小鬼退治だ 巻き狩りだ
「これは……巻き狩りですか?」
書記官ルークはぽかんと前を見つめている。
森の周りにはずらっと村人たちが列を作っていた。
彼らは付近のゴブリン被害を受けた村から動員された若者たちだ。
それぞれに10尺前後はある木の棒を手に持っている。
騎士の号令に従い、皆が棒で地面をたたきながら森の奥へ進んでいく。
通りすがりの茂みや穴も忘れずに棒で突っつきまわし、驚いた鳥やウサギがバタバタと逃げだしていた。
巻き狩りというのは狩りの手法の一つで、こうやって大勢で獲物を取り巻いて狩るから巻き狩りという。
「ゴブリン狩りってこう、群れに突っ込んで斬り散らして終わりじゃないんです?」
「はっはっは、それだと狩り逃すから結局また増えるじゃないか。殲滅するんだよ」
不敵に笑う若君を見ながら、ルークは一体なぜここまでするのかと頭をひねっていた。
騎士たち13騎がそれぞれ百名ちかい村人を指揮し、千名を超える大人数で少しずつ包囲を狭めていく。
ゴブリンは基本的に臆病なので大勢の人間が来たり物音がするだけで逃げ出す。
しかし、たまに方角に迷ったり、やけになって村人に噛みつこうとするヤツもでてくる。
「射よ!」
そういうのは大弓を持った郎党や、駆り出された村の狩人たちが矢を射かける。
村人たちもそれぞれに短剣やこん棒を持っているのでいざとなれば戦える。
だが、若君は危ないからと射撃に専念させていた。
狩人を動員していると良いこともある。
「イノシシ取ったどー!」
「後方へ運べい!」
本来はゴブリンを追い込んでいるのだが、森に踏み込めば野生の動物たちもいる。
囲んで追い込んで弓矢で狙えば獲物も取れる。
これらの獲物は動員された狩人と村人たちに分配されることになっていた。
「む、あれは女鹿と小鹿だ。逃せい!」
不満そうな狩人を差し止めて騎士が鹿の親子を逃がしてやる。
春なので子連れの動物も多い。
狩りの獲物がなくならないように若君は子連れの獲物は逃がすように指示していた。
ゴブリンや野生動物を狩りつつ包囲網はじりじりと森の中心部に迫っている。
最初は大きく開いていた村人たちの間隔もだんだんと狭まってきた。
「若君、各隊がもう30匹ちかいゴブリンを倒しています」
「良かった、あんまりまとまられても困るんだよね」
結構いいペースで討伐が進んでいる、獲物の狩猟も進んでいるし、これならば被害者なく終われるだろう。
「騎士たちに魔法で撃たせればもっとペース早くいけたのでは?」
「何があるかわからないだろう?」
騎士たちは専門の魔導士ではないが、初級の攻撃魔法ぐらいなら使える。
それも温存させて、ただのゴブリン狩りに何があるというのだろう。
若君が機嫌よく鼻歌を歌いながら包囲陣を進めていると、急に森が開けてきた。




