欲しいものは褒美じゃない
「なぁ、本当に褒美は要らないのか?」
「要らないよ」
迷宮伯嫡子のオウドです。
さっきからアミリ先輩が褒美を押し付けようとしてきます。
うーん、西大公にあんまり頼りたくないし、あんまり多大な贈り物貰っちゃうと従属への道がつながってる気がする。
母さんからも他家に貸しは作っても借りは作るなと言われているし。
なお、毛皮の返礼の引き出物はすごい豪華な食器とかナイフとかベルト飾りとかボタン飾りとかを4箱ぐらいもらっている。
これは贈り物の交換だから貸し借りはない。
うち、1箱は今回活躍した護衛騎士へのご褒美に使った。自分ちの家臣にはどんどん贈り物をして従属させて問題がない。
なんていえば諦めるかな。素直に言うか。
褒美とか欲しくないって。
先輩のお姉さんの結婚式が壊れたらかわいそうだと思ったのと、ウチが巻き込まれるのも嫌だなって思っただけだよね。
だから。
「そんなことのためにやったんじゃないし、ただ先輩が悲しむと思って」
「えっ……」
なんか先輩が照れてる。可愛い。
でもなんで照れるの……あ。
「あ、いや、先輩のためっていうか、ウチの領地のためにもなるし!」
「……」
なんか変な誤解を生んでるのがわかる。誤解……かなぁ?
「……」
「……」
なんか無言が続いて耐えられない。
とにかく話題を変えよう。
「そうだ、錬金術ギルドを紹介してくれない?魔石と土の護符を交換したいんだ」
「それぐらいタダで貰ってあげるぞ」
「だから褒美とかじゃなくて取引がしたいんだって」
「うーん、分かった」
アミリ先輩はあまり納得してないようだったが、公爵領都の錬金術ギルドを紹介してくれた。
― ― ― ― ―
「土の護符か、大得意だ。僕に任せろ」
なぜか錬金術ギルドに行くとお婿さんがいた。
大喜びで自分がやるといいだして魔石を奪われた。
そういえば婿さん、土属性の上級魔導士だった。
「この魔石を使うか……これだとあれだな。半分以上余るぞ」
「そうですか?土の護符と交換して足りないって聞いてたんですが」
「それは商人への売値じゃないか?素材としての価値なら半分はあまる。何か護符以外でほしいものがあれば作るがどうする?」
「でしたら……」
婿さんに加工をお願いした。
加工待ちの間に町にでて一通り必要な買い物を済ませる。
そして出発の日になった。
― ― ― ― ―
数日だったはずだが、なんかとても長くいた気がする。
ボクたちは帰り支度を始めている。
公爵宮殿の中庭で荷造りだ。
隣り領地のグスタフ先輩の部隊も一緒なのでとても賑やかである。
護衛の騎士たちがそれぞれに荷物を馬車に積み始めた。
なんか来た時より荷物が増えてないか。
「この砂糖を持って帰ったら嫁が喜ぶだろうなぁ」
「俺は砂糖は売って指輪にしたぜ、これであの子に結婚を申し込む!」
「ああ、金欠で結婚資金なかなかなかったからな」
「こっちは砂糖を売って、夫の服にしたよ」
騎士たちもお土産を持ってうれしそうだ。
みんな時間を見つけて買い物に行けたんだな。
「休み取っていくから……」
「待ってるよ……」
アミリ先輩のメイドとウチの騎士の一人がなんか別れを惜しんでいる。
いつ仲良くなったんだ。
「ねぇ、ご褒美で貰ったこの耳飾り、似合うと思って」
「え……いいの?実は私もこれ……」
なんか若手騎士と年上の騎士さんも何かアクセサリ交換とかしてる。
いいなぁ、ボクも恋人がほしい。
と思ってるとアミリ先輩がいつもの色眼鏡と魔導士ローブ姿で現れた。
いつもの中性的な口調になっている。
「もう帰るのか」
「領地を長く空けてられないしね……先輩は帝都の魔法学園に戻るんだよね?」
「ああ、ちゃんと卒業したいしな……」
先輩は遠い目をしてつぶやくと、真剣な口調になった。
「なぁ、やっぱり魔法学園に戻らないか?学費ぐらいは出すって父上が……借金だって」
「……その借りは返せないよ」
「……そうだよな。済まない」
自分の信じることのために多くの借金を作ってもなんとか返そうと母さんも皆も頑張っている。ボクが返せない借りを作るということはその頑張りを否定することになるんだ。だから。
先輩は元気なく伏し目がちに言う。
「お互い、身分と家から自由になれないな……」
「貴族だしね」
貴族は誇りと拘りで生きているから、どれだけ良い選択肢でも取れないときがある。ボクらは独立の直参領主としての誇りと拘りがあるし、それを失えば貴族の家としては死んでしまう。
「なぁ、その、もし私が家を出れば……いや、いい。忘れてくれ」
「……うん?わかったよ?」
先輩が最後に何を言いたかったのか、分かるような分からないような。分かってはいけないような気がして。
ボクはグリムホルン迷宮領に帰るのであった。
※第2章 外交編終わりです。
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