ぎんなんぎんなん
「焼き鳥って謎ですよね」
ドラゴン娘のアンが食べかけの焼き鳥串をじっと見つめてる。
今日の晩ご飯は焼き鳥。なんとエールも一杯許されている。あらかじめせっせと刺した串をマイが炭火コンロで焼いてくれるのをいただいている。僕やアンも焼いてたんだけど、アンは生のまま食べるし、僕は肉をいじりすぎるからと言う理由で、いつもマイが焼き鳥奉行になる。けど、実際マイが焼いた方が美味しいから仕方ない。けどさ、何もかもやってもらうのってなんか忍びないんだよね。
「ん、食べたくないのか?」
そういえば、アンが求める肉は牛が多く、次は豚、あんまり鶏肉を食べたいって言う事はない。なんていうか、ドラゴンの肉って鶏肉っぽいから、もしかして忌避感でもあるのか?
「そんな訳ないじゃないですか」
アンはパクッと串に噛みつく。よく真っ正面から串を口に突っ込めるな。今、間違いなく喉突いただろ。口から出した串は先が折れ曲がってた。さすがドラゴン。口の中も固いのか? もしかしたら僕も同じ事できそうだけど、痛いかもだからやだ。
「いや、謎なのはですねー。こんな小っこい肉なのに、なんでお腹にたまるんでしょうか」
アンに焼き上がった鶏モモ串をマイが差し出す。
「あたしも正確にはわかんないけど、多分しっかり噛むからよ。しっかり噛むと満腹になりやすいって聞いた事あるわ。だから、アンちゃん、なんでも飲み込まないでしっかり噛むのよ」
「はーい」
アンは上の空だ。噛む気なっしんぐだな。コイツ、気を抜くとラーメンとかまでどんぶり持って飲むからな。
「はい、ピーマン」
アンはピーマンを見つめると一気に全部食べる。
「ピーマン嫌いなのか?」
「嫌いじゃないですけど、好んでは食べないですね」
なんか、自分なんでも食べますっとか言ってる人って、嫌いな食べ物の事をそう言うよな。好んで食べないと嫌いだから食べないってどういう差があるんだよ。同じ事だよね。
「それ、もう焼けてるの?」
コンロの上の黄色い実を刺したもの。銀杏だ。
「はい、どーぞ」
僕は銀杏を貰って口にする。子供の頃にはどこが美味しいのかわからなかったけど、今はなんか好き側になってる。ほろ苦い小芋って感じだけど、程よい弾力といい、なんかたまに食べたくなる。
「お前も食うか?」
「いいえ、遠慮しときます。ご主人様、好きなんでしょ。いっぱい食べてください」
珍しいな。こいつが食べ物を譲るなんて。珪藻土を爆食いするような生き物なのに。
「けど、ザップも、あと一串ね。銀杏って食べすぎたら体に悪いそうなのよ。確か四十個くらい食べたら具合悪くなるそうよ」
四十個も食わんわとツッコみそうになるが止めとく。マイは僕の体を心配してくれてるからだ。とは言え、強力な毒耐性を持つ僕なら百個食べても問題ないと思うが。それに、食べ物で微弱な毒があるものってあるけど、大抵その毒が効果を発揮する量って、そんなに絶対食べない量の事が多い。銀杏四十個とか。そんだけ食べればなんでも体に悪いんじゃないか?
ピーマンといい、銀杏といい、少し苦めなものがアンは苦手なのかもしれない。エールもあんま飲まないしな。アンは長生きしてるみたいだけど、見た目通りまだまだお子ちゃまだな。
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