ハニードロップ 3
さて、どうするか。そのハニードロップが麻薬なら、あいつらをどうにかすべきだ。けど、もしかしたらただの薬って事もあり得る。義を見てせざるは勇なきなり、という言葉もある。悩んでもらちがあかない。こういう事に詳しい導師ジブルにメールしてみる。返ってきたのは。
『聞いた言葉ないわ。こっちでも調べてみる』
あいつが知らないなら、他にこういうのに詳しい奴と言うと、僕にここを紹介してくれたパムか。パムにメールしてみる。
『それって最新の薬ですね。今のところ、王都ではまだ合法です。被害が出たら禁止になるかもしれないですけど』
まじか。なら見過ごすしかないな。一瞬、ガイって奴を闇討ちして薬を奪うって考えも浮かんだが、相手がアウトローだからってこっちもアウトローになるのはなんか違う。
あいつらはボソボソと薬の顧客の話をしている。中級冒険者、ごろつき、それと意外な事に学生だ。私塾の講師を通じて受験勉強してる学生や、国家試験の勉強中の学生に流してるそうだ。眠気が覚めて頭がスッキリする薬として。しかも学生には高めの金額で卸してる。正直胸糞悪い。必死で努力してる人の足元見るなんて。まあ、けど、今は合法。怪しい薬に手を出すのは自己責任かもしれないが、学生はまだまだ子供だ。そこら辺の責任を求めるのは酷だろう。
そしてしばらくして、ガイは出て行って、アニキも出て行った。
なんかモヤモヤしてるけど、その薬は今のところ被害は出てないって事だろうから、たいしたもんじゃないんだろう。そして、たわいない事を考えながら、店でゆっくりして帰路についた。
「くそっ。聞いてないぞ。数が多すぎる」
少年の大声が森から聞こえる。僕は今日は薬草狩りをしてたんだが、声の方へと急ぐ。ゴブリンと冒険者が戦ってる。少年少女の4人組でゴブリンは六匹、四匹ほど地面に横たわってる。数匹のゴブリンの討伐は比較的容易だけど、十匹前後だと難易度が跳ね上がる。十匹ほどの中グループになるとだいたいリーダー格の奴がいる。ゴブリンリーダーとは違い種族進化はしてないけど十匹の集団をまとめているから頭がいい。ずる賢い。冒険者たちは駆け出しに毛が生えたくらい。叫んだのが戦士、剣盾でタンク兼アタッカー。比較的軽装なレンジャーの男と、後衛に魔法使いと神官の少女。タンクが引きつけてレンジャーが遊撃、後衛からは弓と魔法で援護している。今のとこ堅実に戦ってる。ゴブリンは裏に裏に回ろうとするのを男二人でなんとか凌いでる。けど、見るからにゴブリン共は本気で攻撃してない。冒険者たちを牽制して、攻撃をかわす事に専念している。スタミナギレ狙いだ。戦士の一番の弱点はスタミナ。重装備をすればするほど、動けば動くほどスタミナをもってかれる。
「くそっ。ふざけやがって。ジリ貧だ」
レンジャーが悪態をつく。こいつらもわかってるんだろう。持久戦でゴブリン共は冒険者が疲れ果てるのを待ってると。
まあ、ヤバくなったら僕がでしゃばるか。
「ハニー使うぞ、すこし持ち堪えてくれ」
レンジャーはさがり、腰のポーチから小っこい茶巾縛りの紙みたいなのを取り出す。そして紙ごと口にいれ、数回噛んで飲み込む。多分中身は粉薬だろう。ワイルドな飲み方だな。まあ、紙って食べても問題ないらしいけど、ヤギかよ。
けど、ハニー? そういえばこの前ハニードロップって名前の合法ドラッグの話聞いたな。
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