表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

14/52

第14話:追跡魔王屋敷!!

「魔王! 貴様、クララとアーレンベルク公爵令嬢をどうするつもりだ!」

「ん? アーレンベルク? ああそういえばもう1人いたな」


 むっちゃ失礼な会話を交わしているのは軍神アレスこと第一王子のカミルと魔王。


 なんと私とヒロインのクララは、馬車ごと魔王の魔力で宙に浮いて連れ去られているのだ。


 どうしてこういう状況になったのかを説明するには、時を放課後にさかのぼる必要がある。


 この日は午前中は晴れ渡っていたのだけど午後から雨が降って来た。なので傘を持ってきていない学生が多く、校舎の出口では多くの学生が足止めされていたのだ。


 私や王都に屋敷を持つ有力貴族出身の生徒は馬車が迎えに来るので大丈夫なんだけど、問題は寄宿舎に住んでいる生徒たちね。


「午前中は晴れていたので傘は持ってきていませんの」

「私もですわ。困りましたわね」


 そこにやって来たのはクララとコテンパンことエルナ・バルリング伯爵令嬢。ちなみにクララは寄宿舎でコテンパンは屋敷からの通いね。


「雨ですね……。傘は部屋に置いたままにしてきてしまいましたし」

「そうですわね……」


 コテンパンはクララの言葉に同調しながらも口調が慎重だ。

 この雨の中、部屋の傘を取ってきて欲しいと言われないのか警戒しているようだ。


 結局、模擬戦に負けた方が相手の言うことを聞くってことになってコテンパンが負けたままなのよね。


「そうですわ。もしよかったらエルナ様のお家の馬車で寄宿舎まで送ってくださいませんか?」

「勿論ですわ!」


 さすがに、この雨の中に傘を取ってこさせるほど鬼畜じゃなかったか。コテンパンもこれ幸いにと即座に受け入れている。


 とはいえ、このままじゃすまないのを私は知っている。今日はこの後にイベントがあるのだ。


 私は2人の傍の近くに居たんだけど、ゲームの強制力が働いてるのか2人は私の存在に気づいていないようだった。そして突然、突っ立てたはずのクララが

「きゃっ!」

 と言って足を滑らせて盛大に転んだ。しかも私の方に倒れこんできた。


 私も

「きゃっ!」

 と叫んで一緒に転んでしまった。しかも雨なので当然地面はぬかるんでいる。


 私とクララは一瞬で泥だらけになってしまったのだ。


「貴女! 私に恨みでもあるの!? とお姉さまがおっしゃっています!」

 とクララを罵倒するコテンパン。


「申し訳ありません。突然、脚が滑ってしまって」

 と言い訳をするクララ。


「私の服が泥だらけではありませんか。どうしてくれるの!? とお姉さまがおっしゃっています!」


 そう言って私になり替わりクララを攻撃するコテンパン。台詞をいうコテンパンの表情が嬉しそうなのは気のせいだろうか。


「申し訳ありません……。でしたら私がアーレンベルク公爵令嬢の服を洗濯させて頂きます……」

「貴女が~~!? とお姉さまがおっしゃっています!」

 コテンパンが嬉々としてクララを攻撃する。いや私そんな口調じゃないだろ。


「は、はい。一生懸命洗濯させて頂きます……」

「そこまで言うならやって貰おうかしら。 とお姉さまがおっしゃっています!」


 そうして私の屋敷の馬車に私が乗り込んで、次にクララが乗って来た。そしてコテンパンが続いたが、いやいや待て待て。どうしてお前まで乗ってくる。


 周りのモブたちに取り押さえられたコテンパンを残し、私とクララの2人を乗せた馬車はアーレンベルク公爵家の屋敷へと向かったのだ。


 だけど屋敷に向かう馬車に向かって突然落とされる雷撃。しかも馬車の馬と荷台を繋ぐところ(私がそんな物の正式名称知ってるわけないでしょ。けっ!)をピンポイントで破壊する正確さ。


 驚いた馬は走って逃げて行き、残されたのは御者と荷台にいる私とクララの3人。


「娘。確かクララとか言ったな。ちょっと話がある。俺と来て貰おうか」


 魔王は魔法の力なのか馬車に乗っていて、顔が見えないはずの私たちにそう話しかけてきた。馬車の中に居る私たちの耳にもその声がはっきりと聞こえる。


 魔王が右手の手の平を上向きにして指をクイッと曲げると馬車が宙に浮いた。すると御者も魔王が魔力で荷台を持ち上げるときに、前の方を傾けたせいで地面に落ちて置いてきぼり。


