ハニードロップ 5
「販路が全く見つからないのよ。売ってる奴捕まえても、上までたどり着けないのよ」
導師ジブルがジュースのグラスをカラカラ回しながら言う。僕は今日は休みのジブルとリビングで雑談中。
ハニードロップはやはりというか、王国と魔道都市で麻薬認定を受けて激しく取り締まられている。魔道都市での捜査は芳しくないらしい。
「けどさ、使いすぎても体が動かなくなるだけなんだろ。なんで違法になったんだ?」
違法になっても、あれだけの効果だ。隠れて使う奴は後をたたないだろう。
「あれね、使いすぎたら全身の筋肉が動かなくなるのよ。全身の筋肉って心臓も筋肉でしょ」
まじか、という事は使いすぎたらいきなり死んだりするって事か。
「それでも、生きるか死ぬかの状況になったら確実に死ぬわけじゃないから使う奴いるんじゃないのか?」
「そうなのよ。だから製造元を叩いて作るのを止めさせるしかないわけよ。だけど、それが見つからない。アウフではまだ数人しか亡くなってないけど、王都は冒険者多いから何人亡くなってるかわかんないわ」
アウフとは魔道都市の事だ。久しぶりに名前で呼ばれると一瞬考えてしまう。
「まじか。そりゃなんとかしないとな」
別に悪党が薬で死ぬのならそこまで気にならないが、今日を生き抜くために必死に頑張ってる冒険者が命を失うのは納得いかない。しかも、その弱い者の足元見て儲けてる奴がいると思うと虫唾が走る。
「けど、現物が残ってるって事は解析は終わってるんだろ」
「そうよ、だからザップに話してんのよ。材料は身体能力を上げる効果がある薬草を精製したものに、さらに祝福系の魔法がかけてあるわ」
薬草を祝福したもの。なんかイメージと違うな。
「ん、じゃ、ハニードロップってただの薬なんじゃないか?」
「そうよ。ちゃんと国が管理してたなら、薬になってたかもしれないわ。けど、マフィアの財源になってる時点で麻薬よ」
そうだよな。麻薬か薬って決めるのは国だもんな。なんか打算的な黒さが釈然とはしないが。
「という事は、もしかして聖教国が関わってるのか?」
大量の祝福されたもの。何らかの組織じゃないと作りこなさないだろう。
「その可能性があるわ。報酬はアウフと王国から出すから、諜報部が見つけた聖教国の謎のプラントを探って欲しいわ。あとそこが当たりだったら二度と作れないようにそこを破壊して欲しいのよ」
なんか大事になってきたな。
「俺がやんなくても、魔道都市にも王都にももっと適任な奴いるだろ」
「凄腕のエージェントが数人行って帰ってきてないわ。本当なら私が行きたいとこだけど、聖教国は知ってると思うけど、ヒューマン以外を排斥してるから難しいのよ」
うん、聖教国って子供族やエルフ、ドワーフとかを亜人って呼んで国から締め出してるって話だもんな。という事は、マイとアンも連れていかない方がいいだろう。聖教国にはいい思い出は無いが、行ってやろうじゃないか。ハニードロップ、流行る前から知ってたし、その終わりまで見届けようじゃないか。目をつけてた押しが有名になるのは嬉しいけど、麻薬じゃね。押してもねーし。
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