#104:決然の、ダックブルー
▽
「敵」の第一波は退けられたようだ。
「キャリアー」の荷台の上で、必死に身をこごめているくらいしか出来なかった僕だったが、そうこうしている内に決着はついたようで。先ほどまで立ち込めていた「戦場」「戦闘」的雰囲気は収まり、今はまた静寂にほど近い感じが戻ってきている。
僕にも形ばかり程度の「猟銃」が渡されていたのだけれど、それで援護射撃とか、やろうという気すら起きなかった。
前に自治区の市街地内で戦った奴と同族の、「ベザロアディム」という種だ、ということはジカルさんからの無線で把握できていたものの、あの時は無我夢中と言う言葉がしっくり当てはまるほどに必死で対応していたからこそ、あんなアクロバティックな「狙撃」のような芸当が出来たわけであって、周りに頼れる皆さんがいるこの状況では、逆に自分でどうにかしよう感が薄れてしまうわけで。
そんな言い訳気味の言葉を脳内に並べることくらいしか出来ない僕だったが、一行の皆さんは、僕の身を案じてくれたり、労いの言葉をかけてくれたりもしている。
「……ジンはぁ、『切り札』的存在なんダから、こんな雑魚共との小競り合いで、前に出る必要はないヨー」
特にアルゼなんかはそんな過大評価をして、過分に期待をかけてきてくれるんだけど、それが逆に怖い気もする。
と言うか、その超絶射撃を正にの目の当たりにしてだけど、やっぱりこのコは凄いとしか言えない。
遠くから見るとまるで巨人が自分の意思で動いてるかのようにしか見えないほどの滑らかな「人間的」挙動でこの巨大ロボを操っていることがまず驚愕だし、その上でのあの精密な射撃……カァージさんが細かい指示はせずに彼女に一任しているのも、例のオミロがぶ-たれながらも割と素直に彼女の命令じみた「お願い」につき従っているのも、確固たるその能力を認めているからなんだろう。
……僕とはまるで違う。でも、
自分だって、次こそは皆さんのお役に立ちたい……!
そんな切なる思いと決意を込めて、再び僕は自分の指定席に畏まる。キャリアー荷台の隅っこが定位置となったが、あれ? この場所……意外に「狙撃」には適してない?
おそらく荷台に乗せたものが滑り落ちないように、長方形の本体の四隅には「L字型」の冶具が付けられているけど、僕の胸当たりの高さ。これに銃身を固定するようにすれば、身を隠しつつ、かなりの射角を保てるんじゃ……
いけるかも、知れない。
殊勝な気持ちで尻位置を直しつつも、出来ればこの状況、穏便に過ぎ去ってくれないかなという思いももちろんある。
ただ、そんなネガティブ思考が、災厄を呼び寄せるということは、往々にして多々あるわけであって。




