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第41話:第4の女?

 当然この世界にも文字はある。このゲームは中世ヨーロッパ風の世界だが使われている言葉は日本語。なので文法や名詞は日本語の読みなんだけど、文字自体はこの世界独自のものというヘンテコ言語だ。


 魔王が言うにはゲームのイベントでこの世界の手紙が画像に映ることがあるのだけどゲームの設定ではこの世界は日本ではないので、その手紙の文字は当然日本語ではないのはもちろん実在する外国でもないヘンテコなウニウニした文字。


 そのためそのウニウニ文字を何とか日本語の読みに合わせて使っているという状況だ。もちろん私や魔王、そしておそらくオルハンも、この世界の住人として生活してきた記憶があるのでウニウニ文字が読めるので不自由はない。


 しかしこの世界で日本語の文字を理解できるのは現実世界から来た人間だけ。それはオルハンにも伝わるはずだ。もし外人だとしても日本語のゲームなんだから分かるでしょ。


 その後、コテンパンが登場してイベントに参加。コテンパンとオルハンを残して私たちは退場してその場を離れると、しばらくしてオルハンが走って校舎裏にやって来た。


「おい! これはどういうことだ! いきなり周りの奴らが俺を担いで……。いや、そもそもここは何なんだ!」


 彼を待ち構えていた私と魔王は、じゃあ説明を始めようかと口を開こうとした瞬間、数人の男子生徒がオルハンを追いかけるように走って来た。


 あ~~。やっぱり。

 これは仕方がないと説明するのを諦めて事態を見守ることにした。ある意味、状況を説明する手間が省けた気もする。魔王も同じ考えなのか腕を組んで見守っている。


「お前ら! 何のつもりだ!」

 というオルハンは抗議するがやはり多勢に無勢。その上、男子生徒たちはゲームの強制力に支配されリミッターの外れている。オルハンの抵抗も虚しく男子生徒たちに担がれ連れ去られていった。


「やっぱり、すぐにクララとのイベントが始まったわね」

「次の授業の後の休憩時間と書いておくべきだったかもな」


 魔王とそんな話をしていたけど、私もオルハンのことを言ってはいられない。


「でも、次の休憩時間にも別の攻略対象との……」

 と言っていると、ヴェラとカロリーネが走ってきて

「お姉さま! 授業に遅れますわよ!}

 と左右から私の腕を掴んで私を引きずっていく。その私に手を振る魔王。


 そして校舎の表側の入り口近くまで連れて来られた私の頭上から、また落ちてくる木箱。


 とても重そうで本当に当たったらただじゃすまなそうなんだけど、ゲームの強制力に影響を受けているヴェラやカロリーネが私には当たらないように計算してるらしい。

 木箱が当たらない位置で私をがっちりと抱きしめてくれている。


「すまない。また落としてしまった! と、オルハン・イルハームが言っている!」

 と、頭上からじゃなく、すぐ近くにいる男子生徒から聞こえる声。


 いつもだけど、本人と代弁する人の場所は関係ないのよね。


「確実に私の命を狙ってますわよね! と、お姉さまがおっしゃっています!」

 と、カロリーネ。


「誰に依頼されましたの!? と、お姉さまがおっしゃっています!」

 と、ヴェラ。


 そして、しばらくして数人の男子学生に担がれて降りて来るオルハン・イルハーム。


「本当にすまない。うっかりしてしまってね。と、オルハン・イルハームが言っている」

 と、モブの男子学生。


「うっかりではすみませんわ。報酬はいくらですの!? と、お姉さまがおっしゃっています」

 と、カロリーネ。


「報酬なんてとんでもない。本当にうっかりなんです。と、オルハン・イルハームが言っている」

 と、モブの男子学生。


「何かの陰謀でなければ、どうして2回も頭上から絵具箱を落とすのですの!? と、お姉さまがおっしゃっています」

 と、ヴェラ。


 そしてここで登場するクララ。


「そうです。私がアーレンベルク公爵令嬢様と何度もぶつかるのも誰かの陰謀に違いありませんわ」


(いや確かにゲームの強制イベントの所為ではあるけど、コテンパンが初めに私にぶつかった後、私にぶつかって喜んでただろ)


