周辺と外交(帝国上納金システム)
「さてと本題なんだが……」
「そうだ、大きな魔石があるんだけど買ってくれないかな」
「借金に当てるのか?こっちだって借金があるのに無理だぞ」
「えー」
グスタフがテーブルに肘杖をついてぼやく。
「お互い大不作でやられた身だ、懐具合なんて一緒だろ」
「先輩お得意のポーションの売り上げはどうなんです?」
「そっちの領地が不景気だからな、良くない」
グスタフはこの見た目で水魔法の素質があった。
魔法学園では中級錬金術を習得し、領地周辺の大森林で採れる薬草類をポーションに精製している。
グリムホルン迷宮に潜る冒険者たちが傷薬をもとめたため、ダンザウベル領の村人は森林で薬草を拾ってはグリムホルンで売却して小遣いにしていた。
グスタフはそれに目をつけて留学で錬金術を修め、ポーション産業を立ち上げ。
領地で少しずつ弟子を増やして量産しつつあった。
もちろん輸出先はグリムホルン領だ。
が、昨年の大不作である。
収穫は大きく落ち込み、また家畜に食わせる牧草も十分ではなかった。
さらに魔石の値下がりで冒険者たちの収入が減り、ポーションの売り上げも低迷。
グリムホルン伯領よりはマシとはいえやはり借金に苦しんでいる。
「陛下への上納金を欠かすわけにはいかんしなぁ、節約生活だ」
「欠かしたら大変ですよね、アレどうやって払うんでしたっけ?」
領主がやっていたことでオウドは詳しくは知らない。
グスタフが説明する。
「基本は毎年正月に各領地から使者を派遣して上納をする。
遅延をしたら一回だけ督促使が来て、領主本人の前で3回支払えという。
生きていようがいまいがだ。で払わなければ領地取りつぶし」
「へ?」
「東の領地の例でいうと、領主が急死して跡継ぎ争いがおきたところで、督促使が死んだ領主のところに督促に行った。
当然支払われないので領地取りつぶしが決定。
周辺の領主が一斉に攻め込んで跡継ぎ争いしている親族ごと滅ぼされた」
「え、事情説明とかそういうのは」
「一切認められない。交渉もできない。支払うかどうかだけだ。
これは領主を継いだ時にさんざん厳しく言われたからな。
督促使に支払いが行われなかった瞬間に、そこの宝珠の光が消える」
「消える」
グスタフが玉座の上に飾られている伯爵宝珠を指さす。
宝珠は穏やかな光を放ち続けている。
ああ、あれかとオウドは思った。
ちなみに迷宮伯宝珠は母様が冒険に持参していっている。
なんでも体力や魔力が少しずつ増加する加護がついているとか。
「うかつに死ねやしないですね」
「なんで跡継ぎを早めに共同領主にしたり、早くに譲ってしまうことが多いな。オレみたいに」
「もう一つの例はドケチの領主が全財産を魔道金庫にいれて急死。
どうしても金庫が開けられず、一族が金庫ごと督促使に上納しようとしたが、魔道金庫が動かせなかったため取りつぶし」
「いや、そこは上級魔道技師を帝都から呼ぶとか」
「そのような猶予、交渉は一切認められない」
「えー……」
ご加護くれるのはいいけど皇帝はひどいやつみたいだ。
「まぁ、その幸い、ふつうに領地経営していれば払えない額じゃない。
今回の大不作でも一時的に借金して倹約生活してればなんとかなるしな。
上納金を持参する時は帝都ビザ免除だから、田舎者にとっては買い物もできてありがたいし」
「あ、それだ!上納金支払いの時に魔石を売ればいいのか」
「来年の正月まで待つ必要があるけどな」
「えー」
なかなかうまく行かないなぁとオウドはぼやいた。




