迷宮伯からの手紙
「あの子は頑張ってるみたいだねぇ」
遠征中の迷宮伯一行に子供たちと家臣からの手紙が届いたのは発送から10日ほど経ってからだった。
英雄冒険者パーティでもある迷宮伯一行は、今は領地から遠く離れて、魔物狩りの上級クエストを主に回している。
本当は帝国北部の未制覇ダンジョンまでいくつもりだった。
しかし、移動の途中でなぜか西部で魔石食いの大物が増えたので、小遣い稼ぎとしてありがたく狩って回っているところである。
手紙を置くと、迷宮伯のパーティメンバーたちがわらわらと寄ってきた。
神官長、宮廷魔導士、総メイド長、元帥、騎士総長、密偵頭。
全員が壮年の男女で、迷宮伯家の重臣でもある。
次々に手紙を読んで思い思いに発言するため、誰が誰だか分からない。
「え、若君から?見せて見せて」
「ほぉ、ゴブリン退治でオルクを討ち取って」
「西大公と独立派の間の戦争を阻止して……勝手に巻き込まないでほしい……本当に脳みそ筋肉だらけ……」
「公爵に謝らせて、すごいな見てみたかったぞ」
「西魔王の暗殺を見抜いて、おー」
「西魔王を歌って撃退して、ってマジか」
「領地と贈り物を西大公に褒めさせて」
「流民と住民の仲が悪いので、流民に仕事与えて」
「交易始めましたって」
「すげーな、あの子本当に伯爵の息子かー?」
「種はともかく産んだのは間違えようがねーだろっ!」
「姫ちゃんの似顔絵可愛いー、なんで私のはないのっ?」
「家族じゃないからでは?」
「そんな!私はいつでも母親になる覚悟が!」
「父親も母親も募集してないからやめろ」
「禁猟区解除してごめんなさい……か。良いよそんなの」
「あれ?閣下、開拓村ですよね。あそこは森人……エルフとの停戦区では??」
「いや、それは山一個西だったはずだぞ」
「そうでしたっけ?」
「たしかそうだよ。ま、いいや。森のボケ老人どもとは揉めるなって返信書いておくか」
「しかし……これ、若君ずいぶん変わられましたね??ここまで英雄志望で積極的でしたか??」
「いや、そういう風に育ててた。騎士の基本は俺がきちんと叩き込んだからな」
「育ててたけど今一つ控えめだったから、一皮むけて良かったよ。帝都で演劇と魔物学んでたのが良かったのかねぇ?」
「次世代はこれで安心ですな」
「けど、申し訳ないことに途中で留学解除しちゃったからね、嫁探しは失敗だ。次世代の次も必要なんだよ」
「近隣で家格と年齢の釣り合う子がいませんでしたからな、魔法学園には期待していたんですが」
「あそこでの女の口説き方はアタシにはわからん」
「若君にはちょっと奥手なところがございますしな」
「ご主人様が過保護だったのが悪いと思いますー。最初から家臣の女の子と沢山触れ合わせておけば今頃はとっかえひっかえ」
「権力つかって女集めてそんな男がモテるか?アタシは絶対嫌だぞ?!」
「迷宮伯様の仰る通り。貴族同士対等の結婚しようというのに、相手が普段から身分が下の異性を侍らしているというのは嫌でしょう」
「大公家で財力が圧倒的とか……本人の魔力とか剣術が超越的だったら……ある程度許されるけど……若君は違う」
「いいんだけどよ、若君の周りに若い女性が少なすぎて、姫君と仲が良すぎるというのはまずいんじゃねーの??」
「う……」
「ご主人様の禁令、つまり若君への女性接近禁止令を解くべきだと思いますー」
そして、親として領主として子供たちと家臣たちへの言葉を加え、魔物狩りの稼ぎの送金書を同封して手紙を託した。
・元気か、こちらは元気だ。
・なぜか魔物が多いが討伐は順調。そろそろ狩りつくすので予定通り未踏破ダンジョンに向かう。
・報告聞いた。いろいろと頑張ったな。偉い。
・母が不在の間はオウドが領主だ。そのうちお前のものになるんだから好きにやって良い。その代わり責任も取れ。
・森を破壊するのはいいが、森人エルフの境界には近づくな。ぼけ老人どもと揉めると心底面倒くさい。
・残機は大事だ。領主の義務だと思って良い女がいたら口説け。
・愛してるぞ




