第35話:新ヒロインはだれ?
新学期が始まった。
そうなると問題になるのはイベントだ。
学園を友人たち。ヴェラとカロリーネ。クララとコテンパンの5人で歩いているけど、いつイベントが始まるかと気が気でない。
周囲に気を配りつつも友人たちとの会話も楽しむ。
「そういえばカミル殿下は留年したのかしら?」
1作目と同じ登場人物で3作目をやるなら去年3年生だったカミルが出演するには留年しているはずだ。ご愁傷様!
「え? カミル殿下は卒業なされましたわ」
と、カロリーネが答えてくれた。
「そうなんですの?」
「はい。ですけど将来は学園の教員になるとかで、今後は教員見習いとして学園に登校するそうですわ」
ちっ! そんな逃げ道があったか。しかし次期国王を狙う男が教員になって良いのか?
まあ今の国王がすぐ退位するわけじゃないから、それまで経験を積むとかなんでしょうね。
そんなことを考えてくると、後ろの方を歩いていたコテンパンが、
「あ、ちょっと失礼します」
と、小走りで私を追い抜いていった。そして廊下の角を曲がって姿が見えなくなる。
急に走り出すなんて、お手洗いを我慢してたのかしら?
そう思って歩いていると、コテンパンが消えた廊下の角に差し掛かった。
すると突然現れるコテンパン!
「お姉さま! 危ない!」
と、両側から私の腕をがっしりと掴むヴェラとカロリーネ。
あ、なんか懐かしいわ……。
と、感慨にふけっているとコテンパンの体当たり。
「ぐぇっ!」
「まあ、私ったら……」
ゆ、油断した。まさか……コテンパンが体当たりしてくるとは……。
でも、これって……。
「バルリング伯爵令嬢! この私にぶつかるなんてどういうおつもり! と、お姉さまがおっしゃっているわよ!」
と、ヴェラ。
「2年連続で学年主席だったからって調子に乗っているのではなくて! と、お姉さまがおしゃってますわ!」
と、カロリーネ。
や、やっぱり……。次のヒロインはコテンパン!?
クララは? そういえばクララはどこ?
今はイベントが発生したので、イベントの”絵”として、私の左右に居るのはヴェラとカロリーネのみ。クララは、どこに行ったの?
そう思ってイベントは進むのに任せて周囲を見渡すと……居た!
なんだか他の生徒たちと一緒に心配そうに事態を見守っている。これはもしかして……単なるモブ!?
その後、私にぶつかって来たコテンパンは、私の台詞を代弁しているヴェラとカロリーネからの罵倒が終わるまで廊下に倒れたままだったけど、私たちが立ち去ると同時に起き上がり廊下を反対方向に歩いて行った。
ただ、その様子がまだ”イベント中”のようで芝居がかっていた。
それってつまり、コテンパン中心にイベントが起こっているってことよね? じゃあ間違いなく今回のヒロインはコテンパン?
その後、お昼休みになってもコテンパンは姿を現さなかった。いつもならば、みんなで集まってお昼を頂くのを習慣にしているのにである。
そしてみんなでいつも通りランチボックスを頂いている間にも、周囲から聞こえてくるコテンパンの話題。
「バルリング伯爵令嬢様。今年も学年主席でしたそうですわ」
「それどころか、中等部のころからずっと学年主席だとか」
「憧れてしまいわすわね」
「新入生などは、バルリング伯爵令嬢様を慕うファンクラブまで出来ているそうですわよ」
う~~ん。クララに魔法の模擬戦で負けてパシリになった印象が強いからへっぽこのイメージがあるけど、実際かなりの優等生なのよね。しかも今回のヒロインということでゲームの補正もかかっているのか、本当に学園中がコテンパンの話題で持ちきり見たい。
しかしそうなるとクララはどうなるのかな……。
と、思ってクララに意識を向けると、そのクララはぶつぶつと小さく呟いている。
何を呟いているの? と耳を澄ます。
「……あの女……私のパシリのくせに……」
え?
