本陣にて
本陣がおかれた村はまるで祭りのような活気に包まれていた。
ゴブリン被害を受けていた村々の人たちが集まり、足の置き場もない状況。
「なんと大きなイノシシじゃこと」
「シカもたくさん取れたの、これならまたゴブリン狩りをやってほしいな」
「……ゴブリン狩りでシカ???」
山のように積まれた狩猟の成果に村人が集まって口々に驚きと喜びと疑問の声を上げる。
「はい一丁アガリ、次を持ってきて!」
「これ水洗い!」
その脇には姫君付きの武装メイド隊と料理を志願した村人たち。
臨時に立てられた木のやぐらに獲物をつるし、長剣や肉斬り包丁で襲い掛かる。
毛皮をするりと剥がし、次々に手際よく食肉に切り分けていく。
モツも綺麗に洗って確かめてから煮込みやソーセージの袋に回すのだ。
「わーいわーい!」
その周りにはさっそく貰ったイノシシの膀胱を風船にして遊ぶこどもたち。
食肉と化した獲物たちはさらに隣の焚火に持っていかれ、おいしそうに焼き上げられていく。
「お兄様から皆様にお肉のふるまいがあります!」
「おーー!!!」
本陣総代の妹姫、ドルミーナ姫の宣言に沸き立つ村人たち。
肉だけでなく、村長や村方役人が持ち寄ったビール樽があけられみなに振舞われた。
そして村の入り口のほうでひときわ大きな歓声があがる。
「若君たちのお戻りだ!」
「ご勝利おめでとうございます!」
「嫡子様バンザーイ!」
「オルクを討ち取ったとか?!」
留守番していた村人たちが騒ぎ立て若君を取り囲む。
「はーっはっはっは!ボクの愛する善良で誠実なる村人たち!これを見よ!」
オウドの掲げる槍先には一抱えもある巨大な生首。
上位ゴブリンであるオルクのものが括り付けられていた。
「おおおお!」
「見たいみたい!」
「でけー」
「これも、ボクを助けてくれた精強で勇敢なる諸君のおかげだ!
さぁ、みんなで拍手しよう!!」
「おーー!パチパチパチ」
若君が後ろに居並ぶ討伐隊の面々を紹介すると、万雷の拍手。
「お兄様!ご無事でしたか!」
「もちろんだとも!ああ、ボクの可憐な野ばら!」
駆け寄ってきた姫君が若君に抱き着く。
「も、持ちますね?」
「ありがとう!」
オルクの生首で妹を汚すまいと槍を高く差し上げた手がプルプルしているのを見て、脇にいたルーク書記官が槍を受け取る。
「重っ?!」
「持ちますぞ、書記官殿」
受け取った瞬間よろめくルークから、隣の騎士が槍を受け取った。
「お兄様、お肉がおいしく焼けましたわ」
「おお、じゃあみんなで頂こうじゃないか!」
兄弟は仲良く手をつなぎながら広場の中心へ向かった。




