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大ハズレだと追放された転生重騎士はゲーム知識で無双する  作者: 猫子
第三章 夢神の尖兵

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第八話 不穏な悲鳴

 俺は〈影踏み〉でグリムリーパーの移動を制限しつつ、スキルを保つように影を踏んだ足を引き摺りながら移動する。

 ルーチェは常にグリムリーパーを挟み、俺の反対側の位置をキープする。


 強引でも、徹底してグリムリーパーの死角を取る。

 そして万が一にもグリムリーパーの一撃がルーチェを捉えないように意識する。

 これが俺とルーチェの編み出した、対グリムリーパーの戦法であった。


「ケケケケッ!」


 グリムリーパーが大鎌を引いた。

 これは〈竜殺刈り〉の予備動作だ。


「来るぞ、スキルを解除する!」


 さすがに防御をするのは危険すぎる。

 だが、回避するのは難しくない。

 俺は〈影踏み〉を解いて背後へ跳んだ。


「ケェッ!」


 グリムリーパーが大鎌の一撃を放つ。

 鎌の刃は、俺の身体にあと一歩届かない。

 間合いは完全に把握していた。


「てぇいっ!」


 その隙にルーチェが一撃をお見舞いした。

 青い霊体が千切れ、奴の仮面に亀裂が走る。


「ゲェッ……!」


 断末魔の叫びを上げ、グリムリーパーが一本の大鎌を残す。

 ルーチェはその場に崩れ落ち、両手で顔を覆った。


「なんで四本目なんですかぁっ! こっちじゃないのに! こっちじゃないのに!」


「四連続でちゃんと武器が落ちるのは、ありがたくはあるんだけどな……かなりの金額にはなるし」


 レベルが上がれば、それ相応に強力な武器が必要になって来る。

 強くなるための金銭の使い道は多い。

 もう少しレベルが上がったら、そちらの方面にも本格的に着手しようと考えている。

 お金はいくらあっても困ることはないのだ。


「……ただ、今欲しいのは〈技能の書(スキルブック)〉の方だからな」


 千載一遇の好機だったのだが、どうにもドロップ運がよろしくない。

 いや、ドロップ運はいいのだが……〈魂刈りの大鎌〉四本は、正直持て余してしまう。


「はぁ……アタシ、グリムリーパー狩るのが上手くなってきた気がします……」


 ルーチェが落ち込んだようにそう零す。


「ま、まぁ、それはいいことだ。相手のスキルや予備動作、弱点を覚えて、徹底してその隙を突くように動くのは、戦闘の基本だ」


 同じ魔物と戦い続けていれば、他の魔物に対してもそうした意識で戦う習慣がついてくるはずだ。

 手癖で戦っているだけではいずれ成長が止まる。


「前向きなのはいいんですけど……結構〈技能の書(スキルブック)〉の入手、絶望的になってきてませんか……?」


「う、ううむ……」


 体力的にも残りMP的にも、あまりこれ以上グリムリーパーを探し回っている余力はない。

 すぐに見つかったら一体狩れるかどうか、といったところか。

 最寄りの村での休息を挟んで戻ってきたら、さすがに〈幻獣の塔〉は消失してしまっているか……。


 俺達とあのスノウのコンビだけであれば、もう少し〈幻夢の穴(レアダンジョン)〉は長く持ってくれるだろうか……?

 いや、俺達以外にも冒険者はいる、と考えるべきだろう。

 ケルトが知っていたのだから、少なくとも彼に教えた冒険者がいたはずだ。


 B級冒険者の三人以上のパーティーであれば、充分様子見に入ることは可能なレベルである。

 ましてや俺達が来た時点で、出現から二日以上経っていたはずだ。

 ここから日を跨げば、さすがに残っていないだろう。


「……俺達以外の冒険者が〈死神の凶手〉を手に入れているかもしれない。後日、裏の店を回って、売っているところを探そう」


「ただ……その、このレベル帯の冒険者って、結構お金持ってるんですよね? 魔剣士のヒルデさんも、五千万ゴルド近く出せたわけですし……」


「その代わり装備が〈ベアシールド〉になったがな」


 B級以上の冒険者がそれなりに纏まった大金を持っているのは確かだ。

 B級冒険者の羽振りの良さに憧れて冒険者を志す者の姿も、この世界ではよく見られる。


「裏のお店使う人って、結構稀ですよね……? 黙認されているとはいえ、やっぱりリスクは付き纏いますし……」


「まぁ、そうだな……」 


「スノウさんの情報秘匿を乗り越えたB級冒険者のパーティーが、グリムリーパーから〈死神の凶手〉をドロップして……その上で裏のお店で売却する確率って、結構低いんじゃないですか?」


「……ま、まぁ、ゼロではない」


 俺はルーチェのもっともな言葉に、辛うじてそう返した。


 顔の広そうなケルトやメアベル……カロスに声を掛けて、入手した冒険者を探してもらう、というのも手かもしれない。

 ギルド長のハレインにはさすがに頼れない。

 取り締まる側の人間だ。

 堂々とそんな注文を出されたら、彼女も立場上黙って見過ごすわけにはいかなくなるだろう。


 そのとき……微かに悲鳴のようなものが聞こえてきた。

 俺は咄嗟に、声がした方を振り返った。


「どうしたんですか、エルマさん?」


「今、悲鳴が聞こえた」


 魔物相手に後れを取った冒険者がいたのだろうか。

 ここはまだ〈夢の主〉が出没する地点からは遠い。

 あまり奥地へ入り込むのは危険だが、ただの魔物相手であれば、俺達でも充分助けられるはずだ。


 もう一体……最後にグリムリーパーを狩りたかったのだが……まぁ、それは仕方がない。

 人の命とは比べるまでもない。


「悲鳴……様子を見に行ってみましょうか」


 ルーチェの言葉に俺は頷いた。

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― 新着の感想 ―
[一言] 最近この作品コミカライズしてたっけ?とネットショップでタイトルや猫子様と検索を何度もかけてしまうバグ挙動を起こしてしてしまいました。理由は夢で黄金ラーナが出現したからです。はっきりとしたイメ…
[一言] 貴重なのはスキルブックより武器のほうだから誰かさんの幸運がいらん良い仕事してるとか?
[一言] 丁度いいところになんとかできそうな人がピンチになってるな。実に丁度いい。
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