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第39話:隣国2P

 今回はとにかくペースが悪い。

 確かに続編だから多少のプラスアルファーが必要ってのは分かるけど、攻略対象が倍ってなんだよ。


 しかもヒロインも2人だから、さらに倍! つまり4倍だ!


 とっとと次行こうぜ次!

 というわけで友人たちと廊下を徘徊している。まあゲームの強制力でイベントなんだったら無理やりにでも動かされるんだけどさ。


 そうして歩いていると例によってスタンバイを始める友人たち。しかもまたも今回のヒロインであるクララとコテンパンが他の女生徒たちにまぎれるだけで廊下の角の先に消えない。


 またヒロインじゃなくて攻略対象が私にぶつかってくるの?

 少し捻って来たと思ったら結局はワンパターンじゃないの……。


 そう思っていたらヴェラが私の顔を両手で挟んで、ぐにっと自分の方に私の顔を向け

「姉さま。そういえば先週末にお茶会を……」

 と話しかけてくる。


(え? なに?)

 と思って立ち止まりそうになると、カロリーネが私の腕を掴んで引きずっていく。


 つまり私は横を向きながら廊下を無理やり歩かされている状態だ。しかし顔が横を向いていても身体の正面側も微かに見える。その視界の隅に歩いてくる男子生徒の影。


(このままじゃぶつかっちゃうじゃない!?)

 と思って立ち止まろうとするけどカロリーネがそれを許さない。ゲームの強制力によるリミッターが外れた腕力で私を引きずっていく。


 ぶつかる寸前、どうやら相手の男子生徒は足を止めたようだけど、それにかまわずカロリーネが私を引きずる。

(いや、これぶつかるって!)

 と足を踏ん張って耐えると、ヴェラも反対側から私の腕を掴んで引きずるのを手伝ってきた。


 そしてついに、どんっ! と男子生徒にぶつかった。


「あら? 私の歩くのを邪魔するなんてどういうおつもりですの!? と、お姉さまがおっしゃっていますわ!」

 と、カロリーネ。


(いや、完全にこっちがよそ見してただろ、逆切れかよ)


「僕は足を止めていた。ぶつかって来たのは君だろう」


(もっともな話だ)


 その正論を吐いたのは男子生徒は間違いなく攻略対象のはず。留学生で学生なのは隣国の王子2人と宰相の息子の3人だけ。王子2人はすでに会ってるから消去法で隣国の宰相の息子のリベリオ・サンティーニだね。


 茶色の短髪に青い瞳。知的な感じがこっちの宰相の息子のマルセルに近い。っていうかキャラ設定がマルセルまんまだろ。背も同じくらいだし。


 あれか宰相の息子って知的な感じしか思いつかないか。そりゃそうだろう。雑魚キャラなら宰相の息子で無能なボンボンでも良いかもしれないけど、攻略対象なら馬鹿にするわけにもいかないし。


 きっと企画会議でもマルセルと被るじゃないかとか揉めたに違いない。敬意を込めて2P野郎と名付けよう。


「足を止めたですって? ぶつかると分かって足を止めたなら、避けることも出来たはずですわ! 避けられるのに避けないのはわざとと言いません事!? と、お姉さまがおっしゃっているわ!」


(それもそうなのかな?)


「君たちは3人が横に並んでいた。僕がどちらかに避けていたとしても、そのどちらかとぶつかっていたはずだ。足を止める以外に何が出来る」


(たしかに。でも、なんか可愛げがないな)


 松ぼっくりぶつけたろ。


 逆ギレした私が常備している松ぼっくりを投擲すると、ぽこっと2P野郎に見事ぶつかったけど相変わらずシカトされる。


 う~~ん。ぶつけるのに邪魔が入らないのは良いんだけど、シカトされるのはちょっと虚しいものがあるな。

 仕方がない数でカバーするか。


 えい! えい! えい! ぽこっぽこっぽこっ。


「だったら後ろに下がれば良いのではありませんこと? と、お姉さまがおっしゃっています」


(いや~~。それはさすがにどうだろう。それじゃ私が進むだけ後退し続けなきゃ行けないし)


 それはそうと。えい! えい! えい! ぽこっぽこっぽこっ。


「な、にをば、かなこと、を」


 2P野郎が松ぼっくりに当たりながらも役目を果たしている。

 お、結構耐えるな。


 そして

「アーレンベルク公爵令嬢様 貴女もぶつかる者の気持ちが分かったのではないですか?」

 とコテンパンが参入してきた。


(ぶつかる者の気持ちってなんだよ)


