表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
大ハズレだと追放された転生重騎士はゲーム知識で無双する  作者: 猫子
第一章 追放された転生重騎士はゲーム知識で無双する

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

38/147

第三十八話 親子再会

 俺とルーチェは冒険者ギルドにて、〈夢の穴(ダンジョン)〉の情報について調べていた。


「前回でかなりレベルが上がったわけだし……まず、装備を調えてみてもいいかもしれないな」


 俺のスキルツリー〈燻り狂う牙〉に五千万ゴルド分ほど突っ込んでもらう形になったとはいえ、エンブリオの討伐報酬が一千万ゴルド、魔物の魔石の総額が四百六十万ゴルド、ほぼまるまる残っているのだ。

 まずは武器を調えておくのも悪くはない。


「う~ん……アタシ、エルマさんに買ってもらった〈鉄石通し〉気に入ってるんですけど……買い換えた方がいいんですかぁ?」


「ルーチェも【Lv:40】前後だろう? 極端に硬い相手ならいざ知らず、普通の戦闘には元々〈鉄石通し〉は不向きだからな……」


 せっかくお金があるのだし、もう少し強めの装備を買っておいても悪くないはずだ。


――――――――――――――――――――

〈鉄石通し〉《推奨装備Lv:18》

【攻撃力:+3】

【市場価値:五十五万ゴルド】

 このナイフは堅い相手にも攻撃を通しやすい。

 攻撃成功時、相手の防御力の値を【15%】軽減してダメージ計算を行う。

――――――――――――――――――――


 さすがに今のレベルで〈鉄石通し〉の能力はちょっと心許ない。

 この能力では魔物相手に安定してダメージを稼ぐことができない。

 【Lv:40】相応の武器と考えると、【攻撃力:+10】前後に、欲を言えば何かしらのおまけが欲しいところだ。


 そしてそれについては、初期に買い揃えた装備をそのまま使っている俺も同じところではある。

 道化師も重騎士も、素のステータスの攻撃力不足がかなり痛手になるクラスだ。

 だから俺も最低限ダメージを稼げるように、防御力貫通効果のある〈当て身斬り〉を早々に取得しておいたのだ。

 ちょっとでもいい武器を用意して、弱点は誤魔化しておくべきだろう。


 格上のエンブリオを倒せたのは、相性がよかったから、としか言いようがない。

 もしもテクニカルタイプではなく純粋にフィジカルで押してくるタイプの〈夢の主〉であったら、こちらの火力が低すぎて真っ当な勝負にはなりようがなかった。


「ううん……でも、いい武器ってすっごく高いですよねぇ……。表のお店だと品薄ですし……そもそも【Lv:40】相応の武器って、置いてましたっけ?」


 そこはネックではある。

 都市ロンダルムでは、【Lv:40】の冒険者はかなり高い水準に入る。

 つまり、この都市でそのレベル帯に相応しいアイテムドロップを狙える冒険者自体が限られてくるのだ。


 特に攻略情報なんて便利なものが簡単には共有されないこの世界。

 欲しい武器が手頃な値段で手に入る望みは薄い。

 かといって妥協した武器を購入すれば、自分のレベルが上がった際にすぐ使い物にならなくなってしまうだろう。


 冒険者業で金銭の出し惜しみをするべきではないのは確かだが、すぐ使わなくなるだろう妥協した装備に大金を払うのは正直惜しい。


「あっ! アタシ、思いつきましたよ! エルマさん、武器……〈夢の穴(ダンジョン)〉のアイテムドロップに頼るっていうのはどうですかぁ?」


「あのな、ルーチェ、欲しい種類の武器ドロップなんて、狙ってやるものじゃあない……」


 俺の脳裏に、特に狙ってもいなかった〈ベアシールド〉と〈ブリキソード〉がどっちもダブっていたのが浮かんだ。

 あれだけで剣士系統クラスの装備が二セット完成している。


「……こともないか、うん」


 ルーチェの幸運力ならさして苦労しないだろう。

