冒険者少女とクエスト処理
「げ!?狂犬レニ!」
「あ、いや、レニ……さん!」
驚愕する若い冒険者たち。
妹ぐらいの小さい子なのに上級なんて偉いなぁ。名前も売れているみたいだ。
と、ちょっと兄目線から見てしまう。
でもなんか雰囲気的には中性というか男女がよくわからない。
声は可愛いけど……
と思ってその子の首元を見ると、冒険者レニ、女と書いてあった。女の子か。
若い冒険者たちは慌ててボクに話しかけてくる。
「な、なにもねえよ?な?アンちゃんよぉ?」
えっと。
「この人たちがギルド長の判断に文句があるって言ってたよ」
「言ってねえよ!?」
「言ったのはおめぇだろ?!」
「えー」
さんざん文句言ってたじゃないか。
「何を言い争って……あン!?」
レニさんがボクの顔をみて、ものすごく怪訝な顔をした。
なんだろう。骨と間違って石を食べちゃった子犬のような顔だ。
「おい、お前ら。どっか行け」
「へ?」
すごい嫌そうな表情をすると、若い冒険者たちに振り向いてシッシッと手で追い払う。
「行けや!死にたいのか!?」
「はいいいいいっ?!」
若い冒険者たちがバタバタと奥の通路のほうへ去っていく。
「お、おお……落ち着いたみたいだな」
「あ、先輩冒険者さん」
見ると松明を掲げて、ワイン蔵について教えてくれた中年冒険者さんがかけてきた。
なるほど、喧嘩が始まりそうだったから上級冒険者さんを呼んできてくれたんだ。
「ありがとう先輩!」
「お、おお……たまたまレニが居たから声かけたんだが、レニは足はええなホント」
「……オッサン。もう行っていいぞ。そこの女もだ」
レニさんは不機嫌そうに中年冒険者さんと流民の少女を追い払おうとする。
「は、はい!……その、ありがとうございました!」
流民の少女はボクに深々と頭を下げた。
起き上がると何もなかったかのように屈託のない笑顔を浮かべ、何度も頭を下げながら去っていく。
だが、中年冒険者さんはカチンときたようだ。
「おい、一言ご苦労ぐらい言えよ」
「ご苦労だ。さっさと行け!」
「……ったく」
ぶつくさ言いながら中年冒険者さんも別の通路から去っていった。
「で、だ」
「はい」
ボクたちだけになった。
レニさんは嫌いな食べ物を無理やり食わされた番犬のような、心底嫌そうな顔してこちらを振り向いた。
「何やってんスかぁ?迷宮伯閣下の坊ちゃまとお嬢ちゃまぁ?」
「……ばれたか」
― ― ― ― ―
上級冒険者のレニさんに捕まり、連行されることになった。
聞くとギルド長の護衛として何度かボクら兄妹を見たことがあるとか。
たどり着いたのはグリムホルン市壁内、冒険者ギルド。
ふと見ると日が結構傾いている。なんだかんだいって昼間の半分ぐらいはダンジョンに潜っていたわけだ。
あ、でもギルド長の部屋に行く前に道具とスライムを返さなきゃ。
「なんでわざわざスライムの清算なんてするんスかぁ?」
うん、ボクらをギルド長に一刻も早く引き渡すべきだってことかな?
それは正しいと思う、でもさ。
「ちゃんと借りたものを返して、クエストも報告しないとダメじゃないか、冒険者ギルドのルールを破るなんてとんでもない」
「あぐ……わ、わかったッス……」
手で黒い頭巾を抑えておとなしく清算に付き合ってくれるレニさん。
うん、口は悪いけどルールを守る良い人に違いない。
窓口で桶に半分入ったプチスライムを引き渡すと、報酬は半銀貨1つになった。
あれ?帝都での経費は金貨単位だったんだけど、銀貨に半って単位あったっけな?
「あー、釣りがないわね。ちょっと待って」
というと窓口のお姉さんは銀貨を1枚、カウンターの上に置いて。
ガキン!!!!!
そして肉厚のナタで一刀両断にした。
「はいよ、報酬の半銀貨」
「えー」
真っ二つになった皇帝陛下のご尊顔。
ううん、直参の家臣としてこれでいいんだろうか……
と思ったら結構普通にみんな切って使ってるようなのでもう気にしないことにする。
妹がせがむので半銀貨を渡すと、興味深そうに銀貨を眺めたり裏返したりしていた。
さてと、冒険者ギルドでは、銀貨1枚でパンとチーズ中心の食事1皿にエールがつく。
つまり桶を一杯にしてようやく1食が食べられるってことで。
途中で切り上げたり、中年冒険者さんに分けたりというのを差し引いても、
たしかにスライム掃除の報酬は安すぎるんじゃないか。
よし、ギルド長にちゃんと説明しよう!




