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第42話:果てしない世界?

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 私はオルハンの妹と思わしき人物を校舎裏に呼び出した。そこにオルハンも向かわせる。

 私と魔王は校舎の影からそれを見守る。


「貴方は確か、サザーン王国から来た臨時教諭の方でオルハン・イルハーム様ですね。お姉さまから何かお話があるとお聞きしたのですけれども……」


 そう言ったのはクララだ。私の考えでは間違いなく彼女がオルハンの妹だ。


「あ、あの……。えっとなんて言ったら良いのかな。お前が俺の妹って聞いたんだが……」


 さっきまで強気っぽかったオルハンだけど、さすがに実際の妹とは全然違う容姿のクララを妹というのは信じられないのか声に力がない。自分たちがゲームの世界に取り込まれたっていうのも、まだ信じ切れていないのかも。


「貴方の妹? 何をおっしゃっているのです?」

「あ、そ、そうだよな。え~~と。こ、この世界はゲームの中で、本当のお前は現実世界にいてゲームの世界に取り込まれたんだ」


 たどたどしいけどまあ良いわ。とにかくゲームっていうワードを言えば、現実世界の記憶が蘇るはずよ。私やオルハンもそうだったし。


 しかしクララは予想に反し

「ゲームの中? 何をおっしゃっているのです?」

 と怪訝そうな表情だ。


「え? あれ? だ、だからここはゲームの中で……。何か思い出さないか?」


 オルハンにとっても、魔王からゲームというワードを言えば現実世界の記憶を思い出すって言われてやっているだけだから自信もなくて戸惑っているみたい。


「何も思いませんけど……。本当に何なのです?」


 クララが少し怯えたように後ずさる。確かに親しくもない男と2人きりで訳の分からないことを言われたら怖いのかも。きっと私が取り次いだんじゃなかったら、とっくに逃げ出してるわね。


「何って……あれ?」

 と、オルハンもどうしたら良いのか分からなくなっているようだ。


 まったく仕方がないわね。


「クララ。どうしたの?」

 と校舎の影からでた私は話しかけた。


「あ、お姉さま!」

 と、私の登場にクララが安心したような声を出した。


「あの……お姉さまからこの方がお話があるとお聞きしてまいりましたけど……。さっきから訳の分からないことをおっしゃっていて。確かゲームがどうとか……」


 う~~ん。どうやら私の検討違いだったようね。まあ誰にも間違いはあるわね。


「本当に何を言っているのでしょうね。私から言っておくから、貴女はもう行って良いわ」

「は、はい……」


 私の言葉にクララは怪訝そうな顔をしながらも帰って行った。


「おい! お前があいつが妹だって言ったんだろ! 全然違ったじゃねえか!」

「あれ~~? 間違いなくクララが貴方の妹だと思ったんだけどね」


 私が頭を掻きながら答えると、魔王が

「どうしてクララがあいつの妹と思ったんだ?」

 と問うてきた。


「だって、クララって素の感じは何となくヤサグレているっていうかヤンキーっぽいかなって。オルハンてヤンキーみたいだし妹さんもそうかなって」

「馬鹿野郎! 妹は小学生だ! ヤサグレってなんだてめえ!」


「え~~。だったら先に言いなさいよ! 貴方の妹なんだからヤンキーかと思うじゃない!」

「てめえいい加減にしろよ!」


 オルハンは私に怒鳴ると魔王に向き直った。


「なんなんだよこの女! わけわかんねえぞ!」

「いや俺だってわけわからんよ」


 失礼なことをいう魔王に、ヤンキーがさらに耳を疑うような暴言を吐いた。


「いや、お前の女なんだろ!?」

「はぁ? 何言ってんのよあんた!? 私は魔王の女なんかじゃないわよ! 失礼にもほどがあるわ! 江戸時代だったら無礼討ちよ! 今が江戸時代じゃないのを感謝することね!」


 激怒して睨む私にヤンキーもにらみ返してくる。そんな私たちに魔王がため息をつく。


 余裕を見せている魔王だけど、私の予想ではこいつは現実世界では非モテの陰キャなはず。ヤンキーなんかには対抗できそうにないんだけど、やっぱりこの世界では魔王なのでいざとなったら自分の方が強いと分かってての余裕だろう。


