流民少女の思い
迷宮伯領に流れてきた流民の少女は思う。
助かった私たちは幸福だった。
政治の詳しいことはわからない。
わかるのは大不作があって。
領主さまが破産したこと。
皇帝陛下からお取りつぶしの命令がでて。
そして周囲の貴族や盗賊、傭兵に商会の借金取りなどが一斉に押しかけてきて。
故郷は壊れた。
魔物も増えて。
どこの兵か分からない連中がたくさんやってきて。
村は焼かれて。
たくさんの人が、奪われて、殺されて、奴隷にされて。
両親は私を逃がすために殺された。
あなたは幸せになるんだよって。
そんな人たちがたくさん集まって。
領地と領地の間の荒野でうろうろして。
おなかもすいて、寒くて、もう盗賊団にでもなるしかないんじゃないかって。
どうしようかというときに、迷宮伯様の軍がやってきた。
「行くところがないなら、アタシのところに来るかい?待遇は最悪だけど命だけなら約束できるよ」
私たちはギリギリで救われた。
盗賊に落ちたらきっとあの軍隊に討伐されていた。
迷宮伯様は私たちに開拓するための土地。
そして当座をしのぐだけの食料、作物の種、道具に布をくれて。
あとは生き延びなと言って帰っていった。
迷宮伯様の言葉に嘘はなくて。
開拓のための土地は水場も遠いし、荒れていて。
食料も来年の収穫まで持つかどうか。
でも命だけは助かった。
私がここに居れるのは。
身代わりになってくれた両親と。迷宮伯様のおかげ。
だから幸せにならきゃ。
だから笑っていなきゃ。
だから生きなきゃ。
― ― ― ― ―
みんなで力を合わせて家を作り、畑を起こした。
冬を過ごすための薪集めは何とか間に合った。
でも春がきて、収穫まで食料が持つかどうかギリギリだった。
村の周りには有用なものは少なくて、お金になりそうなものはすぐ取りつくした。
ちかくの小さな林は話し合って残すことした。薪がないと次の冬が越せないからだ。
遠くの大きな森は領主さまのものだから入れない。
皆で働きに出ることにした。
なかなかいい働き口はない。不作で苦労しているのは地元の人も一緒だと聞いた。
私たちには雑用の口しかなくて。給金はほんの少し。
お腹がすいていて動きが遅いのでよく怒られた。
でも私は笑って、皆を励まして、もう少しだからって幸せになろうって。
皆もアンタが言うならそうだねって。
でも地元の人たちは気に入らないって。
「なんでお前たちばかり領主さまに食料を貰えるんだよ」
「みんな苦労してるのに楽な仕事ばかり選んで」
「のろのろ働きやがって」
人気がないスライム掃除ならと思ってきたけど。
意地悪な顔をした冒険者たちに。
突然スライムをいれた木桶を蹴り倒された。
― ― ― ― ―
「待ちたまえ!それはその子のだろう!」
「そのスライムをその子に返してあげたまえ」
そのとき、同い年ぐらいの。
紺青のまっすぐな目をした少年が。
希望と自信に満ちた言葉でかばってくれた。
隣にいた女の子はとっても怒ってたけど。
少年は何を言われても怒りもせず冷静に落ち着いて冒険者たちと話し続けた。
そして何かに気づいたのか。私に問いかけた。
「嫌がらせじゃないよね?他に仕事がないんだよね?」
なんでわかるんだろう。私の事情なんて言ったことないのに。
地元の人たちはみんな私たちを嫌ってるのに。
分かろうと、興味を持とうとしてくれた人なんて居なかったのに。
なんか他にも冒険者がきて言い争って。
私は追い払われたけど。
その少年だけは私をずっと見て、見送ってくれた。
だから私は。
本当に心から。
笑って別れることができた。
― ― ― ― ―
それからしばらくして。
その少年が女の子と、兵隊さんをたくさん連れて。
食料を一杯に積んだ荷馬車と一緒にやってきた。
その少年の額には金色に光る頭飾りがあって。
兵隊さんが迷宮と大モグラの紋章をいれた旗をかかげて。
それは迷宮伯様の紋章で。
「はっはっは!開拓村のみんな、初めまして!あ、この間の女の子だよね、無事だった?」
「……お貴族様だったんですか!?」
「うん!ボクはオウド、オウドリヒト・フォン・グリムホルン。迷宮伯嫡子だ!」
少年の希望と自信に満ちた紺青の瞳が、私にまっすぐに言葉をつたえてきた。
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