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迷宮伯嫡子はカネがない  作者: 神奈いです
第三章 カネがないので無料で内政

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外交官ルークにはカネがある?

「おお?依頼の報酬が突然良くなったぞ?」

「なるほど、危険な任務ほどポーションを現物支給か」

「中級任務でも薬草が貰えると」


グリムホルン市冒険者ギルドで依頼掲示板に人が集まっていた。

字が読めないもののためにギルド職員が代わりに読み上げる。


「そしてこちらが今回の領主推薦のクエスト!報酬にはダンザウベル伯の特製ポーションがつきます!さらに副賞として依頼達成者の名前を迷宮伯嫡子様の日記に書いていただけます!」

「わはははは」

「その副賞はいらねーだろ」

盛り上がる冒険者たち。


「よし、じゃあ久しぶりに上級クエストやるか」

「怪我したら赤字確定だったからなぁ、回復が保障されるのは助かるぜ」


冒険者ギルドの広間でぐだぐだしていた冒険者たちが急に生き生きとしはじめた。


 ― ― ― ― ―


「という感じで、ボクの狙いは冒険者業の活性化だったんだ」

「なるほど、しかし現金収入につながってませんが」

冒険者ギルド長の部屋で様子をうかがっていた若君オウドが書記官ルークに説明した。


ギルド長が口をはさむ。

「いや、そこは若さまのおかげでダンザウベル領からも依頼を貰えたし、滞留していた依頼を終わらせることもできたんでね。上納銀を増やさせてもらうつもりだよ。とはいえ、多くはないんだけど」

「なるほど、ちょっとずつ回ってる感じですね」


ルークが感心するとオウドが大げさな手ぶりでそれを止める。

「いや、そうやってちょっとずつ儲けを出す予定だったんだけど、その予定が狂った」

「え?」

「ルークの幼馴染さんが最適な交易のやり方を教えてくれたし、魔石も小さいのならあちこちの貴族や騎士に需要があるってわかった」

いままで大きな魔石を高く売ることばかり考えていたので、小口にしたほうが需要があるというのは盲点だった。


「結構な収益がでたからギルド長の上納金と合わせて職人への支払いは何とかなる」

そこで若君は一息つくと。


「というわけで、今回の功績によりルークに開拓村で5戸の所領を与える!」

「へ?!」


「これからは迷宮伯家臣の貴族、ルーキウス・アマデウス・フォン・エスカヴィッツ卿として外交に当たってもらう!あわせて雑貨屋のヨハンナをルークの交易担当副官に任命する!周辺領地を順番にぐるっと回ってくれたまえ!」

迷宮伯嫡子オウドは芝居がかった身振りで得意げに宣言した。


 ― ― ― ― ―


こうして、ルークは所領持ちの外交官となった。

開拓村なので今すぐ税収があがるわけではないが、周囲の見る目は明らかに変わる。


貴族の外交官としてルークは周辺領地を訪れては余っている特産品の交換を持ち掛けた。領地ごとにそれぞれ事情に違いはあったものの、不景気で余剰在庫があるのはどこも一緒だったので交換には応じてくれた。

開拓村の生産物に加えて、少量の魔石にダンザウベル領のポーションをつけると割と贈り物として喜んでもらえる。


持ち帰ってきたのは冒険者ギルドへの依頼に加えて、麻糸や亜麻、鉄や錫、革や木材などで主に素材になる。

そのままでも売れるが需要は少ない。


しかしオウドはそれも大喜びで「開拓村の仕事ができる!」といって、それらを衣服や道具、武具などに加工させるのだった。

もちろん素人なので、職人を呼んで指導させる。

そして開拓村で加工した品は次の交易馬車にのせてさらに素材を買い込むのである。


それでも最初はヨハンナの副業込みで赤字気味だったが、開拓村の加工の腕が上がってくるとだんだんと利益がでてきた。

そして気が付くとグリムホルン市は帝国西部独立派諸侯の交易拠点になりつつあった。


「しかし、ついこの間まで城に閉じこもって書類仕事ばっかりしていたのに、気が付けば所領もちの貴族の末席とは」

「移動時間はのんびりできるし、こういうのもいいね」

極めて平和な街道を馬車の荷台に乗ったルークとヨハンナが揺られていく。


もちろん交易馬車は危険である。

しかしオウドは魔物討伐や盗賊退治の依頼に報酬を上乗せし、領主推薦クエストにすることで領地周辺の魔物や盗賊を一掃しつつあった。

特に危険な魔石食いについては上級クエストとして精鋭の上級冒険者パーティを派遣して撃破させている。


それだけでなく、交易馬車には護衛を十分つけている。

前に砂糖を貰った騎士たちに交代で護衛を頼んでおり、騎士たちは「あの若君の頼みなら何かいいことがある」と快諾。

交易の収益からルークや騎士たちには十分な報酬が払われるようになっており、騎士たちのカネ周りも良くなりつつある。


そしてルークのカネ周りも。


「なぁ、ヨハンナ。所領に新しく家を建てようと思うんだが」

「あら、いいじゃない。完成したらお祝いするわよ?」

「いや、そうじゃなくて、収入も増えたし、所領も貰ったし、その一緒に住まないか?」

「……」

ヨハンナは真っ赤になって、蚊の鳴くような声で何かつぶやいた。


 ― ― ― ― ―


少し前の若君。

「え、ルークくんが未婚なのは仕事が忙しいから……?いい雰囲気の幼馴染がいるのに最近会えてない?そっか。じゃあ口実作って書類仕事から解放するよ」


今。

「ルークが結婚するって?!おめでとう!」

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― 新着の感想 ―
おめでとうおめでとう! ところでオウド君の結婚はまだですか
2人が結ばれて嬉しいようなもう少しゴールインまでの馴れ初めを堪能したかったような。 何にせよ結婚おめでとう。
経済学者「これが乗数効果というものだ。迷宮泊嫡子の投資により、開拓民が産業を興し、ダンザウベル領との交易につながった。交易で得たポーションは冒険者たちを活性化させ依頼の消化へとつながる。少しずつだが不…
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