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#108:不沈の、ヘリオトロープ


 衝撃から一瞬後、吹っ飛ばされた体を慌てて「冶具」の陰まで再び寄せながら、目までをその上から覗かせて、僕は状況を把握しようと努める。舞う砂埃が収まるのを待ってはいられない。


 弾け飛んで来た「ピンクの糸」によって、こちら側には少なからず被害が出ているようだ。砂の上に倒れ伏している人影が、あちこちに見受けられる。


 対する敵……黒い「壁」は、何事も無かった風でその場にまた沈黙のまま、そそり立っているけれども。敵意は浴びるほど感じたぞっ。


<……跳ね返してきた? いや、体内に取り込んでから、改めて射出した……?>


 アルゼの茫然とした声が、ジェネシスの拡声機を通して、その場に降り落ちてくるけど、彼女も今の「反撃」について、明確に把握しているわけではなさそうだ。鋼鉄兵機の巨体を軋ませながら、その姿はいましがた起こったことに驚愕しているように、振り返った僕にはそう見えた。


<……『光力射撃』が効かないというのならば……接近して直接ぶち込めっ!!>


 僕が荷台に乗っている「キャリアー」の運転席から、カァージさんの鋭い声がすかさず飛んでくるけど。「接近」……大丈夫かな。そして結構ざっくりとした指示。しかし、


 応ッ、みたいな腹からの気合い声を発しながら、アルゼは自分の機体をまたしても滑らかに動かし、結構足取られるんじゃないのっていう砂地の足場を、これまた器用に「兵機」を操って目標向けて歩を進めていく。


 その途中で、「キャリアー」から再び屹立してきた「武装」を、そちらには一瞥もしないまま軽く右手でつかみ取ると、不要となった巨大なライフルは無造作にその場に投げ置いた。再び舞う砂埃。いや危ないって。


 負傷兵の避難確保が進む戦場の中、アルゼのジェネシスは本当に普通に歩いてますよ風に力を抜いたまま、片手に長尺の棒状の得物を携えて「壁」に向かっていっている。もう何か、人間の挙動だよね……どう操ってるっていうんだろう。そんな詮無いことを考えている間も無かった。


<これなら……っ!! どうだぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!>


 射程距離に至ったのだろうか、急に早い挙動で右手に掴んだ「棒」を肩から上に振り上げ左足を力強く踏み込むやいなや、ジェネシスは左手も添えて、最上段から袈裟がけを斬り払った! 絶妙の位置取り……さすがアルゼ。


<……!!>


 しかし確実に薙ぎ払われたかのように見えた「壁」は、まったくのノーリアクションで、毛ほども動じないまま、そこにそのままあったわけで。


 確かに「棒」はこちらから見て右上から左下まで、その鏡面を断つような間合いで撃ち込まれたというのに。まるで何事も無かったように静かに、そして不気味に、「壁」はジェネシスと1mもない間合いの中で対峙を続けるだけなのであった。


 「棒」を振り払ったままの姿勢で、動きを止めてしまうジェネシス。やばい感じがしてきた。


 この相手……得体が知れなさすぎるぞ……どうする?


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