#019:急進の、レグホーン
#019:急進の、レグホーン
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「司令、ジカルⅣ士から帰還の報告があったのですが……」
再び作戦会議室。次の手を決めあぐねていた総司令カヴィラに、ルフトからそう言葉が掛かる。
「……どうしました?」
その歯切れの悪い言い方を怪訝に思いつつも、カヴィラは藁をもつかむ気持ちでその先を促した。
「『都門』近くにいるそうです。ただその……言っていることの要領が掴めないのですが……『少年を拾った』との、ちょっと意味の分からないことを伝えてくるんですね、何回も」
「都門」とは、この「石壁」に囲われた「アクスウェル地区」の南東に位置する大門。そこから伸びる舗装された大通りが、かつての王都に通じていることから、今もその名で呼ばれている。
ちょうど「手薄」と言われていた所に当たる。そこに、ここの自警一の狙撃の名手が着到していることは、どうあれ僥倖には違いなさそうだが……
「……とにかく、ジカルさんには南東イドの封鎖に加わってもらいましょう。『少年』云々のことは後に回すとして。ルフトくん、南地区はどうなってます? アルゼとカァージは……」
一瞬、逡巡したものの、カヴィラは即座に指示を飛ばす。気になっているのは、やはり本日が初出撃の例のアルゼの事と思われる。
「……既に南の二体を沈めたそうです。その後は、カァージⅥ士の判断で、こちらも南東地区に向かっているようですね……いかがいたしましょう、司令」
何やら記号やら図形やらが躍るディスプレイの緑の光をレンズに受けながら、ルフトは背中越しに指示を仰ごうとする。
「『東』に急行するようにカァージさんには伝えてください。『南東』はジカルさんに任せます」
「了解」
カヴィラの言葉に瞬時に反応を見せ、ルフトは何事かをインカムに吹き込む。
<本部、応答を。こちらミザイヤ。北地区殲滅。イド封鎖完了>
と、それと同時に、金属がすり合わさるかのような嫌な音と共に、かなり割れた感じのミザイヤの声が室内に響き渡った。どうやら、「囮-狙撃作戦」はうまくいったようだ。
「『北東』地区への援護に向かってくださる? 七体がとこ、いまだ健在だそうです、ミザイヤさん……」
カヴィラが直接それに応えるが、何か少し含み笑いのようなニュアンスを込めている。
「……エディロアさんが『ヴェロシティ』で出てますけど、苦戦中みたい……サポートしてあげてくれるかしら。その……他意は無いのよ? ただ、エディロアさんにしても、ミザイヤさんに助けられた方がいいっていうか、その」
<了解>
裏に何か含んでいるカヴィラの言葉をそこで打ち切るかのように、通信機の向こうのミザイヤは手短に答え、無線を切った。
「司令……結構余裕あります?」
その様子を背中越しに感じ、ルフトが呆れたようにそう聞いてくるが、
「……『東』も抑えきれていないですね……オセルさんが頑張っているものの、やはり、素早い敵に対しては分が悪い……『ジェネシス』は橋を渡って、狙撃可能地点に入ったら、そこから即、射撃を開始するよう伝えてください」
既にカヴィラは司令としての冷静な表情に戻って指示を続けている。




