公爵令嬢はいじめっ子を虐める
因果応報、世の中の摂理ですねw
「レ、レベッカ様っ!?」
「これはどういうことかしら?」
私の登場にいち早く気づいたのは侯爵令嬢に私は問いかける。
悪い事をしている自覚はあったのだろう、恐怖で体が震えていた。
しかし、すぐに何かに気づいたようで、言い訳を始める。
「この男爵令嬢に貴族令嬢としての在り方を教育しようとしていただけです」
「教育? これが?」
侯爵令嬢の言い訳に私は周囲を見渡す。
もちろん、ほぼ最初から見ていたので今さらそんなことをする必要はない。
だが、現在の状況を見て、私がどのような判断をするのかを分からせる必要があったのでしたまでである。
「もちろんです。レベッカ様はこの男爵令嬢がいかに貴族令嬢らしからぬかをご存じでしょう?」
そんな私の様子に気づいていないのか、侯爵令嬢は問いかけてくる。
クリスハルト様の婚約者である私ならレイニー男爵令嬢について知っていることはわかり切っているのだろう。
その上で味方になってもらえると判断したのかもしれない。
「それはクリスハルト様に気に入られていることかしら?」
「もちろんです」
私の言葉に侯爵令嬢は「我が意を得たり」とばかりに笑みを浮かべる。
レイニー男爵令嬢がクリスハルト様に気に入られている──その事実が私にとって不都合なことであると思っているからであろう。
そして、どうにかしてレイニー男爵令嬢を排除しようと考えているとも思っているのだろう。
婚約者の心を奪われる──貴族令嬢としてはあまりに情けない話だからである。
取り巻きの令嬢たちも同様に思っているのか、侯爵令嬢の言葉を聞いて頷いていた。
そんな彼女たちに私ははっきりと告げた。
「馬鹿にしないでもらえるかしら?」
「「「はい?」」」
私の言葉の意味が理解できなかったのか、侯爵令嬢たちは呆けた声を漏らした。
まあ、自分達が言っていることを本気で正しいと思っているからこそ、理解できなかったのだろう。
これは仕方がない事かもしれない。
だからこそ、私ははっきりと告げた。
「別にレイニー男爵令嬢がクリスハルト様に気に入られていることについて、私はどうも思っていないわ」
「ど、どうして……」
思っていた通りにならず、侯爵令嬢は慌て始める。
完全に予想外の言葉だったのだろう。
もしかすると、この侯爵令嬢は情報収集、もしくは情報の精査が苦手なのかもしれない。
私のことをある程度調べているのであれば、私がどう思うかぐらいはわかりそうなものではあるが……
「クリスハルト様に気に入られているということは彼女に何らかの魅力があるからでしょう? それは褒められることではあるけれど、批判するようなことではないわ」
「で、ですが……クリスハルト様は婚約者であるレベッカ様を放って……」
「黙りなさいっ!」
「「「ひぃっ!?」」」
思わず大きな声を出してしまった。
その声に驚いたのか、令嬢たちは震えあがってしまった。
だが、苛ついた私は睨みつけながら話を続ける。
「それは私に対する嫌味かしら? 婚約者の心をつなぎとめられない魅力のない女だ、と?」
「そ、そんなことは……」
私の言葉に侯爵令嬢は答えることはできない。
私の方が身分が上なのだから、肯定などできるはずがない。
まあ、本心では馬鹿にしているのかもしれないが……
とりあえず、お灸をすえておかないといけないわね。
「でも、貴女の言う通りかもしれないわね」
「え?」
侯爵令嬢が呆けた声を漏らす。
もっといろいろと言われると思っていたのかもしれない。
予想外に早く終わった私の怒りにどう反応すればいいのかわからないようだった。
それは取り巻きの令嬢たちも同様である。
しかし、別にこの流れが終わったわけではない。
ここから始まるのだ。
「クリスハルト様の婚約者としてふさわしくないでしょうから、婚約者を辞退すべきですわね。ですが、次の婚約者は誰になるでしょう?」
「それは……」
「私が婚約者を辞退したことで、敵対派閥の公爵令嬢を婚約者にするわけにはいきませんね。ムーンライト公爵家と王家が不仲になったと思われかねないわ」
