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#101:犬吠の、白金


 周囲は静寂に包まれている分、戦いの場となった砂漠のその一点からの喧騒は、より大きく遠吠えのように響いてくるかのようだ。


 アルゼの強引な提案というか「命令」に従い、巨大人型機械の「右腕」の形を模していた金属生命体―オミロはしょうがなく、といった体を見せつつも、忠実にそれを遂行していこうとしている模様である。


 その「右腕」形態を少し細らせつつも、右手に握ったライフルの、マガジンが装着されていた部分に、光る「触手」のようなものを何本も伸ばしていく。


<……『直結』、シましたケど……光力の方は、アルゼはンがまかナってくレはるんですヨね……>


 恐る恐るそうコクピットの少女に問いかけるオミロ。しかし、


「……うん、大丈夫、大丈夫ー」


 アルゼはもう心ここにあらずといった感じでそう流す。えエー、これ絶対あとから折半ねーとカいう流れですヤん~と呟きながらも、オミロはもう投げやりな感じでアルゼの操縦に身を任せている。


 後ろに詰めていた猟兵たちの援護射撃により、ベザロアディムたちの体表付近で炸裂した「光力爆発」によって、そのトカゲ状の身体を包んでいた「黒い霧」のようなものが霧散していた。その隙を、ということなのだろうか、アルゼが操るジェネシスは、ライフルを構えて再び照準を付け始める。


(……怪物の身体に……『鱗』が生えてきている)


 指令車から戦場の様子を伺っていたカァージが、敵の異変に気付く。ベザロアディムは先の戦闘でほぼ無傷の死骸が回収出来ており、その様態はほぼ把握できている。しかしそのデータと、いま相対している個体とは外見上で異なる部分があるのであった。


 カァージが気付いた通り、動き回っているため掴みにくいものの、トカゲたちの身体のあちこちには、黒い「鱗」のような物が見て取れる。


(これで、『弾丸』を防いでいたってこと……なるほどなるほどぉ)


 徐々に間合いを詰めて来る怪物たちに牽制の弾丸を撃ち放ちながらも、アルゼは冷静に「鱗」の存在を確認していた。そしてそれが、自分が先ほど撃ち抜いたはずの「眉間」をも覆っていることも。


(『奴』の影響ってことはもう間違いなし。あの『光力散らし』の『鱗』がザコにも『配備』されちゃうとなると、ちょっと厄介かな。でも、私は大丈夫。オミロがいれば大丈夫……)


 一瞬、難しそうな顔を見せたものの、ヘルメットの中の幼い顔はそれ以上の喜びを感じているように見える。そして、


「いけるいけるってアルゼっ!! 狙ってこー、狙って……」


 自分を鼓舞するかのような、暗示にかけるような言葉を呟くと、即応の射撃に移行していった


「『二連発』で!! よろしくオミロっ!!」


 無理めの即興アドリブを要求する「相方」にももう慣れてきたのか、アイアイ、みたいな軽い返事を返すと、オミロの力を注ぎ込まれたライフルから、黄色く輝く銃弾が放たれていく。


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