刺客が現れた!
西大公の嫡女の結婚式でいきなり刺客が現れた!
招待客しか入れない厳重に警戒された場所になぜ!
客の武装はすべて解除されていたはず!
はい、迷宮伯の長男、オウドだよ。
周りの参列者のみんながひたすら驚いている。
もちろん列席の貴族の皆様のほとんどは魔法騎士でもある。
だから戦おうとする人もいるけど武器も魔法も封じられてて困ってるみたい。
皆の驚きは当然だけど、名簿が書き換えられてたから堂々と入ったんだと思うな。
アミリ先輩と一緒に名簿を確認して、名前がおかしい人を発見したとき。
ボクが最初に考えたのは刺客の可能性だった。
もし悪意のある人がいれば、あんな混乱は逃すはずはない。刺客を紛れ込ませるには最適の状況だ。
で、実際に西大公は南大公と戦争したばかりだし、家の中の統率もあまりとれていない。
あとは盗賊か詐欺師の類かな?どちらにしてもその「間違った名前の人」を見張っておく意味はある。
もちろんただのミスの可能性はあるんだけど、それなら取り越し苦労で笑い話にできる。
というわけで、大神殿の参列客に並んだんだけど、侵入者を見つけるのは大変だけど簡単だった。
まず新郎新婦の親族列は除いていい。ここにいたらさすがにばれる。
そして西大公に従属している西大公派の貴族列。これも自派の貴族の顔を知らないわけがないからばれる。
問題は帝国の東西南北から呼び集めた独立派の列。ここはもう誰が誰だか。
同じ西ならともかく、東から来たんですと言われても名前も家紋も知るわけがない。
で、皆礼服に家紋をつけているし、独立派の参列者の家紋はすべてメモってきた。
なのでメモにない家紋の人を探すだけだ。
で、儀式が最高潮の時。
西大公が祭壇の前で参列客に後ろを向いて護衛もなく立っていた。
神聖な儀式で花嫁と花婿の親か一番親しい親代わりの人しか立ってはいけない場所だ。
目の前の怪しい人が突然前の人を突き飛ばして前に出た。
左手で右手をつかんでうめき声と共に刃を引き抜く。
うわ、義手に仕込み刀をいれてたのか、それは貴族むけのおざなりな身体検査じゃわからないはずだ。
そして西大公のほうへ斬りかかろうとするが、もちろんボクは準備万端。
「早風!」
事前に精神集中しておいた緊急加速魔法を発動!
ボクの得意な風魔法!
効果は一瞬!ちょっと早く動ける!それで十分!
もちろん攻撃魔法じゃないから禁止されていない!
風とともにとびかかったボクのケリが、刺客の膝裏に突き刺さった。
「ぎゃああ?!」
いきなり膝を折られた刺客があおむけに倒れ。
仕込み刀が宙を舞って、ボクの目の前に落ちてくる。
「うわ、危なっ?!」
魔法の風と共に軽やかに交わす。
「なっ?!」
驚愕と共に振りむく西大公、手元の公爵宝珠を握りしめ、防御魔法らしきものを展開する。
さすが公爵殿下、対応が早い。
祭壇の上では花嫁の公爵嫡女がドレスのスカートを割って白銀に輝くレイピアを取り出した。
さっと花婿の前に立って、周囲を警戒する。
嫡女さんも対応が早いね……って武装禁止じゃなかったのか。
「きゃああ?!」
「うわあああああ?!」
参列客のあちこちから叫び声がした。
「曲者召し取ったりー!」
「気をつけろ!武器を隠し持ってるはず!」
式場の一角で刺客その2を取り押さえたのはボクの護衛騎士二人だ。
若いほうは貴族の礼服を、年上の騎士はドレスを身に着けている。
そう、ボクが見つけたのは一人じゃなかった。だから手分けしたんだ。
「おとなしくしてくださいー!」
「このー!」
もう片隅ではアミリ先輩配下の武装メイドたちが数人がかりで別の刺客を取り押さえていた。
紋章官と騎士たちが入り口近くでもう一人取り押さえて、これで4人。
そして公爵家の騎士たちがわらわらと入り口から殺到してきた。
「取り押さえろ!抵抗するなら口と脳以外は壊して構わん!」
花嫁がレイピアを振るって家臣に指示を飛ばす。
その後ろで、魔法杖を握った花婿がブルブル震えていた。
「……だ、ダーリン?!大丈夫?!」
「……よくも、僕の」
違う、怯えてない。
怒ってる。
ぶわっと長めの黒髪が浮き上がる。魔力が噴き出ている。
黒目が大きく見開いて、黒い光を放っている。
「僕と僕の妻の結婚式を汚したなーーーーーっ?!!!」
バキン……!!
平和結界が壊れる音がした。
中級魔導士4人と魔石を使った魔法陣で組まれた平和結界を中から壊した?!
魔力を込めた魔導士の杖を横に薙ぎ払うように動かし詠唱する。
「蒼龍の地爪っ!地を裂きて天を貫けえええ!龍爪蒼獄!!!」
大神殿の床から突如具現化した龍の手が4本。
刺客4人を同時に捕らえ、爪が彼らを貫く。
「ぎぁあああああ?!」
痛みに悶える刺客たち。
おお、地属性の上級魔法だ。教科書で見た。
さすが学園主席。
ボクには魔法の上級適正はなかったから、羨ましいという感覚はない。
向いてて努力をしてる人は素直にすごいんだ。
だから心から褒める。
「さすがは魔法学園の俊英たる主席!お見事な魔法の腕です!」
ぱちぱちぱち……
拍手するボク。
ぱちぱち……
周りの貴族たちもしばらく呆気に取られていたけど、少しずつ拍手に参加してくれた。
「はぁ……はぁ……いや、ありがと……」
「いや、迷宮伯嫡子殿のおかげで助かった!よく瞬時に止めてくれた!」
「うむ!余の命の恩人だ!」
疲れたのか肩で息をする新郎。嫡女と公爵が次々にお礼を言って。
「はーーーはっはっはっはー!どうだ人間どもの西の公爵よ!我が刺客の毒刃は苦しかろう!!」
神殿の外でものすごく大きな声がした。




