新郎の思い
公爵家に婿入りしてきた新郎は思う。
西の魔王と眷属の悪魔どもというのは寄生虫の一種だ。
人間や知性のある種族『話す子ら』の恐怖や悲しみなどの負の感情から生まれ、恐怖を啜って生きている。
人々の恐怖がそのまま魔王の力となり、恐れられれば恐れられるほど魔王は強大になっていく。
最初にやつらが現れた時はその特性が理解できず、恐怖が恐怖を呼んで帝国西部の半分が悪魔の軍勢に支配されたこともあった。
当時の皇帝が全帝国に総動員をかけて領土を奪回し、帝国クエストを受けた勇者パーティが皇帝宝具を授けられてようやく討伐できたのだ。
その後、何回か復活したことがあったが、研究によりその特性が明らかになり、被害を限定して討伐できるようになった。
それによって復活の間隔がのび、前回の討伐からは100年以上経過している。魔王の特性を知るものも少ない。
あの迷宮伯の嫡子だったか。芝居がかった言い方だが、小気味よい言いっぷりでよく市民や貴族の恐怖を一掃してくれた。
悪魔族の習性までよく調べている。
しかも名簿を調べて刺客のあたりをつけて刺客をすべて防いでくれもしたんだ。
しかし、名簿に工作して暗殺者を送り込むなど、こんな姑息な作戦は初めてのはずだ、何か変わったのだろうか。
いずれにせよ、僕は美しい妻との結婚式に舞い上がって警戒が足りてなかった。恥ずかしいことだ。
調子に乗って平和結界の破壊までしてしまった。
そんなことはやるもんじゃない、反動が大きすぎる。上級魔法を2回使っただけなのにもう疲労の極みだ。
「あの迷宮伯の子にはお礼をしなければ」
「そうね」
妻である公爵嫡女は裏切りものの首を廊下に並べている。
返り血が頬についていてぞくっとするぐらい綺麗だ。
魔王を崇拝する邪教の信者が紛れ込んでいたらしい。
広場で騎士が幻覚魔法を中継しているやつを捕らえ、調査したところ芋づる式に城内の裏切り者を見つけ排除することができたのだ。
「で、将軍に書記官長はどう思うかしら?」
廊下に立たせた将軍と書記官長を前に、珍しく口調を柔らかに話しかける妻。
二人とも冷や汗でびっしょりである。
「はっ!このような隙を見せたことは我が不明と無能に起因しますが、さらに大本はこやつが悪いのです!」
「何を言うのですか!私の責任も当然ありますが、貴方が名簿を無茶苦茶に!」
さっそく言い争いを始める二人。何も反省していない。
「誰が悪いとか、私はどうでもいいんだけど」
レイピアをもてあそぶ妻。
「まず自分の仕事を完璧にして?」
「ははっ!!!致します!申し訳ございません!」
「かしこまりました!!」
妻は二人をつまらなさそうにみると軽く言い捨てた。
「反省したなら行ってよろしい」
平身低頭して逃げるように下がっていく将軍と書記官長。
「いいのあれ?」
「父上が長年の功績があるからってかばうのよ。でもね、次はないの」
「そうだね」
というと、妻が僕を抱き上げ、寝室に運ぼうとする。
「あ、あの、ハニー……今日はいろいろあって疲れたよね?」
「ええ、いろいろあったよね……ドキドキしちゃって……いい初夜にするよ?」
初夜の練習は沢山したし、ちょっと今日は僕は体力が……
そして僕は頑張って夫の義務を果たした。煙ももう出ない。