「そんなに皆さん、ぶつかるのですか? と、オルハン・イルハームが言っている」

「毎年、この時期にこの娘がぶつかってくるのですけど、今年は特にぶつかってくる者が多いのです。と、お姉さまがおっしゃっています」


「それは大変ですね。と、オルハン・イルハームが言っている」

 と、モブ男子学生が言いイベントが進んでいく。その様子にオルハンの顔には驚愕と恐怖が浮かんでいた。


 そしてイベントの後、校舎裏に移動した。


「それで、いったいこれはどういうことなんだ。お前ら昨日ゲームがどうとか言ってたよな」


 ゲームキャラのオルハン・イルハームは友好使節団の文化人で臨時教諭。知的なキャラのはずなんだけど、中身はヤンキーのようで口が悪い。


 魔王もこの世界では最強でイケメンだけど中身は非モテっぽいし、ゲームのキャラ設定と中身が釣り合ってるのは私だけみたいね。


「だからここはゲームの中の世界だよ。『隣の君はサイコパス』ってゲーム知ってるか?」


 確かにゲームのことを知ってるなら話は早い。まずはこの確認が重要だよね。


「いやそんなゲーム知らねえよ」

「じゃあ家族や友人とかでは? とにかく近くでそのゲームをやってたやつは?」


「そんなゲーム……いや、そういえば妹がそんな名前のやってたかも……」


 オルハンが考え込むように言うと魔王がさらに問いかける。


「ここはそのゲームの中なんだよ。多分3作目のやつのな」

「ゲームの中? 馬鹿な事いってんじゃねえぞ!」


 ヤンキーは信じてないみたいだ。まあ普通いきなりこんなことを言われても信じないようね。


 とはいえ魔王に

「じゃあこの世界が日本のどこかとでもいうのか?」

 と言われるとぐうの音も出ない。


「じゃ、じゃあここがゲームの中として、どうして俺がそのゲームの中になんて入ってるんだよ」


 当然の問いかけだけど、魔王も私もその理由はだいたい分かっている。


「そのゲームが近くにある時に事故にあったりしなかったか?」

「ゲーム? そういえば確かに事故にあって……。そ、そうだ! 妹! 妹は!?」


 オルハンが突然、焦ったような声を上げた。


「え~~と。それって妹も一緒に事故にあったってことなの?」


 今まで魔王の方が説明が上手いと思って会話を任せていたけど、つい私は問いかけてしまった。


「そうだ! 事故にあったんだった。妹も一緒に居た!」


 その言葉に思わず私と魔王は顔を見合わせた。そして魔王に耳打ちする。


「これって妹さんもこっちに来てるってこと?」

「いや、こっちに来ている奴は全員事故にあってるんだろうが、事故にあったやつが全員こっちに来るわけじゃないだろうし……」


 まあそりゃそうよね。


「でもまあ、一応詳しい状況を聞いておくか」

「そうね」


 彼にここはゲームの世界だと教えて協力をしようって持ちかけるつもりだったけど、妹さんのことが心配みたいだし、先にそっちを解決しなきゃね。


「それで『隣の君はサイコパス』というゲームが近くにある時に妹と事故にあったってことで良いんだよな? その時の事故の様子は?」


 魔王がそう問うと、オルハンも妹が心配なのか素直に答え始めた。


「妹がお年玉でゲームを買いたいって言うんで親父の運転でお袋と俺も一緒にデパートに買い物に行って、その帰りに俺と妹は車の後ろに座っていて信号で止まっていたところに後ろからズドンって衝撃があったんだ。多分、後ろの車がわき見運転か何かで突っ込んできたんだと思う」

「それで君がゲームの世界に来たのなら君の妹もこっちに来ていても不思議じゃないな」


「じゃあ妹はどこに居るんだよ!?」

「落ち着け。君ももう分かっているだろうが、君はこのゲームの登場人物になっている。俺たちもだ。君の妹が来ているなら同じようにゲームの登場人物の誰かになっているはずだ」


「登場人物ってなんだよ。そこら辺に居るやつらとは違うのか?」

「まあ少なくとも説明書や攻略本で名前が出てくるくらいの奴かな。映画だって通行人Aをちょい役で出演っていうことはあっても、登場人物とは言わないだろ?」


「なるほどな……。じゃあこのゲームの登場人物って誰なんだよ? お前たちは見分けがつくのか?」

「まあ大体な」


 そうして魔王とオルハンは登場人物について話し始めた。でも私にはオルハンの妹が誰なのか心当たりがあった。


「大丈夫。私には誰が貴方の妹かすぐに分かったわ」

「本当か!? じゃあ会わせてくれ!!」


「おい。本当に大丈夫なのか?」

 と魔王が心配そうに聞いてきたけど、私は自信満々に頷いた。

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