「そ、そうですね」
「王妃様の御実家の公爵家は権力的な問題で選ばれないでしょうね。あそこの公爵家は良い方が多いですが、これ以上の権力を得ようと勘繰られるようなことは避けるべきでしょう」
「……」
「他国の王族という手もありますが、国同士の中が悪かったり、友好国の姫君でも年齢的な釣り合いが取れていないのよね」
「え、えっと……」
いきなり始まった話に侯爵令嬢たちは何と答えていいのかわからない。
この話の終着点が分からず、不安に違いない。
だが、安心してもらいたい。
結論はすぐに話すことになるわ。
まあ、その結論が貴女たちにとってあまり良くないことかもしれないけど……
「ということは、次の婚約者の最有力候補は侯爵家から出てくるでしょうね」
「っ!?」
私の言葉に侯爵令嬢が驚く。
ようやく私が言いたいことに気づいたのだろう。
だが、すでに遅い。
本来であれば、辞退をしようと話した時点で否定をするべきだったのだ。
「ですが、これでも私は公爵令嬢としても、殿下の婚約者としても優秀であったつもりです。しっかりとした教育を受けてきましたから……まあ、殿下本人の心を手に入れることはできなかったみたいですが……」
「う……」
「つまり、次の婚約者になる方にはそれ相応の教育を受けてもらわないといけないわけですね。果たして、そんな教育に耐えられるのかしら? しかも、約2年という短い期間でね」
「に、2年ですか?」
私の言葉に侯爵令嬢がようやく質問する。
あまり察しが良くないのかもしれない。
そんな彼女に私は事実を突きつける。
「当然でしょう? 学院を卒業すれば、すぐにでも殿下と結婚することになるのですから、長い時間をかけることができるはずがないでしょう?」
「そ、それはそうですが……」
「安心しなさい。子供のころの私でも5年ぐらいで完璧に身に付けることができたのですから、学院で優秀な成績の方なら2年で身に付けることぐらいは可能ですわ。まあ、血の滲む努力は必要でしょうけどね」
「っ!?」
侯爵令嬢は驚愕の表情を浮かべる。
私が優秀であることは周知の事実である。
子供のころとはいえ、そんな私ですら完璧にマスターするまでに5年かかったのだ。
そんな教育をマスターするのに2年で終わるはずがないのだ。
そして、そんな教育の矛先が次に向かうのが……
「陛下と妃殿下には貴女がふさわしいと推薦しておきましょう」
「えっ!?」
「侯爵家の人間ですから身分的にも問題はないですし、教育も頑張れば大丈夫でしょう」
「そ、そんなことは……」
「それに……レイニー男爵令嬢に直接文句を言うぐらいにはクリスハルト様のことが好きなのでしょう?」
「っ!?」
私の言葉に侯爵令嬢の顔が青ざめる。
まさか自分がそんな勘違いをされるとは思っていなかったのだろう。
もちろん、私も本心からそのようなことを言ったわけではない。
別に彼女はクリスハルト様に好意など持っていないだろう。
ただ男爵令嬢ごときが第一王子と仲良くしていることが気に入らなかっただけだ。
その程度でこんな暴挙に出たのだ。
私を敵に回すことになることを考えられないぐらいだから……
「まあ、優秀であるなら伯爵家でも問題はありませんね」
「「っ!?」」
「お二人のことも推薦しておきましょう」
「「ご、ご遠慮しますぅっ!」」
矛先が自分たちに向かったことに気づいた二人は逃げるようにその場から立ち去ってしまう。
「ま、待ちなさいっ!」
取り巻き達が逃げたことで侯爵令嬢は追いかけていく。
私に言い訳をすることの方が大事だと思うが、彼女たちではそんなことも気付かないだろう。
まあ、私としても面白い反応を見ることができたので、これ以上イジメるのは止めようと思うが……
「あ、あの……」
「ん?」
満足している私に話しかける人物がいた。
それは先ほど助けたレイニー男爵令嬢だった。
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