22/50
戒厳令下
嗚呼、もうお仕舞いだ! 体制が、文明が、一気に転覆しようとしている! そう叫んだのは彼らであったか、我らであったか。
私は寝付けぬままに外へ飛び出し、そこかしこで起こる虐殺の火を目の当たりにした。街路を浸す血の底流に見るものは絶望であった。勝利のキスを交わす恋人たち。輝かしい夜の果てに待つものは漆黒の朝焼けであろう。
国王夫妻が断罪された、戒厳令が出された、そんなことを口々に叫ぶ緑の制服の若者たち。暗闇の中に光る瞳の新鮮さ。その視線の一つに射抜かれた私はまるで羊のよう。追いすがる手を振り払って私は駆ける、駆ける、駆ける! アハハ、私は笑う。私はいつしか狂気に駆られてしまって、支給服を脱ぎ捨てていった。重い道化の冠は爆ぜてしまったのだ、もう誰が私を縛り付けるというのだろう!
行き着いた先で胃液の逆流を抑えながらへたり込む。振り放け見れば橙の空に立ち上がる何かがあった。独裁者! 彼の巨人を生み出した私の身体はすっかりと軽くなってしまって、私は嬰児の歩みを見ながら息絶えていく……