 確かにすぐ使わなくなる妥協装備を高額で購入するくらいならば、自分で魔物を狩って武器ドロップを待った方が早そうだ。


「やったぁ! 提案通った! じゃあじゃあ、そうしましょう! なんだかアタシ、わくわくしてきました!」


 ルーチェが燥いだ声を上げたとき……冒険者ギルドの扉が、勢いよく粗暴に開かれた。

 騒がしかったギルド内が一気に静かになる。


 入ってきた二人組を見て、俺は酷く驚かされた。

 心臓の鼓動が速まる。だが、頭は妙に冷静だった。


 豪奢な貴族服を身に纏う、恰幅のいい壮年の男。

 軽鎧を纏う、生白い肌の黒髪の少女。

 父親……エドヴァン伯爵家当主のアイザスと、次期当主マリスである。


「これはこれは、アイザス伯爵様……! し、しかし、何故このような冒険者ギルドへ突然お越しに……?」


 すぐにギルド長が現れ、アイザスへとぺこぺこと頭を下げる。


「大事な話がある。そうだな……人払いせよ」


 アイザスは周囲へ目を向けた後、ギルド長へとそう命じた。


「はい? しかしそれなら、人払いをせずとも、奥で話されれば……」


「聞こえんかったか? 俺は、人払いをしろと言ったのだ」


 アイザスは声に怒気を込めて繰り返す。

 ギルド長は「申し訳ございません!」と頭を下げ、俺達の方へと顔を向ける。


「伯爵様が急用でお出でになられた! 申し訳ないが、本日はギルドを閉館とする。冒険者は、すぐにここから出るように!」


 不満げな様子の冒険者もいたが、アイザスに睨まれると引き攣った笑みを浮かべ、すごすごと引き下がっていた。

 魔物から領地を守る義務を負っている貴族家の当主は、並の冒険者とは比べ物にならない高いレベルと戦闘技術を有する。

 一般人が刃向かえば、次の瞬間には首を斬られていてもおかしくはない。


「……俺達もとっとと行こうか、ルーチェ。目を付けられては事だ」


 何が目的なのかは知らないが、アイザスとはもう関わりたくはない。

 向こうも同じ気持ちだろう。

 元より俺はもうエドヴァン伯爵家の人間ではないので無関係なのだが。


「は、はい……。しかし、あの御方が、アイザス伯爵様なんですねぇ……。アタシ、初めて見ましたよう。元々エドヴァン伯爵家にはあまりいい印象は持っていませんでしたけれど……ちょっと高圧的で、嫌な感じですね」


 ルーチェが苦笑いしながらそう零し、指で目を押さえてきゅっと吊り上げ、アイザスの不機嫌そうな顔を真似た。


「そこの冒険者、貴様はギルドに残れ」


 アイザスの言葉に、ルーチェがびくりと身体を震わせた。


「ひ、ひゃいっ! ごめんなさいごめんなさいごめんなさい! エ、エルマさんの顔が暗かったので、ちょっとお道化て和ませようとしただけで、あのあの、本当に他意はなくって……!」


「安心しろ、ルーチェ。用があるのは、どうにも俺の方らしい」


 アイザスとマリスが、俺の前に並んだ。

 関わりたくはなかったが、どうやらそういうわけにはいかないらしい。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
いつも読んでいただき、ありがとうございます!
↑の評価欄【☆☆☆☆☆】を押して応援して頂けると執筆の励みになります!





同作者の他小説、及びコミカライズ作品もよろしくお願いいたします!
コミカライズは各WEB漫画配信サイトにて、最初の数話と最新話は無料公開されております!
i203225

i203225

i203225

i203225

i203225
― 新着の感想 ―
[一言] 追放された主人公は何故 遠く地域ではなく家と近く街で冒険者をするのかな。 干渉とか十分に予想できるんだろな?
[一言] ここで終わるのはずるい!!! 早く読ませてーーー!!!
[良い点] 重騎士の無双展開 [気になる点] エルマの平和ボケした日本人思考 [一言] 第一話「黙るがいい! 俺が酷なことを言っていると思うか、エルマ? 違う! 貴様が、それだけのことをしたのだ! 二…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