表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
65/128

#065:不動の、千歳緑

#065:不動の、千歳緑


「『ジェネシス』初陣の情報とかは、もう行ってるとみていいわけね」


 エトォダが挙げたその鋼鉄兵機の名に、カヴィラは何かを悟ったようだった。うん、と首を回しながら伸ばすと、少し浅く、椅子に座り直す。


「あんたが目ぇ付けたって言うじゃない。そりゃあこっちの興味も湧くってもんよ」


 ベンロァも、エトォダ同様、人型鋼鉄兵機「ジェネシス」に興味を持っているようだ。そしてその機体が現時点で謎の挙動を示したことも。

そんな旧友の様子を見やり、カヴィラはふぅ、と鼻から一息つく。


「……私は『人型ロボット』に目が無いだけ。今回のもまあ、言ってみれば職権濫用のゴリ押し採用ってだけよ」


 殊更におどけた風で肩をすくめてみせるものの、古くからの「戦友」にはその真意が見透かされているようだ。ベンロァはしかし含み笑いに留めて、それ以上の追求はやめて再び煙管を吹かし始める。


「もう! お二人とも。私の話を聞いてくださいませっ」


 エトォダの甲冑の隙間辺りから漏れ出てくる声は、本人は非難の意を込めているのだろうが、やはり耳に柔らかく、心地よく響くな、とルフトは思う。


(それにしても……)


 「中身」が若い女性だということにも驚いたが、先ほどエトォダが、ベンロァの事を「お母様」と呼んでいた事を思い出し、えええという気持ちになるルフト。自らの組織の中枢にいる、エドバ-エディロア親娘のことが想起されるが、


(ベンロァ総司令の弟が、エドバⅢ督。エトォダさんとエディロアⅠ騎が従姉妹ということか。あとはフォーティアさんも姉だか妹だかがいるって言ってたな……割と、血縁関係多いんだ、うちと、ソディバラは)


 頭の中を整理するかのようにそう思うと、気持ちを瞬間切り替えて、す、と自らの上官に向き直る。


「僭越ですが、こちらのエトォダ様のご案内を私にお任せいただけませんか。ジェネシス含め、こちらの設備等をご案内できればと思いまして」


 そう申し出たのは、先ほどのエトォダの自分に対する言葉の内に、何かしら「知られている」というようなニュアンスを感じたからであった。


(それにこの『甲冑』……もしかして)


 気になることは、即解析・解明がルフトのモットーでもあり、強みでもあるのだった。その意志ある目と向き合ったカヴィラは、何か含ませたような目つきで頷く。


「では、エトォダさんの案内をお願い致します。ホーミィさんにも付いていただくので、女性専用のところは彼女にお願いして」


 カヴィラの言葉に敬礼をしてみせると、鎧甲冑のエトォダを扉の方へと誘うルフト。扉を出たところで待機していた銀髪の少女、ホーミィに旨を伝えると、改めてエトォダの方へと姿勢を正して向き直る。


「アクスウェル地区自警、ルフトーヴェル=カーンⅤ士です。まずは事務所の方からご案内させていただければと思います」


 敬礼をしつつ、そう告げたものの、


「不要ですわ。私はジェネシスさえ見られればそれでいいですの。さっさと、案内いたしなさいな」


 甲冑から出て来た声は、威圧的で高飛車な響きを宿していた。ええー、そんななのー、わかりやすいのきたー、と傍らのホーミィがその大きな青い瞳を見開いて絶句する。


 しかしルフトは、そういった輩たちには(含む上官)、常日頃から対処を迫られているのであって、別段動じる素振りも見せず、ではハンガーにご案内します、と、柔らかな微笑みを浮かべつつ先導し始めるのであった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