ハニードロップ 8
どーーーーーーん!!
なんか遠くで爆発音がする。聖都って物騒だな。多分魔法だ。しかも結構激しいやつ。そんなのを街中でぶっ放すアホがいるのか。
ウォーン、ウォーン、ウォーン!
なんかサイレン鳴ってる。
「皆様、緊急避難警報です。落ち着いてゆっくりと店内から避難してください」
ウェイトレスさんがなんか言ってる。音は遠いからそんな神経質にならなくていいだろう。
「どうする? せっかくだから見に行くか?」
「んーん。いい。ゆっくりしてたい」
ゆっくりしてたいって、仕事どうすんだよ。さすがにそろそろ待ち合わせ場所に行かないとエージェント怒るんじゃないか? それにマイからは外泊禁止令が出てる。今日中に終わらせないと。なんでかと言うと。なんかどこそこから僕が女の子を拾ってくるからだそうだ。拾うのはまだ我慢できるけど、拾われるのは我慢できないらしい。なんこっちゃ。
「お客様、避難されないのですか?」
店内に唯一残った僕らにウェイトレスさんが話しかけてくる。
「お姉さんは逃げないの?」
「私には店がありますから」
「俺たちにも店がありますから」
とりあえずオウム返ししてみた。
「お客様にはお店関係ないですよね? 何を言われてるんですか。今の警報はここ50年ほどは鳴ってない魔物襲来の警報らしいです。危険ですから避難しましょう?」
んー、たかだか魔物くらいで大袈裟だなー。
あ、外から誰か駆け込んできた。鎧を着た神官っぽい人?
「お前ら、何やってんだ。早く逃げろ。ドラゴン。でっかいドラゴンが街中を練り歩いてんだ!」
ウェイトレスのお姉さんが肩で息して座り込んだ男に水を出す。お姉さん中々肝座ってるな。
「ドラゴン? 聖都って危険だなー。街中にドラゴンが出るんだー」
なんか、嫌な予感がする。街中、ドラゴン。思い当たるフシは一つしかない。
「お客様、何おっしゃってるんですか。ドラゴンなんて始めてですよ」
「そうか……んー、ピオン、お前、マイかアンから何か貰わなかったか?」
着膨れてどんくさくモゾモゾしながら首にかけてるものを出した。ネックレス? しかもペンダントトップには僕の収納ポータルを小っこくしたようなものがついてる。これは……
「マイからだ。御守りらしいぞ」
「確かに御守りにはなるが……」
収納から紙とペンを出して書く。
『多分、盗聴されてる。それ遠くに捨てろ』
ピオンの顔が曇ったと思ったら、ペンダントをむしって暖炉に投げ込んだ。ナイスコントロール。
「お前気付かなかったのか?」
「怪しいと思ったけど、御守りにしか見えなかった」
なんかマイ、すんなりピオンとの同行を承諾したなと思ったら盗聴の魔道具しかけてたのか……
「兵隊さん、他には誰か居なかったの?」
「ドラゴンの頭の上に、仮面をした猫耳の奴が乗ってるらしい。『爆発しろ!』とか言いながら。多分、亜人の過激派だろう」
もしかして、ピオンとデートしてたのに怒ってるのか? 怖ぇ。うん、僕は関係ない。知らんぷりしとこう。
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