ハニードロップ 6
「兄ちゃん、聖夜祭を見に来たのか?」
小綺麗な服を着た、大荷物のでっぷりとした男が話しかけてくる。
「うん、凄いって聞いたからね」
猫被りながら返事する。着込んでるから筋肉は見えないから、気が弱そうにしてたらただの旅人に見えるはず。
僕は今、聖都に向かう乗り合い馬車にいる。国境までは魔王リナのワープポータルで行けたけど、聖国内にはポータルは一つもない。国境から馬車に乗ってくしかない。走ってもいいけど、馬車より速く走る旅人は目立ちすぎる。出来るだけトラブルを起こさずに潜入したい。
ジブルが調べたプラントは聖都の大神殿の地下。聖都までは高速馬車で移動して、そこからは現地のエージェントに案内してもらう。なんかスパイになったようでドキドキだ。
今の時期はもうすぐクリスマスという事で、聖都への旅人は多い。聖都のクリスマスマーケットはその出店の多さと、綺麗な景観で有名だ。雪に覆われた街に色とりどりなツリーが飾られて、可愛らしい小物や美味しい露店。一度はみんな行ってみたいと思うほど、憧れの的になっている。マイとアンからは色々とお土産を買ってくるように頼まれてる。
今回僕のお供に連れてきたのは忍者ピオン。隣で着膨れてスヤスヤと寝ている。擬態だとは思うけど、よだれまで垂れてるのは演技なのか、もしかしたら本当に寝てるのか判断に迷う。
「最近は聖都も物騒になってな。物取りや人さらいも出るから気をつけるんだな」
「うん、ありがとうございます」
おいおい、聖都って聖教国の首都だろ。そこで人さらいって、もう末期なんじゃないのか? 聖教国ってもしかして国が傾いてるのか?
「ん、どうした。合点がいってないのか? 危険なのはよそ者だよ。俺らみたいに住んでながい奴は問題ない。兄ちゃんたちはよそ者丸出しだからな」
「えっ、どこか変ですか?」
「いい服着すぎてんだよ。聖国のモットーは清貧だ。みんな家の中じゃ着飾るけど、外に出る時には質素な格好するんだよ」
そう言えばオッサンの服は綺麗ではあるけど所々擦り切れて色が褪せ年季を感じさせる。僕らの服は王国の普通の安物の格好なんだけど、新しめのものだ。馬車はぎゅうぎゅうで他の客を見るが、そこんとこを気をつけると一発でわかる。観光客かそうでないか。
そうこうしてるうちに聖都に着いた。城壁に囲まれた街は白銀の世界で、任務の事を忘れてしばし見惚れてしまった。
僕とピオンはまずは古着屋を探し、服を着替え、エージェントと待ち合わせしてる酒場へと向かう。
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