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第18話:漆黒の魔王

「まあお前たちは何時間もかけて迷路を攻略したつもりだろうが、この屋敷では時間すら俺には自由自在。待ったってほども待ってはいないがな」


 玉座に足を組んで座っていた魔王はそう言うとわざわざ組んでいた足を組みなおした。


「そんなことはどうでも良いわ! 早く私を帰しなさい! とアーレンベルク公爵令嬢が言っている」


 わ、びっくりした。

 久しぶりで忘れてたわ。


 また誰が言っているのか分からないけど、やっぱり魔王の手下の魔族なんでしょうね。


 でもさっきまでは私の台詞を代弁されたりしなかったのにね。

 もしかしてゲームではナレーションで、公爵令嬢が愚痴を言っているとかで済まされてたのかな。


「どうして私をこんなところまで連れてきたんですか!」


 まあもっともな疑問よね。


「前にも言っただろ? お前の魔法が何か波動が違うようだからな。連れ帰って調べてみたいと思っていた」

「私の魔法の波動?」


「そうだ。魔法は波動によって伝わる。そして古文書にも、偶然なのか相手の波動を打ち消す波動の魔法を放つ者の記録がある」

「それが私だというのですか?」


「ああ、しかもその打ち消す相手が、よりにもよって俺か、それどころか魔族全員かって話だ」

「でも、そんなことを言われても……」


「まあ、それも前回のことだけじゃ確証が持てなかったからな。もう一度調べたかった」

「それで私をさらったのですか?」


「魔法をかけた迷路でお前の力を試したかったんだが、まさかお前について来た虫けらどもが手助けをして迷路を攻略しちまうとはな。余計なことをしてくれたものだ」

「虫けらだなんて……みんなを馬鹿にしないで下さい!!」


 だけど魔王は小娘が怒ったところで動じるはずもない。余裕の笑みを浮かべている。


「で、もう面倒だからお前の力は俺が直接試してやろうと思ってな。ここに連れてきたんだ」

「それでは迷路を攻略していたのは……」


「まったく無駄だったわけだな。俺がその気になればずっと続いていたわけだしな」

「そんな……。せっかく皆さんが……」


 自分を助けてくれて、穴に落ちていったマルセルやシンシチ、デニスの姿を思い出したのかクララの顔の怒りの表情が浮かぶ。


「……許せない」

「許せなかったら、どうだというんだ?」


 魔王はそう言うとに悪そうな笑みを浮かべにやにやしている

 うわ~~。魔王むっちゃ悪役だな。


「絶対に許せません!!」


 そう叫びクララの身体を光の球体が包む。その光球はどんどん大きくなり遂には部屋全体が光に包まれた。部屋の中からは見えないが、おそらくはさらに大きくなり屋敷全体を超える大きさになっているだろう。


 その光の眩しさに魔王は目をしかめる。そして光が消えるとこの屋敷の真の姿が現れた。


 今いる部屋は確かに広いは広いが、初めに見えたほどの広さではなく壁なども少し古びれている。どうやら魔法の力で偽りの姿が見えていたようだ。


「ちっ」

 虚像が見破られた魔王が舌打ちをする。


 へ~~。本当はこんなおんぼろ屋敷だったんだ。

 この世界って魔法があるんだけど、人間たちが使う魔法って戦闘に使うようなのばかりなのよね。

 だから日常生活じゃ魔法ってあんまり意識しなくて生活してるんだけど、魔王は色々な魔法が使えるのね。


 そうこうしているとドタドタという足音が聞こえ、その音がどんどんと大きくなっていく。


「クララ無事か!!」

 と部屋に入って来たのはカミル。そして次にライマーも

「クララ嬢。ご無事ですか!」

 と入って来た。


 魔法による偽りの迷路が消滅すれば、声のする方に駆けつければ、すぐにたどり着くような広さだったってことね。


 魔王が言うには、迷路イベントで出番がなかった攻略対象はこのイベントで活躍するらしいわ。

 つまりカミルとライマーね。

 シナリオライターの気づかいよ。


「虫けらどもが」

 と魔王が吐き捨てた。


「魔王! お前の悪行もここまでだ!」


 カミルが魔王を指差し叫んだ。

 いや言うほどまだ悪行してないよね。クララを連れ去ろうとしたり、クララを誘拐したりしてるだけだよね。


「身の程をわきまえぬ虫けらは駆除が……」


 魔王は台詞の途中で突然、玉座に座った状態から飛び跳ねた。そして今まで魔王の頭があった空間をライマーの蹴りが通過した。

 魔王がカミルに気を取られている間に、ライマーが後ろから忍び寄っていたようだ。


「カサカサと後ろから忍び寄るとは虫けらにはお似合いだな」


 魔王はそう言いながらクララの近くに着地した。

 仲間が侮辱されたことに激高して力を発揮したクララだけど、それを続けられるような気力はない。

 もはや魔王に怯えて身をすくませることしかできない。


「貴様。クララから離れろ!」


 カミルが魔王に一歩近づくけど、クララへ危害を加えられるのを恐れてそれ以上は踏み込めない。


 しかしそうこうしている間にまた魔王の背後に忍び寄るライマー。でも今度は魔王に気づかれていた。


「同じ手が何度も通じるか」


 魔王の背後で蹴りのモーションに入っていたライマーに向けて、魔王が振り向きながら蹴りを放つ。だけど自分が狙われていると想定した魔王は目測をあやまり、その蹴りは宙を切った。


 ライマーの蹴りは魔王を狙ったものではなく、なんとクララを狙ったものだったのだ。蹴りというよりクララのお尻に足の裏をそえてから、

「ごめんね」

 とライマーが言うと宙に押し出すように足を振り切る。


「きゃあっ」

 と叫んで宙に舞ったクララは私の近くにまで飛ばされ尻餅をついた。


「痛った~~」

 とクララはお尻をさすっているけど、無事そうだ。

 その時にはライマーはすでにバックステップで魔王と距離を取っていた。


「ライマー良くやった! これで心置きなく戦える」


 カミルが吠え魔法を撃つべく構えた。

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