「確かにこいつが間違えたのには違いないが、確認してみないと分かりようがないのはしょうがないだろう。お前の妹かどうかを調べるなら登場人物を片っ端から調べるしかないんだからな」

「その通りよ。とにかくクララがあんたの妹じゃないのは確定したんだから、次を調べれば良いともっと前向きに考えるべきよ」


「こいついけしゃあしゃあと……」


 ヤンキーは私の正論にぐうの音も出ないようだ。


「くそっ!」

 とつぶやくとその場に座り込んで頭を抱えた。


「妹もいくら正月の福袋で安いからって、こんなゲーム買わなきゃ良かったんだ! ゲームがなかったら事故にあってもこんなことにならなったんだよな!?」

「ああおそらくな」


 なるほど買った福袋の中にこのゲームがあったってことか。でも、凄い偶然ね……。あれ?


「その福袋ってゲームはこれ1つだったの?」

「1つって?」


 座り込んで頭を抱えていたヤンキーが、そう言って頭を上げた。


「福袋なんだったら色々と入ってたんじゃないかなって」

「ああ確か色々と入ってたはずだぞ。隣の何とか福袋って言ってて、そのシリーズのゲームが何本か入ってるって言ってたな」


 その言葉に私は魔王と顔を見合わせた。隣の何とかのシリーズって、間違いなく隣の君はサイコパスシリーズってことよね。


「何本かって……何本?」

「何本って……何本なんだろうな? そこそこの値段の福袋だったから2、3本ってことはないだろうが」


 多分、今は3本目のゲーム。でも4本よりも多いなら、同じ登場人物のさらに続編があるかもしれない。


 その可能性に気づいて私は愕然とした。今回のゲームを乗り越えれば次こそは現実世界に戻れるかと思ってたのに、さらに延長戦の可能性もあるということだ。魔王も顔を青くしているから同じ可能性に気づいたのだろう。


「で、でもシリーズが沢山あっても今の続きで作られているとは限らないし、だったら大丈夫なんじゃないの?」

「それはそうだな」


 魔王はそう言って頷いたけど、完全には納得していなさそうだ。ただ今それを考えてもしょうがない。という感じなんだろう。


「でも事故にあった時にゲームが何本もあったってことは……」

「そうだな……」


 私と魔王が深刻そうな表情をしているとオルハンも状況が悪いのを察したようだ。


「えっと。それってどういうことなんだ?」

「ゲームが沢山あったんだったら、どのゲームの中に行ってるのか分からないんだ。つまり別のゲーム世界かも知れない」


「なんだと……。じゃあいくらこの世界で妹を探しても無駄ってことか?」

「いやそうとも限らない。実は俺たちはこのゲームのシリーズの1作目の世界に入れられたんだ。それでゲームを攻略したら現実世界に戻れるのかと思って頑張って攻略したら実はゲームに続きがあって、そこにお前が登場したってわけだ。だから今回のゲームを攻略したら次のゲーム世界に続いて、そこにお前の妹がいる可能性も……」