「あ、あのクララ?」
つい、クララに問いかけた。
「え? お姉さま。なんですの?」
「い、いえ。今、何を呟いてたのかなって……」
「いえ。エルナさんって凄いなって。2年連続学年主席ですし、実は私もずっとエレナさんには憧れていましたの」
そう言ってにっこり笑うクララ。
こえ~~。こいつこえ~~。
で、でも私も、今は彼女たちの友人にしてお姉さんポジション。この状況は見過ごせないわ。
ただそうだとしてもクララと2人きりで話す必要があるわね。
そう思ってヴェラとカロリーネ、クララと2人で話があると伝えると、彼女たちも事情を察しているのかすんなりと席を外してくれた。
「クララ。無理をすることはないのよ。私は貴女の本当の気持ちを聞きたいの」
「いえ。そんな……。無理だなんて……」
「私たちの間で、自分を偽る必要なんてないのよ?」
そういうと、クララはぽろぽろと涙を流し始めた。
「お姉さま……。私、寂しくて……」
「クララ……」
そうよね。ずっと仲良くしていた同い年の友人がちやほやされ始めたら寂しくも思うのかもね……。
「お姉さまにぶつかるのは私の役目だったのに!!」
え? そっち?
っていうか。役目だったの?
「え。でも、貴女もわざとぶつかってきていたのではないのですよね?」
「それはそうですけど! それとこれは話が別です!!」
そう言いながらもクララは涙を流している。
「だって。この学園でお姉さまにつぶかるのは私一人だけで、お姉さまとは運命を感じていたのに!!」
やな運命だな。
しかし、何とか宥めないと。
「クララよく聞いて。貴女とは去年、さんざんぶつかったじゃない。だから今年はエレナに譲ってあげなさい」
「お、お姉さま……」
「例え今年はエレナがぶつかるとしても、去年、貴女とぶつかった思い出は無くならないわ」
ぶつかった思い出ってなんだよ。
自分でも、何言ってんだかわかんなくなってきたわ。
「は。はい……。お姉さまにぶつかった思い出、忘れません!!」
うそ! 通った。言ってみるもんだ。
何とかクララを宥めた私は、2人で校舎に戻っていたった。すると廊下にヴェラとカロリーネの姿があった。
「2人とも待っていてくれましたの? ありがと……」
と言っている間にクララが
「すみません。ちょっと用事が」
と、私を置いて廊下をかけていく。
あれ?
と思っている間に、ヴェラとカロリーネが近づいてきて、両脇から私の腕をがっちり掴む。
「え? なに?」
「お姉さま。早く教室に戻らないと授業に遅れてしまいますわよ」
「いや、授業が始まるには、まだ時間が……」
私は抗議したが、ヴェラとカロリーネが私を引きずるように廊下を進んでいく。
こ、これは。まさか!?
必死に抵抗するが2人がかりには抵抗できず、ずるずると廊下を引きずられていく。そして廊下の角に差し掛かった。
全速力で飛び出てくるクララ。
何となく分かってたけど! ちょっとこれは危険じゃない!?
しかし、私にぶつかる寸前でクララが足をもつれさせて倒れこみ、私にはぽこっとぶつかっただけだった。
これって、ゲームの強制力が働くほどぶつかったら危険な勢いだったってことよね?
危なかった……。
「貴女! 去年もぶつかってきていましたわよね。どういうつもりなの!? と、お姉さまがおっしゃっているわ!」
とカロリーネ。
「去年もこの時期でしたわよね! 行事なの!? と、お姉さまが言っているわ!」
とヴェラ。
それに対しクララが笑顔で元気よく答える。
「ま、まさか。そんなことありません!!」
台詞と表情と声量があってない。
こ、これはまさか。ダブルヒロイン?
もしかして、今年は2人でぶつかってくるの!?
かんべんして~~!!
励みになりますので、
評価、ご感想、お気に入り登録をお願いします。




