放蕩王子は破滅しないといけない
※祖父の名前を「ジークハルト」から「ラインハルト」に変更しました。
元側近の名前を「ジーク」にしてしまったせいです。
ネーミングセンスがなくてすみません。
「どういうことですかっ!?」
ジークはすごい剣幕でクリスハルトに問い詰める。
先ほど犯罪していたことでも驚いていたが、今回の驚きはそれ以上であった。
しかし、それに対してクリスハルトは落ち着いていた。
「俺が残っていたら、この計画はうまくいかないだろ?」
「それは……」
クリスハルトの言葉にジークは言葉を詰まらせる。
たしかに言う通りであったからだ。
クリスハルトの計画は結果として国をまとめるためにやっていることではあるが、少なからず混乱を招くことになってしまう。
それなのに、クリスハルトがこの国に残ってしまえば、意味がないのだ。
しかし──
「死ぬ必要はないと思いますが……」
「いや、「死んだことにして」だからな? 本当に死ぬつもりはないぞ?」
ジークの言葉にクリスハルトは思わずツッコむ。
自分の命を引き換えに計画を成功させようとしているように言われている気がしたのだ。
流石に「死んだふり」と「本当に死ぬ」では天と地ほどの差があるので、そこを間違ってもらっては困るのだ。
だが、ジークにも言い分はある。
「でも、他の人からすれば、「死んだこと」にはなるんでしょう?」
「まあ、そうなるな」
「そうなれば、人々に確実に何らかの影響を与えると思いますが?」
「……」
ジークの指摘にクリスハルトは答えられない。
もちろん、そのことをクリスハルトが理解していないわけがない。
意図して、気にしないようにしていたのだ。
だが、ジークの指摘で考えないといけなくなってしまった。
「殿下は残された人がどのような気持ちになるか、理解していますか?」
「……俺が死んだところで誰も悲しまないだろ」
「いえ、そんなことはないはずですよ。少なくとも、今の私は悲しみます」
「男に悲しまれてもな……というか、お前は事情を知っているだろ? ついでに本当は死なないことにも」
「たしかにそうですね。ですが、私以外にも悲しむ者はいますよ。レベッカ嬢とかね?」
「……それはないだろ」
レベッカの名前を出され、クリスハルトは少し悩んでから否定をする。
最後までクリスハルトを見捨てなかったレベッカではあるが、彼が死ねば清々とするのではないだろうか?
重荷から解放された、と。
「いえ、ありますよ」
「いや、ない」
「……どうしてそこまで否定するのですか?」
クリスハルトが否定することにジークは首を傾げる。
ジークは立場上、レベッカとも親しい間柄である。
もちろん、男女の恋愛感情をお互いに持っているわけではない。
お互いが優秀であるがゆえにライバルとして認めあっており、切磋琢磨する間柄なのだ。
彼女の気持ちは男の中で一番理解しているつもりだった。
だからこそ、クリスハルトがどうして頑なに否定するのか、疑問に思ったのだ。
「8歳からの10年間、俺はレベッカに迷惑をかけてきた。もちろん、この計画のためだがな」
「迷惑をかけてきた自覚はあるんですね」
「あいつはそんな俺を見捨てず、何度も注意をしてくれた。そのことについては感謝している。まあ、俺にも事情があるから、素直に従うことはできなかったが……」
「それはそうでしょうね」
クリスハルトの話を聞き、ジークは頷く。
ここはクリスハルトの気持ちも理解できるからだ。
本心から感謝しているのだろう。
その気持ちに嘘偽りはないと思われる。
「だが、あいつには幸せになって欲しい。だからこそ、俺との婚約はなくなるべきなんだ」
「いや、そこは理解できないですね」
クリスハルトの結論にジークは思わず否定してしまう。
どうしてそんな話になるのだろうか?
「いや、当然だろう? 俺の存在自体が国家の安定を壊しかねない。そんな存在の婚約者なんて、明らかに外れくじだろうよ」
「その説明を一概に否定はできませんが、だからといって婚約がなくなるべきだとはならないでしょう」
「破滅するとわかっている俺と婚約するなんて、「一緒に破滅しろ」と言っているようなものじゃねえか」
「破滅しようとしているのは殿下自身ですよね? レベッカ嬢はむしろそれを止めようとしているんですが……」
クリスハルトの言葉にジークは反論する。
どこかクリスハルトの言うことはずれている。
レベッカのことを考えているとは思うが、レベッカの意思は無視しているのだ。
「それはレベッカが俺の婚約者だからだ。政略結婚とはいえ、婚約者だからこそ見捨てずに注意をしてくれていたんだろう」
「それは否定しませんけど……」
「レベッカにはしっかりとした幸せを得て欲しいんだ。彼女のことを愛し、彼女が愛した男と一緒にな」
「……」
クリスハルトの願望にジークは何も言わなかった。
その条件に当てはまるのは一人しかいないのだが、これを言ったところで信じてもらえないと思ったからである。
こういうのは本人たちが話さないと意味がないのだ。
まあ、すでにこの状況では話したところで意味はないと思うのだが……
「とりあえず、レベッカにはハルシオンと婚約してもらうのが一番だと思っている」
「なぜっ!?」
いきなりの言葉にジークは驚く。
どうしてここでその二人が婚約することになるのか、理解ができなかったからである。
「次期国王のハルシオンと第一王子の婚約者として王妃教育を受けてきたレベッカ──子の二人なら将来国を任せるのにぴったりだろう?」
「まあ、それは否定しませんけど……」
「それに物語としていいとは思わないか? 「悪い兄王子を倒し、弟王子が囚われの姫を救う」なんて展開は」
「……むぅ」
「それにあの二人は相思相愛だろう? むしろ俺が邪魔になって……」
「いや、それは違うでしょう」
クリスハルトの言葉に反論できなかったジークではあるが、最後に反論することができた。
流石にその言葉は見逃せなかった。
「あの二人が相思相愛なわけないでしょう。それぞれ「婚約者の義弟」と「義兄の婚約者」としか思っていないはずです」
「そうか? それにしては昔からかなり仲が良いと思うのだが……」
「仲が良いのは当然でしょう? 殿下とレベッカ嬢が結婚すれば家族になるのですから、仲が良いに越したことはないんですよ」
「ふむ」
ジークの説明にクリスハルトは少し考える。
たしかに彼の言う通りであれば、仲良くしていること自体には説明がつく。
家族づきあいをするのであれば、仲良くする方が良いのだ。
「そもそも殿下がしっかりとしていれば、何も問題がなかったはずですよ? 少なくとも、王家の中で問題は起こっていないはずですし……」
「いや、それは違うな」
「え?」
今度はクリスハルトが否定する番であった。
クリスハルトが否定したことでジークは驚きの声を出してしまった。
「たしかに俺がしっかりとしていれば、ハルシオンやレベッカとうまく言っていたかもしれない。だが、それはあくまでもその二人だけだ」
「……他は無理だと? 別に殿下のことをそこまで嫌うような人は……」
「義母上だよ」
「っ!?」
クリスハルトの言葉にジークは思い出した。
クリスハルトのことを嫌っており、たとえ彼が優等生として過ごしても──いや、過ごすことがより一層排除しようとする存在を……
「言っただろう? 俺は「この国を乱す存在」だと……それは俺の「生まれ」だけが理由じゃない。いや、「生まれ」が理由ではあるが、問題はもっと根深い──義母上にとって、俺は「不義の証拠」であり、憎むべき存在だからだ」
「……」
ジークは何も言えなかった。
これには否定する材料がまったくなかったからである。
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