手を放すのが遅れたのか引き寄せられる私に引っ張られてヴェラがバランスを崩す。


 これじゃ私は馬にぶつからないけど、ヴェラがぶつかっちゃう!


 そこに飛び込んでくるヨジョウ!

 だけどそのヨジョウは私の傍を通り過ぎた。


 え? と思っているとヨジョウがタックルをしたのはなんとヴェラ!

 ヴェラの腰の辺りの飛びついたヨジョウは、身体を反転させてヴェラをかばいながら地面に落下。馬はその上を通り過ぎて行った。


 え……と。これはヨジョウが私じゃなくてヴェラを助けたってことよね?

 まさかこんなイベントがあるなんて。と思っていたけど、

「また泥だらけになってしまったではありませんか! どういうおつもりですの!? と、お姉さまがおっしゃっています!」

 と、ヨジョウを下敷きにする感じで倒れているヴェラが叫ぶ。その顔は赤い。


 はい? イベントとしては、やっぱり私が倒されていることになってるの?


「貴方が洗濯してくださいますの!? と、お姉さまがおっしゃっています!」

 とカロリーネが言いながらヴェラに手を差し出し、その手を掴んだヴェラが立ち上がる。


「洗濯は苦手でな」

 と言いながらヨジョウが立ち上がろうと……したところで動きが止まった。


 あれ? どうしたんだろう? と思っていると、あ、そうか。という感じでポンッと手を打つヴェラ。


 ヴェラは私に近づいてきて、少し遅れてカロリーネも近づいてきた。

 なに? と思っていると2人はリミッターが外れた怪力で私を抱きかかえてヨジョウに向かって放り投げる。


(ちょっと!? 何なの!?)


 ヨジョウは私を受け止めると、私を抱きかかえたまま立ち上がり私を立たせる。


(え? 何この茶番)


 どうやら私に体当たりして一緒に倒れて、私を抱きかかえながら起き上がる。という描写をやりたかったのに私の代わりにヴェラを助けちゃった挙句にさっさとカロリーネがヴェラを立ち上がらせちゃったから、改めて私をヨジョウに抱きかかえさせたようだ。


 ヴェラも今後のイベントには必要な人物として怪我しないように助けてくれたみたいだけど、それだったら最後までヴェラを代役にしてくれれば良いのに。


「だいたい、次は馬に体当たりするのではなかったのかしら!? と、お姉さまがおっしゃっています!」

「いや現実的に考えればやはり無茶だ」


「無茶でも武人ならば二言はないのではありませんの!? と、お姉さまがおっしゃっています!」

「そうすれば私もろとも君も馬にはねられるだけだぞ」


 うっ! 正論だ。


「それでも何とかするのが武人ではありませんの? と、お姉さまがおっしゃっています」

 と言いながらヴェラが私に冷ややかな視線を向ける。気づくとカロリーネも私に視線を向けている。


 え~~。私が責められてるの?


 いや確かにヨジョウの言い分の方が正論だし私が無茶言っていることになってるけど、実際その台詞を言ってるのはヴェラよね? なんか理不尽じゃない?


 そこに

「アーレンベルク公爵令嬢様! ヨジョウ様のおっしゃることはもっともです! 誰だって自分の身は大切です!」

 とクララが登場。


「いやお嬢さん。私のことうんぬんではなく、そうでなくてはアーレンベルク公爵令嬢を助けられないという話なんだよ」

「大丈夫です! 分かっておりますわ!」


 駄目だ。こいつ全然分かってね~~。


「ほほほっ! やっぱり自分のことが大事なのですわね! と、お姉さまがおっしゃっています」

 とカロリーネが言いヴェラと共に私に冷たい視線を送る。いや言ってるの貴女だから。


「それの何が悪いのですか!」

 とクララ。


「いやお嬢さん。ちょっと待ちたまえ」

 とクララを制するヨジョウ。


「いえいえ。分かっています。分かってますから!」


 駄目だ聞く耳もたね~~。


 しかし本当にこいつヒロインか? 元々裏ではやばい奴と思ってたけど、続編に入ってからイベントでも言動がおかしいぞ。


 そうしてクララが暴走気味のままイベントは終了した。


「それは2作目はっちゃけだな」


 イベントの時にクララの様子がおかしいと魔王に話すと魔王はそう言った。


「2作目はっちゃけ?」

「そうだ。2作目に限らないが制作会社がマンネリ化した作品の方向性を変えようとした挙句、はっちゃけて悪乗りするんだ」


「なるほど。そういえば映画とかでもあるわね」


 確かにクララほどじゃないけど、コテンパンの学年主席ネタもクドイといえばクドイわね。


「たいてい上手く行かなくて、次の作品で”原点回帰”とか言って元の作風に戻すけどな」

「あるあるね」


 でもこれからもあの子の暴走に付き合わされるなんて頭が痛いわ。

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