「分かった! もし今妹が見つからなくてもこのゲームを攻略したら、次に進んでそこに妹が居るんだな!?」


 いや、居るとは限らないんだけど、まあわざわざ否定することもないか。実際、居るかも知れないんだし。魔王も否定することもないと考えたのか

「そうだな」

 と答えた。


「よし! じゃあ、とっとと攻略しようぜ!」

「いや、イベントをこなさないと行けないから、とっとととかできないんだが」


「どうしてだよ! ラスボスとか倒したら終わりだろ!!」


 オルハンは、どうやらこのゲームをロールプレイングゲームと勘違いしているみたいだ。まさかここまでゲームの内容を理解してなかったとは。


「い、いやこのゲームはそういうんじゃなくてね。恋愛ゲームっていうジャンルで女の子と男の子が恋愛するゲームなの」

「ゲームで恋愛? そんなもんして何が楽しいんだよ」


 いや、それを言い出したらゲームで野球するのもサッカーするのも戦うのも同じだろ。とは思ったがここで言い争いをしても意味はない。


「そういうゲームなんだから仕方ないでしょ。とにかく貴方は……モテなければ良いわ!」

「ちょっとまて! 恋愛するゲームじゃねえのかよ!」


「あんたがヒロインと結ばれたら私が死ぬのよ!」

「なんだそりゃ! 俺がモテルのとお前がどう関係あるんだよ!」


 私とヤンキーとの怒鳴りあいは続いたけど、その私たちを放置して腕を組んでなにやら考え込んでいた魔王がおもむろに口を開いた。


「実際、モテルモテないが問題というより、続編があるならそれに登場するキャラが全員生き残るのが重要なんだと思う」

「生き残る?」


 私が問いかけると魔王が説明を続けた。


「そうだ。前は続編があるなんて俺も知らなかったから生き残りさえすればそれで現実世界に戻れると思っていたが、続編があってそれもクリアーしないといけないなら、まずは次のゲームに進まないと行けない。そして次のゲームを始めるには……」

「登場人物が揃ってないとダメってわけね」


「まあ全員が生き残るエンディングからの続きで続編が作られているとも言えるな。だから続編にも出演する登場人物の誰かが死ぬルートでエンディングまで行っても、また初めからやり直させられるんじゃないかな」

「なるほどね……」


 魔王の説明に私は納得したがヤンキーは理解できてないようだ。ヤンキーだしね。


「で、結局俺はモテて良いのかよ」

「駄目よ。貴方は振られなさい」


「ふざけんな!」

「そうした方が平和なのよ! 世界の平和のために振られなさい!」


 そこに私とヤンキーとの怒鳴りあいにうんざりした様子の魔王が口を開いた。


「ちゃんと説明してやれよ。メインの登場人物とヒロインが結ばれると、ヒロインと結ばれた登場人物がこいつを殺すことになってるんだよ。そしてお前はメインの登場人物の1人だからヒロインと結ばれちゃダメなんだ」

「ちっ! 初めからちゃんと説明しろよ。じゃあヒロインが誰とも結ばれなきゃ良いんだな」


「いやそういう分けじゃない。誰とも結ばれなくて全員とそこそこ仲が良いお友達エンドというのもあるが、これは恋愛ゲームとしてはグッドエンドとは言えない。グッドエンドでないと次には進めないだろうからな」

「じゃあどうすれば良いんだよ。メインの登場人物とヒロインが結ばれたらこいつが死んで、それじゃ登場人物が揃わないから次に進めないんだろ? 手づまりじゃねえか」


「いや、メインの登場人物以外の裏ルートの攻略対象ってのが居て、そいつとヒロインが結ばれるとこいつは殺されない。つまり恋愛ゲームとしてグッドエンドで誰も死なない唯一のルートってことだな」

「へ~~。じゃあ、そいつだけがモテて良いってことか。で、それって誰なんだ?」


「俺だ」

「……」


 ヤンキーはしばらく魔王を見つめていたが突然声を上げた。


「ふざけてんじゃねえぞてめーー!!」


 そう言って魔王に掴みかかった。


「お前だけモテて良いってどういうことだ!!」

「そうしないと次に進めないんだから仕方がないだろ」


「ふざけんな! 俺もモテてやる! 絶対にモテてやるからな!」


 ヤンキーはそう憤慨しているけど、魔王が冷静に言い放つ。


「妹を探したいんじゃなかったのか? もし妹が次のゲームに居るんだったらお前がモテては次のゲームに行けないぞ」

「くっ」


 魔王の指摘にヤンキーはぐうの音も出ないようだ。


「ちっ! 分かったよ! でも、その代わりにお前たちも妹を探すのを手つだえよ!」

「ええ、ええもちろんよ」

 と私は笑顔で答えた。


 ゲーム世界から出れないと困るのはヤンキーも同じなんだしこっちが条件を出されるいわれもないんだけど、確かに妹さんを探したいという気持ちも分かる。まあここは大人になりましょう。


 やっぱりゲームキャラと中身が釣り合っているのは私だけよね。

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