「おや君は?」

「私は2年連続学年主席のエルナ・バルリングと申します」


 こっちにかまわず2P野郎とコテンパンがイベントを進め、

「だ、か、ら、お前にはそれ以外ないのかよ……」

 と、後ろからはモブたちにまぎれたクララのつぶやきが聞こえる。


「2人でお話するのは結構ですけど、私に謝罪してからにして下さいません事? と、お姉さまがおっしゃっていますわ」

 とヴェラ。


「僕が謝罪する言われはない。謝罪するなら君の方だろう」


 2P野郎のくせに冷静に反論してくるな。まあもっともなんだけどさ。


「そうです。謝るべき時には謝るべきです!」


 コテンパンもそう言って2P野郎の肩を持ち始めた。


(くそ。やっぱりコテンパンは真面目だな)


「ふん! もう良いわ。貴方も次からは気を付けることね。と、お姉さまがおっしゃっています」

 と、カロリーネ。


 随分、あっさりと引き下がるな。まああくまで攻略対象とヒロインとの出会いのきっかけのイベントだから、アーレンベルク公爵令嬢である私との話を広げても仕方ないしね。


(とはいえ、なんかムカついてきたな)


 松ぼっくりの連続投擲も良いけど、ゲームの強制力に見逃される分ダメージが少ないのが難点だな。


(そうだ!!)


 私は2P野郎の後ろに回り込み、ほっぺたをムニと引っ張った。黒マメシバ王子の時はこれもセーフだったはずだ。


「ふぃふぃほふぉうほほ、ふぃふぃはぁふぉふふぁふぉう」(気を付けるのは、君の方だろう)


(ぷぷっ)


「あ、貴方ももう良いではありませんか。さあ、行きましょう」


 コテンパンがそう言って2P野郎の腕を引っ張り連れて行こうとする。真面目なコテンパンなら2P野郎の味方をして私に謝らせようするのかと思ったけど。


「ふぁ~ふぇんふぇふふふぁふふぁふふぇふぃひょふふぁ……ふぃふぃふぉふぁふぁふぉふふぉふぃっふぇふぃふ。ふぉふふぉふぁふぁ~ふふぉうふふぉふふぁふぁふぉふぉうふふぉふふぇいふぃふぇふぃふぉ・ふぁんふぃ~ふぃ。ふぉいふぇふぁいふぇふぁふぁふぁっふぁふぁ、ふふぁんふぃんふぉひふぁひふぉふぃふぇふぉふふぁ……」

(アーレンベルク公爵令嬢か……君の名は僕も知っている。僕はサザーン王国からの留学生リベリオ・サンティーニ。良い出会いではなかったが、無関心よりはマシとしておくか……)


(ぷぷっ。何言ってるか分かんないや。あ、でも、もしかしたら重要な台詞を言ってたりするのかな? 前回と違って魔王も攻略対象の情報を持ってないみたいだし、ちゃんと聞いておいた方が良かったかな? ……まあいいや)


 とりあえず2P野郎のコテンパンイベントは、これで終了だね。

 まあすぐにクラライベントが始まるんだろうけどさ。


 と思ってコテンパンと再合流して歩いていると、やっぱりすぐに、またみんながスタンバる。


「お姉さま、今週末の私の屋敷でお茶会を……」

 とカロリーネが話しかけながら、またも私の顔を掴んで自分の方に向けてくる。


 やっぱり2P野郎とのイベントはヒロインの両方とも私の方からぶつかるのね。


 視界の隅に人影が立ち止まるのが見えたけど、はいはい。と、ぽふっとぶつかる。


「また貴方ですの!? と、お姉さまがおっしゃっています!」

 とカロリーネが見事に逆ギレをかます。


「それは僕の台詞だろう……」

 と2P野郎。


「貴方も男子ならば女性に譲るのは当然と思いませんの!? と、お姉さまがおっしゃっています!」

 とヴェラ。


「なるほど。君の言うことももっともだ。これは失礼した」

 と2P野郎。


(え? 謝るの?)

