妹は水魔導士様?
さらに次の日、オウドは妹のドルミーナ、そして護衛の騎士をつれてきた。
ドルミーナの手には木の杖。根元から螺旋を描いて先端につながり、その先は円の形にぽっかり穴が開いている。
「優しく冷たき水の精霊よ、汝の源を訪ねん」
ドルミーナが集中し、水の魔力を高める。
魔力が螺旋に沿って杖をのぼっていき、先端の円の中心が青く光りはじめた。
水の魔力が波のように広がり、そして反響した。
ドルミーナは目をつぶってその微かな変化を感じ取る。
「ドルミーナ、どうかな?」
「えっと、こちらですわお兄様」
すたすたと歩き始めるドルミーナにオウド達が付いていく。
なんだなんだと村人たちも集まってきた。
村のある丘の一部。
ドルミーナが杖でそこを指ししめした。
「水脈があちらから、こうですわね。ですので……そこのちょっと低いところですわ」
「よし、村人たち!あそこを掘るんだ!」
「は、はい!若君!」
本当はオウドは自分で掘り始めたいぐらいだが、護衛の騎士たちにがっちり囲まれて果たせなかった。
領主の仕事は指導すること、小さな仕事をしては領民たちを信用していないことになる。と自分を納得させる。
村人たちが穴を掘り始める。
その前でドルミーナが杖をもって念じる。
そうすると村人たちから驚きの声が上がった。
「あれ?土が湿ってきた?掘りやすいぞ!?」
「もっと掘りましょう!!」
クワをつかんだイレーネが率先して掘り進めていく。
「俺は土を運ぶぞ」
「そうだ、周囲を石で固めたほうがよいな」
「運んできます!」
掘るもの、土を運ぶもの、石を運んでくるもの。それぞれがキビキビと動く。
クワを持つ村人たちの間から、イレーネの歌声が響いてきた。
「土の恵みに水の神、
めでたい声が聞こえるよ、
この穴掘れば、姿が見える、
も一つ掘れば、宝が見える♪」
歌の拍子に合わせて、クワが揃って振り下ろされる。
オウドは手拍子をしながら歌声に聞き入っていた。
あの子の歌声を聞くと不思議だけど元気が湧いてくる。もっと開拓村を発展させればまた違う作業歌が聞けるかもしれない。
この間からこの村ばかり来てる気がするけど、それは一番困ってる村だからで他意はないんだ。
などとオウドが考えていると、ドルミーナの声がした。
「感じます」
穴は結構深くなっただろうか。子供の背丈二人分も掘ったところで、ドルミーナが皆を制した。
足場になっている石を踏んで、穴の底に降り立つドルミーナ。
杖を両手で持って、目をつむって念を込める。
するとじわじわと水が湧いてきて、やがて一つの泉となった。
「おお!水だ!」
「助かった!!」
口々に喜ぶ村人たち。もう遠い距離を水汲みで歩かなくていいのだ。
オウドはそれを見てすぐ新しい指示をだす。
「あふれる水がもったいないから、水源とは別にそっちを掘り下げて、土を盛り上げて溜池にしよう!」
「はい!」
オウドに従い、村人たちが土を掘り下げ、石を運び込んでいく。
そして、飲み水用の綺麗な泉と、そこから流れる水を受け止める溜池が村の近くにできた。
「すごい……」
イレーネが花が一斉に開いたような笑顔で喜んでいる。
「姫君はなんてすごい水魔導士なんでしょうか」
「ありがとうございます!」
「偉大な姫君ばんざーい!」
「すばらしいです!」
「そんな、私はまだ水魔法は初級で……この杖のおかげですわ……」
イレーネと村人たちに口々にお礼を言われ、ドルミーナは赤くなってもじもじし始めてしまった。
彼女が持つ杖、水の属性石を埋め込んだ「水源の杖」は見事にその力を発揮した。これはオウドが西大公家の錬金ギルドで、魔石のお釣りで手に入れた開拓アイテムだ。
迷宮伯領には水源がなく放置されている荒れ地がかなりある。普通は熟練の水魔導士を連れてきて水源を探させるのだが、そのような人材は当然高い。
そして迷宮伯嫡子にはカネがない。
それを考えてオウドは水源を安く探せることに特化した杖の作成を依頼したのだ。
「いや、その杖を使いこなしたのはドルミーナの才能だよ。流石はボクの可愛い魔法使いだね!」
「えへへ」
オウドに頭をよしよしされて喜ぶドルミーナ。
妹が水源の杖と相性がいいか、うまく使えるかなど不安はあったが、結果は上々と言っていいだろう。領内の他の場所で水源が見つかればみんなの暮らしも良くなるし、荒れ地を開墾すれば税収も期待できる。
英雄の統治に相応しい豊かな領地になるだろう。
「さて、これで皆は水汲みの時間を仕事に当てられるよね。水源は飲み水、溜池の方は作物の水やりとかそれ以外に使うとしよう。溜池には川の藻や水草を持ってこようか、鯉やナマズを飼うんだ。美味しいよ!」
「なるほど、何から何までありがとうございます」
村人たちは領主の若君と姫君に改めて深々と頭を下げる。
オウドはそれを押しとどめる。
彼らのためにやってるわけじゃない、英雄には豊かで強い領地が必要なんだ。税収が目的なのだ。
村人たちを喜ばせたり、少女の笑顔を見たり歌を聴くのが目的ではない。はずだ。
だからオウドは言った。
「気にしなくていいよ、ボクの愛する大事な領民たち!君たちにはもっと働いてもらうんだから!」
「はい、がんばりますね!」
イレーネが元気よくいうと、村人たちがそうだそうだ、と応じるのだった。
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