 さすが乙女ゲーム。動物も人も必要以上に亡くなったりしない親切設計。その割に私は殺されるけどね。


 そして私たちの馬車のすぐ後ろにカミルが乗る馬車が居て、私たちが連れ去られるのを目撃して馬車から降りて魔王に怒鳴っている。というのが冒頭の状況ね。


 さらに他の攻略対象たちも集結。攻略対象たちはみんな王都に屋敷がある裕福な家の子息。馬車での登下校なので学園に繋がる道で騒動が起こっていたら、そりゃみんな集まるよね。

 生徒じゃないシンシチまで居るのはストーリーの都合上よ。何か理由があったと思うけど忘れたわ。


 そして口々に私たちに向かって叫ぶ。


「クララをどうするつもりだ!」

「クララに何かあったら許さないぞ!」


「クララ大丈夫か!」

「クララ! 今助けるからな!」


「クララ! しっかり掴まっていろ!」


 おい。1人くらい私に気を使えや。


 しかし魔王は攻略対象たちのことを全く気にもかけず、魔法で馬車を浮かせたまま立ち去ろうとする。


「た、助けて!!」


 クララが助けを呼んでいる。


 そう言えば私も助けてって言った方が良いって魔王が言ってたな。確かナレーションで「クララとアーレンベルク公爵令嬢が助けを呼んでいる」ってなってるだけだから、台詞はなんでも良いんだって。


「た~~す~~け~~て~~」


 よし! これでノルマはクリアーよ。


 そうして私とクララを乗せた馬車は、魔王の魔力でふよふよと浮かびながらある場所に向かって進んでいく。


 するとシンシチが私たちが向かう方角を指差し叫んだ。


「あの方角は、魔王が人間界での拠点としていると噂がある屋敷がある方角だ!」


 いや、そんな噂がある屋敷があるんだったら調査するなり乗り込むなりしとこうよ。


 そして馬車が屋敷の上空までくると地面がぱっくり開き馬車は吸い込まれるように収容され、馬車が降り立つと開いていた天井が閉まった。


 壁には点々と松明が燃やされ、そこそこ明るいけど、かなり大きな部屋で奥の方は暗くて見えない。


「ここはどこなのでしょうか……」


 クララが不安そうにつぶやいた。


「どこかですって! 貴女がどうかしなさいよ! とアーレンベルク公爵令嬢が言っている」


 え? 誰?

 と思って周囲を見渡したけど、声の主が分からない。

 魔王が手下の魔族を監視につけているらしいから、その魔族なんでしょうけどまったく姿が見えないわね。


 とはいえ私の台詞が代弁されるということは、すでにイベントが始まっているようでクララの台詞が続く。


「ここに居てもしょうがありません。まずこの部屋から出ましょう」


 クララはそう言うと部屋の奥へと進み始めた。すると壁にたどり着いたのだけど、そこには5つの扉が並んでいた。


 実はこれってキャラクター選択なのよね。


 選んだ扉によってこの後に合流する攻略対象は決まるのよ。確か右からカミル、デニス、ライマー、マルセル、シンシチだったわね。


 それで誰を選んだらよいかも魔王に事前に聞いていた。このイベントを起こした攻略対象の好感度が上がるからバランスを取るために現在一番好感度の低い攻略対象を選ぶのよね。


 それで誰にすればだけど……。忘れたわ。


 よし! 仕方がない。


「ねえクララ。カミル殿下とデニス殿下とライマー様とマルセル様とシンシチ先生の中で、誰が一番嫌いかしら?」

「え!? そ、そんな。嫌いな人なんていませんわ。それに今はそれどころではないのではないですか?」


「勿論そうだけど、気を張ってばかりでは疲れてしまうわ。気分転換の他愛もない雑談ですわよ。さあ、誰が嫌いなの?」

「で、でしたら……。強いて言えばですが……。マルセル様が少し苦手ですわ。本当に強いて言えばですからね!」


 そうかマルセルが嫌いか。じゃあ、右から4番目の扉ね。


「そうなんですね。じゃあ先に進みましょうか。私右から4番目の扉に進めば良いと思いますわ」

「は、はい。分かりました。右から4番目ですね」


 クララはそう言うと扉の前に立ち

「では扉を開けますわ」

 と宣言してから扉に手をかけた。すると扉にある図形が浮かび上がる。それは〇〇△□の4つの図形だった。


 そして扉が開き私たちは先に進んだ。

「あれって何だったんでしょうか?」

 とクララも言いながら先に進むと廊下の先に扉がある。


「あら扉がありますわ」

 とクララが言って扉を開けると小さな部屋があり、そこにはマルセルの姿があった。


「げっ!」

 とクララが小さく叫ぶ。

 いやいやヒロインが、げっ! は駄目だろ。

励みになりますので、

評価、お気に入り登録をお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