 予想外の2P野郎の言葉に私はびっくりした。


「しかし、君にも全くの非がないわけでもないだろう。ここはお互い謝罪し収めようではないか」


 さすが隣国の優等生ポジションの男。冷静にアーレンベルク公爵令嬢と争うのは損だと考えて丸く収めてきたな。でも……。


「あら? どうして私が謝罪などしないと行けませんの!? と、お姉さまがおっしゃっています!」

 とカロリーネ。だよね。元の価値観のままのアーレンベルク公爵令嬢ならそう言うよね。


「それは困ったな……」

 と2P野郎がそれでも冷静を保つ。


「まあアーレンベルク公爵令嬢様ともあろう方が、おぶつかりになるなんて、どうなされましたの?」

 とここにきてクララが参戦。


(おつぶかりってなんだよ)


「貴方は確か、留学生のリベリオ・サンティーニ様。お怪我はありませんか?」

 とクララはさらに攻略対象にも声をかける。


「いや大丈夫だ。それよりもぶつかったのはお互い様だから謝罪しあって水に流そうと提案しているのだが、アーレンベルク公爵令嬢が承知してくれなくてね」

「まあそれは良い考えではありませんか。私も常々、アーレンベルク公爵令嬢様とぶつかった時にはそうしたいと思っておりましたの」


(いや、お前がぶつかってくるときは、疑いの余地なく100%お前が原因だろ)


「はははっ。アーレンベルク公爵令嬢。君はそんなにも誰かとぶつかっているのですか?」

 知的で冷静風だった2P野郎が無邪気な笑い声をあげた。


 これはあれか? ギャップ萌えとかいうのを狙っているのか? 確かにちょっと可愛いかもと思ってしまったが……。

 しかし!


「濡れ衣ですわ! 私がぶつかっているのではありません! いつもこの娘の方からぶつかってくるのです! と、お姉さまがおっしゃっていますわ!!」

 とヴェラが絶叫した。


(だよね~~)


「この娘は何かに憑りつかれているのです! と、お姉さまがおっしゃっています!!」

 とカロリーネ。


(いや、確かにゲームの強制力に憑りつかれているといえばそうなんだけど、なんて台詞だ)


「そんな酷い! いつもなぜか分からないけどぶつかっているだけです!」


(いやそれの方が怖いだろ。自主的にお祓いに行けよ)


「そういえば……ユスフ・ラドワーン殿下も、なぜだか分からないが人とぶつかると言っていたな……。これは調べる必要があるかも知れませんね」


(おい。真面目に検討するなよ。お前らどこに行く気だ)


 確かにこれがゲームイベントの強制力と知らなければ、どうしてこんなにぶつかり続けるのか不思議に思うだろうけど、これもイベントの台詞なんだよね? なんだか変なノリね。


「もう良いですわ。兎に角! 2人とも! 二度と私にぶつからないで欲しいものですわ! と、お姉様がおっしゃっています!」

 と、ヴェラが言い放ち私の腕を掴むと、2P野郎とクララに背を向けて私を引きずり歩き出した。カロリーネも続く。


 なんだか話が中途半端になってるけど、イベント的にはヒロインのクララと2P野郎との出会いのきっかけなだけだから、この後クララと2P野郎と会話するんだろうしね。


 その後、イベントが終了したのでコテンパンも合流しそのまま中庭へと向かった。2P野郎と一緒のクララはもうちょっとかかるようだ。


「さっきのリベリオ・サンティーニという方について、どう思います?」

 と、情報収集もかねて黒マメシバの時と同じように友人たちに聞いてみた。


 コテンパンにとっては攻略対象だし、ヴェラやカロリーネの意見もゲーム内での彼の評判の参考になるかも知れない。


「確かにお姉さまの方からぶつかりましたけど……。殿方なのでしたら、もう少し言いようが……」

 とカロリーネ。


「そんなことはないわ。足を止めるくらいなら避けられたはずよ! きっと傲慢な人なのですわ」

 とヴェラ。


「ですけど、やはりぶつかった方から謝罪した方が……。もちろん、謝罪された方はそれで許して差し上げるべきですけれども」

 と、コテンパン。


 するとそこにクララも戻って来た。


「あら? 皆さん、何のお話なのですか?」

「さっきの隣国の宰相の息子について、みんなでお話していたのですわ」


「あ。そうなのですね」

「貴女も、何か感じたことはありましたの?」


 するとクララが少し考えて口を開いた。


「お姉さま。あの後リベリオ様とお話したのですけど、やはり、私とお姉さまもぶつかったことについてはお互い謝罪しあった方が良いと思いますの」


 なんでだよ。

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