第34話:インターバルタイム
せっかく奇麗に決まったと思ったら、なんと続くということなのだが……。
あの第一王子のカミルが訪問してきた後、さすがに頭が混乱して対応できない私は急病を装ってカミルには帰って貰った。しかしその後、動きがない。
「なんだか特にイベントとか起こらないわね」
いつものように近況報告に来ていた魔王に問いかけた。
「多分なんだが……。まだ、ゲームが始まってないな。これは」
「始まってないって?」
「俺が初めてお前のところに会いに行ったのは、学園の新学期が始まったころだったろ?」
「ええ。そうね……。っていうと、次のゲームっていうのも新学期が始まるころからってこと?」
「そうなんだと思う。それに新学期前からゲームが始まっていたとしても、お前に関係があるイベントは学園限定だろうからやっぱり新学期になってからだ」
「でもカミルは私に会いに来たわよ?」
「あれはイベントじゃなくて、ゲームの設定的にお前を口説く必要があるからだろう。設定を成立させるための行動にゲーム期間は関係ないからな」
ちぃ! 結局モテてるんじゃなくてゲームの設定が理由か。
でも確かに今は魔族との戦いで一時中断していた学園も再開して、その授業もすべて終わって冬休み中。こんな中途半端な時期にゲームは始まらないか。
じゃあイベントが始まるのは新学期になってからね。私は去年2年生だったから今年は3年……。
そこまで考えたとき不意に恐ろしい可能性に気づいた。
まさか……。そんなことがある? でも可能性はある。
「1作目の登場人物が好評だから3作目を1作目の登場人物で作ったんじゃないか。って言ってたわよね?」
「ああそうだが。それがどうかしたか?」
「私たちでもう一度やるとして、学年は……。学年はどうなの?」
「ガクネン?」
魔王は何のことだろうと首を傾げている。
「学年よ! 1年生、2年生の学年!」
「ああそれか。どうなんだろうな? それがどうかしたのか?」
「どうかしたのかじゃないわよ! もし同じ登場人物で同じ学年でやるんだったら、私が留年するってことでしょ!!」
私はそう叫びながら魔王の襟首を締め上げた。
「ああそうなるか……。しかしそれだと優等生のはずのマルセルまで留年することになるが……」
「そんな奴、知るか!!」
問題は私が留年するかどうかなのよ!!
「知るかって、お前……。仮にも主要登場人物を……」
「知らん! そんな奴は知らん!!」
襟首を掴んでいた魔王を放しテーブルに手を突いた。
「私が……。私が留年するかどうかの方が重要でしょ!!」
「あ、はい。そうですね」
魔王もやっと事の重大さに気づいたようで真摯に頷いている。
なにか……。何か手はないの? そ、そうだわ!
「次の新入生は0年生ということにして、次の2年生を1年生、3年生を2年生にすれば良いわ!!」
そうすればゲームのキャラ紹介で私が2年生となっていても進級できていることになるわ。
「おいおい。天才かよ」
私の天才的発想に魔王も称賛するしかない。
「早速、学園長に頼みに行ってくるわ!」
執事に言いつけ馬車を用意させた。目指すは学園長の屋敷だ。
馬車に乗り込、出発! というところで見知らぬ男が馬車に乗り込んできた。
「え? 貴方誰? あ、ああ魔王か」
一瞬分からなかったのは、以前に収穫祭で人間バージョンだった時は黒髪だったが今は茶髪だったからだ。
「え? 貴方も来るの?」
「お前1人だと危なっかしいからな」
魔王はそう言って馬車の椅子にふんぞり返った。
「危なっかしいって何よ。それにその髪の色は何?」
「収穫祭で俺の姿を見たやつが居ると面倒だからな。別人に変装したんだ。この程度、魔法でどうとでもなる」
「別人って髪の色が違うだけでしょ? そんなのすぐにばれるでしょ」
「忘れたのか? ここはゲームの世界だぞ?」
「だから?」
「アニメやゲームで髪の色が違ったら別人だろ?」
確かに!!
さっき私も一瞬知らない男かと思ったけど、やはりゲーム開始までアーデルハイド・アーレンベルクとして暮らしていた影響ね。ずっとこの世界の価値観で生きている人たちなら髪の色を変えるだけで十分なのね。
学園長の屋敷に到着した私は、その足で学園長に面会を申し出た。
「しばらくお待ちください」
魔族との戦争が終わり影響力が低下したとはいえ、いまだアーレンベルク公爵家の威光は損なわれない。一時おとなしくなるというのは王国の共通認識だ、将来はどうなるか分からない。不必要にアーレンベルク公爵家の機嫌を損ねることはないのだ。
「これはアーデルハイド嬢。今日は、どのような要件ですかな? とても重要な話ということですが」
学園長はすらりとした銀髪の紳士で、いわゆるカイゼル髭を奇麗に整えている。いかにも教育者! という風貌だ。
「はい。来年度の新学期から新入生は0年生にして次の2年生を1年生に、次の3年生を2年生にして頂きたいのです」
学園長の屋敷を追い出された私は、馬車でアーレンベルク公爵家の屋敷に引き返していた。
「な、なぜなの!!」
「そりゃまあ……、あんな自分本位な提案、聞いてくれないだろ」
「私だけじゃないわよ! マルセルや他の登場人物だって留年しちゃうのよ!!」
「いやお前さっき、マルセルなんか知らんって……」
「やっぱり”駄々をこねる”べきだったかしら……」
「やめとけ。その技が使えるのは割と幸せになるのが確定してからだ」
もう! ああ言えばこう言う! 論理的かよ!!
「まあお前があの場で駄々をこね始めなかっただけ良かったよ。もしやりそうだったら止めようと思ってたからな」
なんだと~~。もしかしてこいつ、そのためについて着てたの?
「それによく考えたらお前の案で1年ずつずらすとしても、今3年のカミルはどうするんだよ。卒業しちまうだろ」
「カミルだけ留年して、今の3年が留年した場合は新学期からも3年って呼ぶことにすれば良いじゃない!!」
私の天才的提案に魔王は開いた口が塞がないようだ。
しかしそれも万事休す!
この世界のことだから設定でもう一度2年生をするとなれば、留年するような問題を起こしたということにされるに決まっている。
も、もう観念して留年するしかないのかしら……。
そう思っていたが新学期を明日に迎える日になっても学園からは留年になるという連絡は来なかった。
どうやら3作目は同じ登場人物でするとしても、ちゃんと進級しているようだ。
まったく! 人騒がせね!!
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