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迷宮伯嫡子はカネがない  作者: 神奈いです
第二章 カネがないのでお値打ち外交

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披露宴

公爵宮殿の大広間は魔道灯に照らされたシャンデリアのきらめきに包まれている。

一面の壁には公爵家の歴史を語るタペストリーが貼られており、その前に設えた豪奢な席に、新郎と新婦が座っていた。

その両側にはそれぞれ両家の親族が並び、来客を待ち構えている。

会場には楽隊のお祝いの曲が満ちており、参列者たちの心を浮き立たせていた。


結婚式の翌日は半日をかけた大披露宴である。


名だたる貴族たちが次々に現れ、婚姻を祝う贈り物を贈呈する。

贈り物自体はすでに倉庫に回収しているので、実際には見本を一つだけと目録を代わりに贈るのだ。

この席で贈り物をもらっていては、新郎新婦が贈り物につぶされて死んでしまう。

見本だけでもすぐに倉庫にしまいなおされる

それだけの規模で披露宴が進行している。


それぞれ帝都産の名品や魔道品、工芸品などを次々に献上していく。


そして新郎新婦、そして側に付き添う公爵と言葉を交わしていく。

新婦がなぜか眠そうで、新郎がお疲れ気味なのを除けば大きな問題はなく式が進んでいった。


親族たち、西大公派閥、それ以外の領主たちの番が終わった。

会の大詰めに近づいてきたときに番が回ってきたのが、迷宮伯嫡子のオウドである。


「グリムホルン迷宮伯嫡子、オウドリヒト・フォン・グリムホルン卿ーー!」

執事が名前を読み上げる。


礼服に身を包んだオウドが新郎新婦の前に進み出る。

新郎新婦に一礼をし、また親族席に一礼をする。

親族席に座っているアメルニアーナ姫と目が合い、微笑むと向こうもにっこりと笑い返してくる。


「この度はご結婚おめでとうございます。我が領地から些少ではありますが贈り物を」

オウドが贈り物の毛皮のうち一番いいものを1枚。

護衛の騎士に持たせて新郎新婦の前に差し出した。


「へっ」

「ふふっ」

新郎新婦の後ろに控えている重臣席で将軍と書記官長があざ笑う。

田舎領主らしく貧乏くさい贈り物だ。みな大枚をはたいて帝都の最上級品を持ってきているというのに。

とと、イカンイカン。殿下のお命を救ってくれた恩人だったな。まぁあの程度の働き誰でもできるだろうが……


「ごほんごほん」

「えへん」

わざとらしく咳払いをしてごまかす二人。もともと田舎者だと見下していたので、その若者が活躍しても素直に評価できない。むしろその働きを矮小化することで自我を保っていた。



その時、眠そうな顔をしていた新婦が目を見開いた。

新郎の脇を突っつきながら大げさに言う。


「おお、これは何と素晴らしい毛皮なのかしら」

「うん、とてもいいね。送り主の心がこもってるのが見えるようだ」


合わせて贈り物をほめたたえる新郎。


「ねぇ、将軍、書記官長は、どう、思う?」

新婦である公爵嫡女が冷たい笑みをたたえて、後ろの重臣に振り向いた。


「……は」

「えっと……」


硬直する二人。


「こ、これは……艶やかで……」

「毛並みもそろっており……」

ぴくぴくと頬を引きつらせながら、必死に毛皮をほめる二人。


「過分なお言葉にお礼の言葉もありません。ありがとうございます。

しかし、この毛皮を手に入れるまでにはとある話がありまして」

「ほう、ぜひ聞きたい」


オウドの言葉に首を乗り出す新婦。


そこでオウドは芝居がかった身振りで歌い始めた。

「これはお金のない貴族の嫡子のものがたり」

「おお、ゴブリンがいるならば、討伐せざるをえず」

「兵糧もなく資金もないが、騎士たちの気持ち一つを頼む嫡子」

「封建の契約を忘れ、ただ正義のために立ち上がる騎士たち」

「集まりしは精鋭の騎士、富も報酬も求めず、ただ名を惜しむ」

「悪霊小鬼は二百三百。収穫を損ない家畜を奪い民を苦しめる」

「精強無比の騎士たちは数倍の小鬼たちを蹴散らす」

「そのとき、小鬼どもの後ろからは魔石を食ったオルク、悪霊大鬼」

「か弱き村人なれど、大鬼小鬼の悪行は見逃せず」

「逃げんとするオルクに対し、立ち向かうは十尺の棒一つ」

「ここで逃がせば千年の憂い、勇敢なる村人はオルクを追い詰め」

「嫡子は見事魔石食いの大鬼の首を刈りおわんぬ」

「その討伐で手に入れたのがこの毛皮」

「わが領地の民と騎士との信頼の証であります」

といってオウドが一礼する。


そこまで聞いて、新郎新婦が拍手した。

「……素晴らしい!」

「歌上手いな」


横から公爵も口を出す。

「かように君臣一体の素晴らしい領地の嫡子であるから、余の命を救い、

魔王の陰謀をくじき、広場で魔王を追い払うことができたのだ。改めて礼を申す」


深々と礼をするオウド。

「私など何もしておりません、すべては皆様の徳とお力によるものです」

「皆の者も、この勇敢で民想いの若君に拍手を!」


「おお!」

ぱちぱちぱち……


満場の拍手が会場を包むのだった。



オウドは深々と礼をして思った。

やっとボクの家臣と領民たちを認めさせてやったぞ。すっきりした。


なお、そのあとグスタフ伯爵のポーションも紹介した。

なぜか新郎さんがすぐ飲んでとても喜んでいた。


披露宴が終わった。

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― 新着の感想 ―
新郎さん強く生きろよ… あと、将軍と書記官長は反省が足りない。近いうちに失脚しそうですね。
新郎さん干からびかかってるw
>やっとボクの家臣と領民たちを認めさせてやったぞ。すっきりした。 これが行動原理の施政者は推せる 新郎さん、体力差ありそうだしな
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